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インフレ率と失業率の間には短期的なトレードオフが存在する

2011-06-16 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.20 )

 第10原理:社会は、インフレ率と失業率の短期的トレードオフに直面している

 政府が経済の貨幣量を増やすと、インフレーションがもたらされる。しかし、少なくとも短期においては、失業水準の低下ももたらされるのである。このインフレーションと失業との間のトレードオフを表す曲線は、この関係を最初に調べた経済学者にちなんでフィリップス曲線と呼ばれている。
 経済学者の間でもフィリップス曲線は論争の種でありつづけてきたが、今日ではほとんどの経済学者が、インフレーションと失業との間に短期的なトレードオフが存在するという考え方を受け入れている。このことは単に、1年から2年という期間においては、多くの経済政策がインフレーションと失業とを逆方向に動かすということを意味しているにすぎない。(1980年代のように)インフレーションと失業がともに高い水準にあっても、(1990年代のように)両方が低い水準にあっても、あるいはその中間の状態であっても、政策立案者はこのトレードオフに直面するのである。
 インフレーションと失業との間のトレードオフは一時的なものではあるが、数年にわたって持続することもある。したがって、フィリップス曲線は、多くの面で経済の変遷を理解するうえで決定的に重要である。とくに、景気循環を理解するのに重要である。景気循環とは、雇用者数や財・サービスの生産量などで測られる経済活動水準の、不規則であまり予測できない変動のことである。
 政策立案者はさまざまな政策手段を用いて、インフレーションと失業との間のトレードオフを利用することができる。政府の支出を変化させ、税制を変更し、貨幣供給量を変化させることによって、政策立案者はインフレーションと失業の組合せを短期的に左右できる。このように、金融政策と財政政策は潜在的に非常に強い力をもっているので、政策立案者が経済をコントロールするにあたって、これらの政策手段をどのように用いるべきかは、つねに論争の対象となっている。


 (全員ではないが)ほとんどの経済学者はインフレーションと失業との間に「短期的な」トレードオフが存在すると考えている。「短期的」とは「1~2年程度」の期間を指しているが、場合によっては数年間続くこともある。この関係を表す曲線をフィリップス曲線という、と書かれています。



 著者は
 政府が経済の貨幣量を増やすと、インフレーションがもたらされる。しかし、少なくとも短期においては、失業水準の低下ももたらされるのである。
と述べています。

 したがって、「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」で私が書いた

   貨幣の量を増やせば(原因)、
    インフレーションが発生する…………………(b)

の成立は経済学的に証明されていると考えられます。なぜ、このようなことがいえるのかが「まだ」示されていないので疑問なしとしませんが、その根拠はこの教科書を読み進めていけば根拠が示されるはずです。したがって、(b) の是非はそこまで読み進めた段階で検討します。



 なお、本題に戻り、上記「短期的な」トレードオフについて考えれば、

   失業率をゼロにすることは不可能である
   =ある程度の失業は「やむを得ない」

ということになります。失業率を完全にゼロにしようとすれば、猛烈なインフレーションが発生するはずだからです。

 したがって景気対策(または雇用対策)は、「様子をみながら、すこしずつ」進めるべきである、ということになると思います。



 しかしわからないのは、このような「原理」が経済に存在しているのなら、なぜ日本銀行は金融緩和を積極的に行わないのか(行わなかったのか)です。

   雇用問題が解消(正確には改善)するうえ、
   デフレも終わる

という「一石二鳥」な政策を、なぜとらない(とらなかった)のか。それが疑問ですが、(b) が正しいことを確かめたあとで、この問題は再考します。
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9 コメント

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Unknown (師匠)
2011-06-19 10:41:06
この問題は1960年代の貨幣数量説をめぐる論争に始まります。この論争は簡単にいうと、

 MV=PT

という貨幣数量方程式によって物価水準が説明できるかという話です。ここでMは貨幣量、Vは流通速度、Pは価格、Tは取引量。フリードマンなどのシカゴ学派は、物価はMによって決まるので、中央銀行はマネーストック(M)を実質成長率(Tの増加率)と同じk%だけ増やせば物価は安定すると主張しました。このためにはVが一定でなければならないが、実証的にはVは好況では上がり、不況では下がるので、MとPの間に安定した関係はない。

つまり中央銀行がマネーストックをコントロールする能力はきわめて限定的なのです。この点はフリードマンも認め、今ではk%ルールを採用している中央銀行はない。そんなわけで中央銀行が物価水準を自由自在にコントロールできるという貨幣数量説は30年ぐらい前に消滅したのです。

それに代わって出てきたのがインフレ目標です。これは広く認められており、1~2%程度の目標が(実現できれば)望ましいということを否定する経済学者はほとんどいない。リフレ派とそれ以外の(大多数の)経済学者の意見がわかれるのは、ここから先です。リフレ派は、目標は必ず実現できるので、中央銀行にそれを実現するよう強制せよと主張する。しかし今回の経済危機でも明らかになったように、中央銀行がデフレをインフレにすることは不可能なので、FRBなども拘束力のないinflation objectiveという言い方をしています。

そんなわけでフリードマンはマネタリストとしては敗北しましたが、マクロ政策全般については勝利を収めました。それはケインズ的な財政政策は、短期的には失業を減らすが、長期的には人々の予想が修正されると自然失業率に戻ってしまうという理論で、これが現在のマクロ経済学の基礎になっています。

いいかえれば、長期的には貨幣は中立で、インフレやデフレによって実体経済の水準を変えることはできないのです。
Unknown (memo26)
2011-06-20 07:01:29
 リフレ派は少数派なのですか。田中秀臣さんの本によれば、「日本では」リフレ派は少数派であるが「世界的にみれば」リフレ派が多数派であるかのように書かれていた(と私は思った)のですが、これは私の誤解なのでしょうか?

 なお、その本には、日本でリフレ派が少数派なのは日銀の影響力が原因である(つまり日銀の意向に逆らう経済学者等は人事や経済データ提供等の面で不利益をこうむる)、といったことが書かれていたと記憶しています。


> いいかえれば、長期的には貨幣は中立で、インフレやデフレによって実体経済の水準を変えることはできないのです。

 長期的にみれば、「短期的に現れた効果」も消えてしまうのでしょうか? 消えないならば、いまFRBが行っているように断続的に(?)金融緩和を行えばよいのではないかと思います。つまりしばらく金融緩和を行ったあとで一休みしつつ様子をみて、またしばらくして金融緩和を再開する、という政策です。
Unknown (師匠)
2011-06-20 20:32:54
日本でも世界でもリフレ派はほとんどいません。田中秀臣さんの本は基礎的な経済学の知識を身につけた上で読まれるならまだしもそうでなければ(彼の本に限りませんが、世の中、悪本が多いので)、読まないほうがいいと思いますよ。特に何とか陰謀論という話は一種の宗教ですからね。

長期的にみれば、「短期的に現れた効果」も消えてしまうのでしょうか?

長期的には人々の予想が修正されると自然失業率に戻ってしまうという理論で、これが現在のマクロ経済学の基礎になっています。

長期的には貨幣は中立とちゃんと書いておきましたが。^^;

まあこの論争は、最近出た翁邦夫という人の「ポスト・マネタリズムの金融政策」(日本経済新聞社 2011.6.)という本で総括しているので是非読んでください。
Unknown (memo26)
2011-06-21 14:30:22
 わかりました。経済学を学びつつ、経済の本も読むことにします。翁邦夫「ポスト・マネタリズムの金融政策」も頃合い(進度)を見計らって読んでみます。

 ところで私は以前、池田信夫さんの言説が「トンデモ」であるとする評価を(ネットで)読んだことがあり、それ以来池田信夫教授のブログを読まなくなったのですが、あれは本当に「トンデモ」なのでしょうか?

> 長期的には貨幣は中立とちゃんと書いておきましたが。^^;

 それはわかっていますが、私は「確認」したかったのです。
Unknown (師匠)
2011-06-21 18:00:12
池田さんのは「とんでも」でしょうね。
ただ、経済理論については、正しいことも時々言っていますよ。
私が正しいと思うのは、池尾さんや斉藤誠さんらの言ってることですが。
元々、私は現実の経済に興味がなく一般均衡理論というのを研究してきましたので彼らから多くを学びました。
確かにおっしゃるように「貨幣は中立」といっても一般の人はぴんとこないかもしれませんね。失礼を申し上げました。
Unknown (memo26)
2011-06-22 11:54:29
 ご返事ありがとうございます。勉強になります。

> 池田さんのは「とんでも」でしょうね。ただ、経済理論については、正しいことも時々言っていますよ。

 時々…。経済学者としては致命的なような。。。

 私は以前、一般向けの本『なぜ世界は不況に陥ったのか』(池尾和人・池田信夫) を読みましたが、(私には)あまり参考になりませんでした。内容ではなく、(この本のなかで)池田さんの池尾さんに対する態度が、(かつて師であったはずの)西部邁さんに対する態度とは「正反対」だったことのほうが(私は)印象に残っています。(^^;)

> 「貨幣は中立」といっても一般の人はぴんとこないかもしれませんね。

「クルーグマンの比喩「子守協同組合」」
http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/1fafcef6fbdf2b028c114d4868cd0a8a

 クルーグマンの話(比喩)は「経済学の正統的な考えかたではない」のでしょうか? また、上記記事において私が書いている(私の)意見も「ヘン」ですか? (私が読んだ田中秀臣さんの本はこの本です。一般向けの本です)
Unknown (師匠)
2011-06-23 20:03:02
クルーグマンの議論について
先に上げた翁邦夫「ポスト・マネタリズムの金融政策」
P222 時間軸政策
P232 いわゆるヘリコプターマネー政策について
何が争点となり、それにどのような議論がなされてきたか、がまとめられています。
是非、参照してください。
もちろん、今は、クルーグマンも認めている話です。
PS:老婆心ながら、他の分野もそうですがあるテーマについて議論する場合は、過去、現在、何がどう議論されてきたか(されているのか)を知り、その上で自分の意見なり見解なりを確立していくことが大事だと思います。
もちろん、memo26はそうしておられると思いますが、このテーマについては多くの非常に多くの論文が発表され議論が展開されてきました。
是非、そのような姿勢で今後の勉強に取り組んで頂きたいと思います。上から目線で恐縮です。お許しください。

Unknown (師匠)
2011-06-24 19:16:16
あと、これも参考にしてください。

http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/35750044.html
Unknown (memo26)
2011-06-26 03:44:45
 翁邦夫「ポスト・マネタリズムの金融政策」も読みますが、しばらくさきになると思います。理由は、いま読んでいるマンキューの本『入門経済学』がマンキュー『ミクロ経済学』『マクロ経済学』の「抜粋」だからです。「抜けている部分(項目)」をさきに読んだほうが(補充したほうが)よいと思います。

> 他の分野もそうですがあるテーマについて議論する場合は、過去、現在、何がどう議論されてきたか(されているのか)を知り、その上で自分の意見なり見解なりを確立していくことが大事だと思います。

 それはそうなのですが、過去の議論を「すべて」知ることは不可能だと思います。そこで私は、なんらかの「新しい」情報(このブログにとっての「新しい」情報の意です。経済学における過去の議論も含みます)を引用しつつ、「その都度」意見を述べる方法をとっています。
 当然そこには「抜けている部分」があるはずですが、それはあとで、「新たな」情報(過去の議論も含みます)を引用する際に、(私見を)修正・訂正することで対応しています。

 紹介された「岩本康志のブログ」の記事、読みました。長い間更新されていなかったはずですが、最近、更新が再開されているようですね。今後はときどきアクセスしてみます。
 ところで、前々から疑問に思っていたのですが、あのブログは岩本教授ご本人がお書きになっていらっしゃるのでしょうか? ブログを書いているのは「岩本ゼミ同窓会」ではないかと思ったりもしているのですが。。。

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