言語空間+備忘録

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所得税の景気安定化機能

2010-01-18 | 日記
井堀利宏 『日本の財政改革』 ( p.207 )

 累進的な所得税のもつメリットとして、景気の悪いときには、あまり税負担が増加しないので景気を下支えし、逆に、景気のいいときには、税負担が増加して景気の過熱を防ぐという、自動安定化効果を持つことが指摘されている。景気に対する安定化機能について言えば、これはケインズ的なマクロ・モデルにどれだけ妥当性があるのかと関連している。景気を安定化させることよりは、経済外的なショックで景気が変動するときに、税率を変化させないで、安定的な税収を確保することの方がより重要であると考えれば、消費税の方が所得税よりもメリットは大きい。


 累進的な所得税のメリットとして、景気の安定化機能が指摘されている、と書かれています。



 著者は、所得税を減税し、消費税を増税すべきである、とお考えです。上記は、その文脈で書かれた文章の一部です ( 私は所得税の景気安定化機能について書きたいので、そのために必要な部分のみを引用しています ) 。

 著者は、累進的な所得税のもつ、景気の自動安定化機能について留保しつつ、消費税のほうが好ましいという方向に、議論を展開されています。



 ここでは、( 累進的な ) 所得税の景気安定化機能について考えます。



 著者は、この機能について留保しておられますが、経済学界で、ケインズ理論の支持者が減ってきていることを考えれば、これは事実上、「疑問を呈しておられる」 と考えてよいでしょう ( 「バランスシート不況対策 ( リチャード・クー経済学 )」 参照 ) 。

 しかしながら、ケインズ理論を支持する・しないにかかわらず、金利が下がれば景気が上向き、金利が上がれば景気が下向くことは、広く認められていると思います。税負担も、所得を得るうえでの ( 利益をあげるうえでの ) 必要な費用の一部、と考えれば、金利と同様の効果をもっていると考えられますので、

 累進的な所得税に、景気の自動安定化機能があることは、認めてよいと思います。

 すなわち、ケインズ的なマクロ・モデルを否定する場合であっても、所得税の景気安定化機能は認められる、と考えられます。



 したがって、所得税について考える際には、そしてまた、所得税と消費税のどちらが好ましいかを考える際には、所得税の景気安定化機能を、無視してはならない ( 考慮すべき重要な要素である ) と考えてよいと思います。



 なお、著者が所得税減税・消費税増税を主張される ( 主要な ) 根拠は、貯蓄が増えれば、高い経済成長が見込めるというものですが、

 「課税のタイミング」 で述べたように、貯蓄が増えても、高い経済成長は見込めないと考えられますし、

 いまの日本で、高い経済成長のために必要なのは、貯蓄を増やすことではなく、消費を増やすことだと考えられますので ( 「アメリカの本音とアジアの本音」 ・ 「小泉・竹中路線が間違いだったとは、言い切れない」 参照 ) 、

 私としては、著者の主張には賛成しかねます。



■追記
 公平のために記しておきますが、この本は、13 年前に書かれています ( 1997 年発行 ) 。しかし、所得税の景気安定化機能など、時期を問わずに成り立つと考えられる事項を吸収するために、この本を引用しています。
 なお、「いまの日本」 の状況をもとに、著者の見解を批判するのは筋違いではありますが、「現時点で」 の対策を考えることが重要ですので、その観点で、私は意見を述べています。また、現時点においても、( 著者の見解はわかりませんが ) 所得税減税・消費税増税論が存在していることを考えれば、完全に筋違いだともいえないと思います。
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