言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

田母神航空幕僚長解任の是非

2009-08-07 | 日記
田母神俊雄 『自らの身は顧みず』 ( p.17 )

 解任されたあと、私はすぐに国会に参考人招致された。国会で証言することに異論はない。むしろ私としては積極的に応じたかったほどだ。しかし、与野党の政治家は自分たちの言っていることのおかしさに気がついていたのだろうか。
 与党の自民党は私が政府見解に反したことを問題にしていた。だが、私は「日本は素晴らしい国だ」「侵略国家ではない」と言ったのである。民主党は、日本がいい国だと言うような人物を、何故、航空幕僚長にしたのかと言って自民党の任命責任を追及している。日本の国は悪い国だと言うような人を航空幕僚長に任命すべきというのだろうが、これってなんだか変ではないか。
 私の意見を問題にするというなら、今後、自衛隊高官にはみな、「日本は侵略国家だ」「日本は悪い国だ」ということを信じる人物を充てよということになる。陸海空幕僚長には日本は悪い国だと言う人を継続的に当てなければならないと言ったら、それは漫画ではないか。
 浜田防衛相が「幹部自衛官の教育では村山談話をはじめとする政府の歴史認識を踏まえた適切な教育をすすめていく」と述べているの もゆゆしきことだ。
 これでは言論統制、思想統制ではないか。


 「日本は素晴らしい国だ」 、「侵略国家ではない」 と、「正しいことを、愛国心をもって」 書いたら、航空幕僚長を解任された。それは変ではないか、言論統制・思想統制ではないか、と書かれています。



 要は、過去の戦争につき、日本政府は非を認めている。それに対して、田母神さんは、「日本は正しかった」 と考えている。日本政府と田母神さんとで、意見が異なっているわけです。

 そして田母神さんは、日本政府とは異なる見解を、外部に発表したところ、解任された。そこで、納得のいかない田母神さんは、自分の信じる 「正論」 を本に書き、世間に訴えているわけです。



 しかし残念ながら、田母神さんの解任は 「やむを得ない」 と思います。

 田母神さんの解任について、その是非を考える際に重要なのは、「田母神さんの意見が正しいかどうか」 ではありません。かりに、( 田母神さんの意見が正しく ) 「日本は素晴らしい国」 であり、「侵略国家ではない」 としても、政府見解とは異なる見解を、外部に発表したことそのものが、間違っているのです。当時、田母神さんは

   日本政府の一員であり、しかも高級幹部だったのですから、政府見解に反する意見を外部に発表してはならない

のです。こんなことは、組織に所属していれば当然のことで、それがわかっていない時点で、「論外」 なのです。

 政府見解に反する意見を外部に発表した時点で、「解任されてもやむをえない」 と考えられ、さらに、解任されたことに納得がいかない、というところで、「論外」 だと考えられます ( 田母神さんは 「与党の自民党は私が政府見解に反したことを問題にしていた」 と書かれていますが、まさにその通りなのです ) 。



 田母神さんが、ご自分の意見を持たれることは自由ですが、組織に所属する人間が、それを外部に発表してはいけない。「日本は侵略国家ではない」 と信じるなら、それは

   政府内部で論議すべき

なのです。これが外交問題になり、国益を害する結果になる可能性を、田母神さんは考えなかったのでしょうか。意見を

   外部に発表するなら、政府内部で論議したうえで、意見の一致をみた後でなければならない

のです。政府内部で論議したくても、政府が論議しようとしない、あるいは、政府内部で論議したけれども自分の見解が容れられない、というのであれば、

   黙って政府見解に従うか、あくまで信念を貫いて ( 自発的に ) 自衛官を辞めるべき

なのです。



 したがって、私は、田母神さんの解任は 「やむを得ない」 と考えますが、

 田母神さんがもっとも主張したい点、すなわち、「日本は侵略国家ではない」 という意見については、解任の当否とは異なり、論じる価値があると思います。田母神さんに対して、「論外」 だとか、ずいぶん失礼なことを書きましたが、田母神さんとしては、解任された経緯を述べることによって、

   歴史認識についての国民的論議を巻き起こせれば、本望

ではないかと思います。

 私は、「田母神俊雄 『自らの身は顧みず』 について」 に書いたとおり、歴史認識についても考えてゆこうと思っています。もしも田母神さんが、この文章をご覧になられましたなら、そこのところをお汲みとりのうえ、ご理解いただければと思います。

4 コメント

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公立学校の教師は? (えまのん)
2009-08-07 09:40:59
公立学校の教師についても、同様のお考えでしょうか?
自衛隊の高級幹部と、地方公務員との比較はナンセンスかもしれませんが、大きく分ければ同じ公務員です。
「組織に所属していれば当然のこと」「黙って政府見解に従うか、あくまで信念を貫いて ( 自発的に ) 教職を辞めるべき」でしょうか?

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私としては (memo26)
2009-08-08 14:28:38
やはり組織の一員である以上、あまり好ましくないと思います。許されない、とまで言い切る自信はありません。

しかし今回の場合、懸賞論文が問題になったのであり、「黙って従う」 とはすなわち、懸賞に応募しないことにほかなりません。この制約は厳しいとお考えですか? なにもしなければよいのですよ?
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Unknown (田ノ神)
2009-08-13 20:47:48
どもです。
中国語の方は進んでいますか?

懸賞論文の件は…その際に大量の自衛官が投降したという事実から何かひっかかるものを感じます。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081106/plc0811061113003-n1.htm

論じられている点については、おおよそ同じ意見です。

教員については…ある程度、独立性が担保されていたような気も…。
教育委員会制などなど…。
別件ですね。
これについては教職系の院に籍をおきながら(汗)不勉強ですので、確かではないです。
いずれ、時間が出来たら調べてみます。
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Unknown (memo26)
2009-08-14 18:19:26
 この本の巻末に、次のような資料が添付されています。

---- ここから引用 ----

( 参院外交防衛委員会での答弁 ) 平成二十年十一月十一日

質問者  いわゆるアパの論文につきまして、二百三十五件の応募のうち九十四件が自衛官だということが判明しておりますが、参考人は記者会見で、こういう論文があるということを紹介はしたことがあるが、勧めたこと、組織的に勧めたことはないと言っておりますが、自衛隊のどなたに紹介をしたのかお答えいただきたいと思います。

参考人(田母神俊雄)  私は、航空幕僚監部の教育課長にこういうものがあるというふうに紹介をいたしました。そして、私が指示をしたのではないかというふうに言われておりますが、私が指示をすれば、多分、九十八とか七十何ぼとかいう数ではなくて、もう一千を超えるような数が集まると思います。

---- ここまで引用 ----

 田ノ神さんが、どういうふうに 「ひっかかる」 のか、私にはわかりませんが、上記引用部分と関連しているのではないかと思います。なんらかのご参考になればと思います。

 教育委員会がどういうふうに関連してくるのか、私にはわからないのですが、お時間のあるときにでも、教えてください。

 中国語はそれなりに進んでいます。いまは、中単語をたくさん覚えようと思っています。
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