言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

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カバレロの議論

2010-01-19 | 日記
 私は、「事実上、終身雇用は 「終身」 雇用だった」 のところで、竹森俊平著 『資本主義は嫌いですか』 を引用していると時間がかかりすぎるので、他の本を併行して書く、と述べました。

 結局、他の本ばかり書くことになっています。それがずっと気になっていました。そこで、このあたりで、『資本主義は嫌いですか』 の内容を、最後まで扱いたいと思います。



竹森俊平 『資本主義は嫌いですか』 ( p.96 )

 さて、カバレロは議論のために、このワルラス法則を活用する。彼の議論は、「実物財」 と 「金融資産」 という二つの財からなる世界経済を考えてなされる。通常のマクロ経済学では、株式や債券のような 「金融資産」 と 「貨幣」 とを分けて考え、三つの財からなる経済を考えることが多いが、ここで彼は 「貨幣」 と他の 「金融資産」 の違いを考えず、一緒に扱って、二財からなる経済を議論する。
 しかるに、「実物財」 と 「金融資産」 という二つの財のうち、「金融資産」 については、新興国で 「投資対象が不足する」 というカバレロの基本認識に基づけば、需給の不一致が考えられる。つまり、「金融資産」 については、「投資対象への需要」 はあるのに、それに見合った 「投資対象の供給」 がないのである。これは新興国の台頭にともなって、世界経済に 「金融資産」 市場の 「超過需要 ( 需要が供給を上回る )」 が生じたことを意味する。
 「金融資産」 の市場では 「超過需要」 が発生しているのだとすると、「ワルラス法則」 を用いて、「実物財」 の市場がどうなっているかを予想できる。すなわち、「実物財」 の市場は、「超過供給」 の状態にあるはずである。以上をまとめると、新興国が台頭する過程で、「投資対象の供給」 が十分に拡大しなかったことにより、「金融資産」 の市場における 「超過需要」 と、「実物財」 の市場における 「超過供給」 の傾向が同時に発生したということになる。これが現在の世界経済の状況である。
 もし、ワルラスの考察に従って、この時、相対価格の調整を通じて、両市場で同時に需給均衡が満たされるようになるのだとすれば、その相対価格の調整はどのような性格のものであるべきか。答えは、超過需要が発生している 「金融資産」 が、超過供給の発生している 「実物財」 に対して高価になる相対価格の調整である。それが、この局面で必要とされるのである。そのような相対価格の調整は、「金融資産」 の価格が上昇することによっても、あるいは 「実物財」 の価格が下落することによっても達成できる。もちろん、「金融資産の価格上昇」 と 「実物財の価格下落」 の二つが同時に起こってもよい。ここでは、二つの価格変化が同時に起こるという最後のシナリオになると考えよう。そう考えると、現在、世界経済に起きているさまざまな現象が一度に理解できるからである。
 まず、「金融資産」 の価格上昇だが、金融資産を 「株式」 と考えるなら、その価格とはもちろん 「株価」 である。二〇〇七年にサブプライム危機が発生するまでは、実際に、アメリカなど主要先進国の株式市場は好況で潤い、株価は記録的水準に達していた。新興国についても、二〇〇六年までの中国の上海株式市場のように、大幅な株価上昇を記録していたところがあった。
 一方、「金融資産」 を国債や社債のような 「債券」 と考えるならば、その価格上昇とは 「金利」 の低下を意味する。債券価格と金利との間には、前者が上がると後者が下がる関係があるからだ。四ドルの確定利息を保証する債券の場合、「債券価格」 が八〇ドルならば、八〇ドル投資して四ドルの利息が得られるということから 「金利」 は五%だが、「債券価格」 が一〇〇ドルに上昇すると、一〇〇ドル投資してようやく四ドルが得られるということから 「金利」 は四%に下がる。
 したがって、カバレロの基本認識のように、「金融資産」 の市場で超過需要の傾向があるならば、「金利」 は低下傾向になる。世界各地でバブルが頻発する原因となった世界金利の低下傾向はこのように説明できる。
 それではもう一つの 「実物財」 の市場の方はどうだろうか。ここでは 「超過供給」 が発生しているのだから、実物財の価格が下落しなければならない。すなわち 「デフレ」 の発生だ。しかも、これは 「超過供給」 、つまり 「売れ残り」 を背景としたものだから、不況圧力を伴った 「デフレ」 と解釈できる。
 それで思い出されることがある。日本は九〇年代後半に長期にわたるデフレに陥ったが、他の先進国、とくにアメリカやドイツなどは、二一世紀早々、「デフレ」 とまではいかなくても、インフレ率の一%台への下落、すなわち 「ディスインフレ」 を経験した。連銀のグリーンスパン議長は、この時、アメリカ経済がデフレに陥ることを強く危惧した。後に 「住宅バブル」 の一因になったと批判された長期にわたる連銀の低金利政策も、当時のデフレの脅威が原因である。
 二一世紀早々に発生した、この世界的な 「デフレ」 もしくは 「ディスインフレ」 の傾向を、「金融資産」 市場における 「超過需要」 の傾向の裏腹である、「実物財」 の市場における 「超過供給」 の傾向の産物と解釈するなら、何もかも辻褄が合う。要するに、「世界的な低金利」 と 「世界的な低インフレ」 とは、盾の両面だということである。




 ワルラスの法則 ( の核となる部分 ) を、「実物財」 と 「金融資産」 にあてはめれば、金融資産は値上がりし、実物財は値下がりするはずである。金融資産バブルが発生した原因はここにあり、デフレの原因もここにある、と書かれています。



 「ワルラスの法則」 について、ここでは 「お金も 『商品』 である」 と考えたうえで、話が進められています。



 著者の ( というか、カバレロの ) 議論はきわめて説得的です。

 しかし、それならなぜ、サブプライム問題を契機に株価が急落したのか、それがわかりません。上記理論に従えば、価格が下落する場合であっても、さほど下落しないはずです。また、株価が下落した場合であっても、ただちに元の価格に戻るはずです。



 この問いに対して、私は答えを持ちあわせていませんが、

 投資の対象としては、株式のほかに、債券、不動産、商品など、多様なものがありますから、投資対象のあいだで資金が動いていると述べれば、それが答えになるのかもしれません。

 しかし、たとえそうであったとしても、下落の程度は小さいはずではないか、とは思います。



 わからないので、ここで、投資対象のあいだを資金が巡回していると考え、カバレロの論理は 「正しい」 と仮定して考えれば、

   (1) 現在のデフレは、なかなか終わらない

と予想されます。デフレが終わらないなら、お先真っ暗、と考えてしまいがちですが、逆に言えば、金融資産の価値が ( 長期的に ) 上昇するはずである、ということなので、おおかたの予測とは異なり (?) 、

   (2) 債権国である日本の未来は、あかるい、

と考えられます。



 このように予測した場合、問題は、「資金をどこに振り向けるか」 になると思います。ここを誤れば、資産をドブに捨てるのと同じであり、日本の強みが失われてしまいます。日本は没落の一途をたどるでしょう。

 本当に日本の未来はあかるいのか、資金をどこに振り向けるべきなのか、じっくり考えたいと思います。
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