言語空間+備忘録

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ロシアの政治的台頭

2011-06-01 | 日記
田中宇 『日本が「対米従属」を脱する日』 ( p.51 )

★近づく多極化の大団円(2009年9月19日)

 9月17日、米オバマ大統領が、ポーランドとチェコに設置を予定していたミサイル防衛設備(地対空ミサイル基地)の計画を取り止めると発表した。この計画は前ブッシュ政権時代に決定され、表向き、イランが米国に向けて長距離ミサイルを発射した場合の迎撃設備とされていたが、東欧はイランから米国への弾道上に位置しておらず、実際にはロシアのミサイルを迎撃する設備と考えられ、ロシアから強い反対を受けていた。しかも、米国のミサイル防衛設備は開発途上で、実験は度重なる失敗をしていた。
 オバマがこの迎撃基地の計画を取り止める理由として発表したことも「敵はイラン」の建前に基づくもので、「イランの脅威は、長距離ミサイルよりも中短距離ミサイルの方が大きいので、もっとイランに近いイスラエルとコーカサス(アゼルバイジャン)に迎撃設備を置いた方がよいと判断した」という理由だった。イスラエルへの迎撃ミサイルは、すでに配備されている。米政府は、欧州にもっと小規模な既存のミサイルを配備するとも発表している。
 アゼルバイジャンの迎撃設備は、同国にあるロシアの基地に設置する構想だ。ロシア敵視は一気に弱められている。変更後の新計画の開始は2011年で、そもそも2年後に本当にアゼルバイジャンにイラン敵視の米軍迎撃ミサイルの配備計画が始まるかどうかも怪しい。ここ数年、アゼルバイジャンはイランと親密な関係にある。米国では、野党の共和党が「イランとロシアの両方を増長させてしまう愚策だ」と非難したが、オバマは「これは(前政権から留任した共和党寄りの)ゲーツ国防長官が決めたことだ」と言い返した。
 オバマ政権の計画変更は、以前から予測されていた。すでに8月27日にポーランドの新聞で報じられ、「米国はもっとロシアに敵対的でない国に迎撃ミサイルを設置することにした」と解説された。今回のタイミングで発表されたのは、イランの核問題への対応について米露で交渉が進んでいることと関係がありそうだ。米国は、イラン問題でロシアの協力をとりつけるために、迎撃ミサイル基地問題で対露譲歩したというのが、米国の分析者の一般的な見方だ。
 ロシア政府は、オバマがミサイル防衛で譲歩した後も、核問題でイランを制裁することには反対だと明確に表明している。プーチン首相は「米国は、次はロシアのWTO(世界貿易機関)加盟を支持してくれ」とまで要求した。そのため米共和党は、オバマの譲歩は無駄だったと批判している。しかし実は、敵だったはずの国に無意味な譲歩を行うのは、ブッシュが北朝鮮に対して譲歩を重ねて以来の、米政府の超党派的なお家芸である。

★捨てられた東欧

 ミサイル防衛構想はレーガン政権時代から常に予算を大幅に上回る金食い虫であり、東欧2ヵ国への迎撃ミサイルの配備も、当初予定の8億ドルから、5倍の40億ドル以上へと大幅に増加していた。金融救済支出や今後の健康保険改革などで急速に財政赤字が増える米政府は、予算を切り詰めなければならない状況にある。これも計画変更の一因だろう。
 ロシアは9月6日から、アフガニスタンに武器や物資を運ぶ米軍機が自国上空を通過することを許可しており、アフガンへの従来の補給路だったパキスタンが政情不安定になっていく中、米国はこの面でもロシアを敵視できなくなっている。この点も、今回のオバマの計画変更と関係ありそうだ。
 東欧は、地政学的にロシアとドイツという二つの強国にはさまれ、独露(第二次大戦後は米ソ)の都合で分割・蹂躪されたり、独露を敵対させようとする英国の謀略の駒として使われたりして、不運な歴史をたどってきた。冷戦終結後、東欧はポーランドを筆頭に、米国との関係を強化して独露からの自立を保とうとした。
 しかし、米国はブッシュ政権時代から、自立をめざす東欧諸国の親米姿勢を逆手にとって、ポーランド軍をイラク派兵させて苦労させたり、ミサイル防衛計画で米露対立を煽る駒として使ったりしたあげく、最後に余力のなくなった米国は、今回のオバマの計画変更によって東欧を捨てた。今回の計画変更は、米国に対する東欧の期待感を根本から失わせるだろう。長期的にみて、東欧は再び独露からの板挟み状態に戻っていきそうだ。
 EU内ではドイツがフランスとの関係親密化を加速させ、英国を除外するかたちでEU統合(政治・軍事統合)に拍車をかける傾向を強めている。独仏中心のEUは、ロシアと緊密な関係を結びたがっている。東欧は、その大構想の中に入っていかざるを得ない。


 米国はロシア敵視から、ロシアに譲歩する姿勢へと変わった。米国に見捨てられた東欧は米国への期待感を失うだろう。EU内ではドイツとフランスが関係を親密化させ、独仏中心のEUはロシアと緊密な関係を結びたがっている、と書かれています。



 著者の文章を箇条書き風にまとめれば、
  • 米国は「表向き、イランが米国に向けて長距離ミサイルを発射した場合の迎撃設備」として「ポーランドとチェコに設置を予定していたミサイル防衛設備(地対空ミサイル基地)」を建設するとしていたが、それは米国の「建前」であり、本当は「ロシア」のミサイルを迎撃するためだった。
  • オバマ大統領の時代になり、米国はこの計画(基地建設計画)を中止した。その際に米国は「イランの脅威は、長距離ミサイルよりも中短距離ミサイルの方が大きいので、もっとイランに近いイスラエルとコーカサス(アゼルバイジャン)に迎撃設備を置いた方がよいと判断した」と発表したが、そんなことは前からわかっていたことである。本当の理由は「ロシア」敵視を続けられなくなったからである。米国は、イラン問題でロシアの協力をとりつけるために、迎撃ミサイル基地問題で対露譲歩したというのが、米国の分析者の一般的な見方である。
  • しかしロシア政府は、オバマがミサイル防衛で譲歩した後も、核問題でイランを制裁することには反対だと明確に表明している。そのため米共和党は、オバマの譲歩は無駄だったと批判している。
  • 米国がロシアに譲歩したため、東欧は米国に見捨てられた。東欧の米国に対する期待感は失われるだろう。
  • 独仏中心のEUはロシアと緊密な関係を結びたがっており、東欧はその大構想の中に入っていかざるを得ない。
となります。



 米国がイランの核問題や、アフガニスタンでの対テロ作戦を優先してロシアに譲歩したために、東欧は米国に見捨てられた、と著者はいうのですが、

 著者が述べるように「独仏中心のEUは、ロシアと緊密な関係を結びたがっている」のであれば、東欧には安定がもたらされることになります。「東欧は、地政学的にロシアとドイツという二つの強国にはさまれ、独露(第二次大戦後は米ソ)の都合で分割・蹂躪されたり、独露を敵対させようとする英国の謀略の駒として使われたりして、不運な歴史をたどってきた」のは、その両側に位置するドイツとロシアが対立していればこそ、起きた歴史だからです。したがって、

   EU(独仏)とロシアが緊密な関係を結ぶならば、
   米国が東欧を「守る」必要性はなくなります。

著者のように「米国は東欧を見捨てた」と考える必要はないでしょう。



 これを(私なりに)要約すれば、

   米国とロシアは敵対関係ではなくなりつつあり、
   EU(独仏)とロシアも敵対関係ではなくなりつつある

となります。中東の安定をいかにしてもたらすか、といった問題は残っているものの、世界は着実に「安定」=「平和」へと向かいつつあると考えてよいのではないかと思います。



 なお、ロシアは中国との間にあった領土問題も解決しています。ロシアが米国からも、EUからも敵視されなくなりつつあるならば、ロシアの立場は「きわめて良好」ということになります。

 したがって、ますます「北方領土返還の可能性」は低くなりつつあると考えられます。
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3 コメント

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ロシアの最終目標 (四葉のクローバー)
2011-06-01 16:24:02
ロシアの最終目標は「EU加盟」だと思います。
これが実現したら、ロシアは磐石です。
EU議会決議文 (四葉のクローバー)
2011-06-02 13:43:46
但し、EUの立法機関であるヨーロッパ議会は、2005年7月7日に、北方領土問題に関して、
「第二次世界大戦終結時にソ連により占領された“日本の北方領土”を返還するよう」
勧告する旨の決議文を採択しました。

ロシア外務省はこの決議に対し、
「日ロ二国間の問題解決に第三者の仲介は不要」
とコメントし、更に、ロシア議会でも議論になりました。

しかし、何故か、日本の国会では取り上げられず、この決議を報道した日本のメディアは、読売新聞だけでした。
ロシアに不利になると困る日本の特定の政治家、が動いたのかもしれません。

従って、ロシアがEUに加盟する際は、この決議を全く無視する訳にもいかないので、日本に多少の譲歩はするかもしれません。

しかし、満額回答(四島一括返還)とはならないでしょう。
春闘(労使交渉)だって、同じですよね。
Unknown (memo26)
2011-06-02 17:08:06
> 従って、ロシアがEUに加盟する際は、この決議を全く無視する訳にもいかないので、日本に多少の譲歩はするかもしれません。

 それくらいしか返還の可能性はないわけですね。EUも崩壊するかもしれませんし、どうなることやら。。。

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