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公共事業におけるB/C分析、その問題点と改善策

2010-04-23 | 日記
高橋洋一 『日本は財政危機ではない!』 ( p.116 )

 道路族が跋扈 (ばっこ) し、不必要な道路ができてしまうのは、「真に必要な道路」の定義が曖昧だからである。
 公共事業をやるべきか否かの基準ははっきりしている。当たり前の話だが、投資に比べて便益が大きいことが絶対の条件となる。道路の場合、高速道路料金といった直接的な収入だけでなく、その経済効果も含めて便益を考え、道路建設費、維持費などがそれに見合うケースなら、道路をつくる。
 これを数式で表せば、B(ベネフィット)/C(コスト)が一を上回っていることが条件だ(ベネフィット・オーバー・コスト)。このB/C分析の手法は、半世紀の歴史があり、手法も確立されており、海外では早くから導入されている。
 日本も遅まきながら一九九八年から、新たな公共投資については取り入れているが、日本のやり方には二つほど問題がある。
 第一点は、「新たな公共投資」に限っていることである。いまどき、新たな公共投資などほんの少し、大半が「改変」なので、抜け穴ができる。建築にたとえれば、リフォームは新規建築ではないので、建築免許のない業者でも手がけられるというのに似ている。
 第二点は、B/C分析をやる場合、「事後的」に見た数字ではなく、「事前」の見積もりによって計算されていることである。当然ながら、B/C分析はできるだけ「事後的」な費用と効果を想定するのが基本だ。
 ところが、計画書の段階で分析をするので、どうしても甘くなる。計画書段階では、ベネフィットを過大評価し、コストは逆に過小に見積もりがちだ。実際、そういうケースが圧倒的に多く、工事をやってみるとコストがはるかに多くかかったりする。コスト計算の見積もりを適当にやるのは人間の性なので、事前のコストをきっちりやれといってもむずかしい。公共事業をやりたがっている場合は、なおさら意図的にコストは過小、効果はばら色になってしまう。
 たとえ意図的な操作をしなくとも、プロジェクト採択後に環境が変化して、コストが当初の見積もりより多くかかるという事態は常に起き得る。
 だから、実際にはベネフィットは五割減、コストは五割増とすれば、B/C分析の基準を、一ではなく、三ぐらいに設定するのが合理的だ。これぐらい高く設定しておけば、事後的な計算に基づき、真に必要な公共投資が、もっと正確に判定できるというわけである。
 事実、諸外国の採択基準は日本よりはるかにハードルが高い。日本の場合、一般の公共事業については、その採択基準は、B/C分析で一以上、道路事業に関しては、やや厳しく一・五以上としていたこともあるが、ニュージーランドの道路事業採択基準は四以上。ドイツでも三以上のプロジェクトを優先して採択している。
 仮にニュージーランドやドイツの基準を採用して、道路事業の採択を厳しくやればどうなるか。自民党の道路族のいうように、今後一〇年間で道路特定財源、六〇兆円を投入して道路をつくらなければならないという話などあり得なくなる。
 四以上なら現在、採択されている四一の高速道路プロジェクトのうち八路線、三以上でも一六路線しか採択されない。
 三以上を基準に、ざっくり計算すると、今後一〇年間の道路への投資は、二〇~三〇兆円にとどまるはずだ。すると、道路特定財源の半分以上が余る。
 将来人口、自動車保有台数などから今後の道路需要を推計した「交通需要推計」でも、道路需要は二〇二〇年をピークに縮小していくことが明らかになっている。道路族の主張はなおさら成り立たない。
 厳しい基準を設け、真に必要な道路だけに投資を絞れば、年間でも三兆円くらいは簡単に浮く。


 日本では、「真に必要な道路」の基準が曖昧である。日本でも、1998 年からB/C分析を行ってはいるが、その対象は「新たな公共投資」に限られているうえに、「事前」の見積もりで計算しているために、数字が甘くなりがちである。「事前」の見積もりの場合、効果(便益)は 5 割減、費用は 5 割増で計算し、B/C分析の基準を、1 以上ではなく、3 以上に設定するのが合理的である。事実、海外ではそのような基準が設定されている、と書かれています。



 判定が甘くなりがちなので、基準を「やや厳しく」設定しておくべきである、という主張は、その通りだと思います。

 また、( 基準を厳しくせず、1 以上とする場合であっても ) B/C分析の「数字の大きいもの」(=費用対効果の大きいもの) を優先すべきではないかと思います。



 著者は、「日本の場合、一般の公共事業については、その採択基準は、B/C分析で一以上、道路事業に関しては、やや厳しく一・五以上としていたこともあるが」と書かれています。この記述から推測するに、おそらく、道路事業の基準は、「もともと 1.5 以上だったものを、1 以上に変え、道路事業の基準を緩やかにした」のではないかと思われます。

 とすれば、もともと緩かった基準 ( 1.5 以上 ) を、さらに緩くした ( 1 以上 ) のはなぜか、という疑問が生じます。

 おそらく、道路族の要請により、「政治的に」融通を効かせる余地を大きくしたのであろう、と思われます。



 しかし、これでは、「費用対効果(B/C分析)」は形骸化し、「B/C分析」は利権の「隠れ蓑」になってしまいます。「B/C分析」で基準を満たしていること ( 1 以上の値になっていること ) を口実に、必要性に乏しい道路が次々に作られてしまう危険性が高い。「名ばかり」B/C分析ではなく、「実質的な」B/C分析を行うためには、基準をもっと厳しく設定すべきではないかと思います。



 日本の場合、採択されている高速道路プロジェクト 41 路線のうち、B/Cが 4 以上のものが 8 路線、3 以上のものが 16 路線である、というのですから、

 これら、費用対効果(B/C)の高い路線を優先的に建設したあとで、費用対効果(B/C)を再計算し、「事後的な」費用対効果(B/C)の値がどの程度になるのか、それを計測すればよいと思います。この作業を行うことにより、「事前の」B/C値と、「事後的な」B/C値がデータとして得られます。このデータをもとに、公共事業を採択する際に必要とすべき「事前の」B/Cを設定すれば、よいのではないでしょうか。

 このような作業を行うことにより、「不要な道路」を建設してしまう愚は、避けられるのではないかと思います。
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