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ファントラ

2009-10-06 | 日記
紺谷典子 『平成経済20年史』 ( p.166 )

 証券不祥事を受けて、4大証券のトップがすべて辞任に追い込まれるなど、証券界には粛正の嵐が吹き荒れた。証券界一の実力者と自他共に認める、野村証券の田淵節也会長も放逐された。金融ビッグバンをめぐって、金融界、外資、行政とのさまざまな戦いが進む最中、証券界にはリーダーがいなくなった。
 証券会社のトップが責任をとらされるのは当然だが、奇妙なことが起きていた。営業特金とならび称されていた「ファントラ」が、一連の証券不祥事の中で、まったくと言ってよいほど問題にされなかったことである。
 財テクと言えば、むしろ信託銀行の本業である。信託各行こそ、多くの企業から資産運用を請け負っている。証券会社の営業特金に対して、信託銀行の口座はファンド・トラスト(金銭外信託)、略して「ファントラ」という。
 財テクに失敗し、損失補填の問題が生じていたのは、営業特金だけではない。ファントラもまったく同様だったのである。

(中略)

 信託銀行の方が悪質というのは、「利益の付け替え」が行われたからである。証券会社の補填は、基本的には身銭を切って行われたが、信託銀行の補填はそうではなかった。信託銀行にとっては重要ではない、他のお客の利益を付け替えたのである。
 たとえば、こういう手段がとられたという。まったく同じ銘柄の売りと買いの注文を同時に出し、その日のうちに両方とも手仕舞う。売りと買いの両方の注文を出すのだから、価格が上がろうと下がろうと、必ず一方が収益を上げ、他方は同額の損失になる。
 値が上がった場合は、買いから入った取引が利益を上げ、売りから入った取引は同額の損になる。値が下がった場合は、その逆だ。
 利益を上げた取引を、補填を要求した大事な顧客の取引と記録し、一方、損をした取引は、どうでもよい顧客の取引とするのである。本来なら、注文を出す前に、どの顧客の取引か記録しておかねばならないのだが、その日のうちに手仕舞うことによって、結果が出てから記録しても、ごまかすことが可能だった。

(中略)

 ファントラ問題が隠された結果、証券監視委員会はできたが、金融監視委員会ができなかったとすれば、問題ではなかろうか。
 当初は、金融監視委員会を作る話もあったのだ。バブル破裂後、つぎつぎと不祥事が露見したのは証券会社だけではない。東洋信金を破綻に導いた尾上縫という料亭の女将の偽造預金証書をめぐる事件には、産業金融の雄といわれた興銀の関与があった。富士銀行や第一勧業銀行の不正融資事件もあり、金融監視委員会の必要が指摘されていたにもかかわらず、証券不祥事の騒ぎで、いつの間にかうやむやになった。


 証券会社の営業特金と同様に、信託銀行にはファントラの損失補填があったが、ファントラ問題は隠され、うやむやになった、と書かれています。



 ファントラ問題は隠され、うやむやになった、とのことですが、こうして出版されており、「表 ( おもて ) には出た」 ということなのだと思います。隠そうとしても、隠しきれるものではない、ということでしょうか。

 しかし、これが事実であれば、信託銀行の 「普通の」 顧客にとっては、たまったものではありません。大口顧客の利益のために、自分の財産を削られたわけで、とんでもない話だと思います。



 「改革」 を行わなければ日本経済は悪化しなかった、と主張されている著者が、「ファントラ問題が隠された結果、証券監視委員会はできたが、金融監視委員会ができなかったとすれば、問題ではなかろうか」 と述べられています。「改革」 反対派の著者も、金融改革は必要不可欠だった、と考えざるを得ないのだろうと思います。



 なお、このような不祥事防止のためにも、法曹増員は有益ではないかと思います。それにもかかわらず、当の弁護士が増員に反対してどうするのか、と思います。
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