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全総 (中華全国総工会) の実態

2010-05-21 | 日記
アレクサンドラ・ハーニー 『中国貧困絶望工場』 ( p.199 )

 一九二五年に設立された全総は、中国共産党と緊密な協力関係を保ってきた。共産党が政権の座についた一九四九年の翌年、政府は全国的な労働組合の設立を認める法律を成立させ、共産党は労働組合の活動を常に指導してきた経緯にある。ちなみに、一九五〇年代初期、共産党から独立した役割を主張しようとした労働組合のリーダーは解任の憂き目に遭っている。その後、全総は共産党の宣伝を伝える「ベルトコンベア」および労働者を締めつける存在として知られるようになった。その代わりに、中国の職場に相当する「単位」というものが労働者の利益を擁護する役目を担った。一九六六年から一九七六年の狂乱的な文化大革命の時代には、労働組合は「経済論者」や「福祉論者」というレッテルを貼られ、会合を禁じられていた。そして、経済改革が始まるまでは、社会の片隅に追いやられていたのである。
 経済改革は労働市場を変えた。国有企業は民営化されて破産するようになり、改革の過程で何百万人もの労働者が職を失った。出稼ぎ労働者は外資企業や民営企業の仕事に殺到した。また、全総の基準や経済のあり方も全般的に激変した。だが、労働組合は旧体制の砦として生き残った。それは、動き始めた列車に何とか飛び乗ろうとしている人間のように、片方の足は列車に引きずられながら、もう片方の足はプラットホームに残したままの姿に似ているとされた。
 中国で唯一存在を許された労働組合である全総の独立性を高める動きは、一九八九年の天安門事件 (天安門を中心に展開されていた学生の抗議活動を弾圧した流血の惨事) で立ち消えになった。学生は自らの手で独立性のある学生会をいくつも立ち上げたが、北京の高官はこれに戦慄したのだ。政治的な反対運動が激化することを恐れ、中国政府は独立志向の強い組織を断固として認めなかったのである。現在、全総の上層部は政府から指名された人間ばかりである。
 中国法では労働組合の役員は労働者またはその代表者による選挙で選ばれると定めているが、実際には政府か共産党が指名した人間である場合が多い。たとえ労働者が自分たちの労組指導者を選出する場合でも、実はその指導者が往々にして政府や共産党が指名した人間であると判明する。
 大抵の場合、工場経営者または共産党書記は労働組合の指導者も兼ねているが、独立性や労働者の利益擁護という仮面は脱ぎ捨てている。一九九三年、外国投資を受け入れた最初の経済特区の一つである深圳 (シンセン) の蛇口地区の二五〇社を調査したところ、労働組合の専従役員がいたのはわずか二社にとどまった。一方、労働組合の役員が社長や副社長も兼務していた企業は一四三社に達した。労働組合の役員が労働者でもあった事例も注目すべきである。
 工場経営者にとっては当然の話である。広東省の靴工場の管理職兼労働組合の代表が説明する。
「工場のトップが労働組合のトップも兼ねている理由は何かって? 簡単なことです。何か問題が発生しても、工場のトップならば当局と話ができますからね。ウチの工場では、労働組合の委員長は工場長が引き受けています。でも、彼はいい人ですよ。国際的な基準で見ると限定的な話ですが、私の役割は工場が従業員を適法に処遇しているかどうかに目を光らせることです」
 中国法は全総に対し、相当広範囲な責任を負わせている。例えば、職場の危険性調査活動、労働者の権利侵害の可能性、労働者に対する法的支援活動、従業員に対する労働契約締結の際の助言、労使紛争における労働者の代理人としての活動などである。
 意外なことでもないが、歴史的に見ると、海外の労働組合の多くは全総とほとんど接触していない。さらに、労働者も全総のことをそれほど高く評価しているわけではない。一九九〇年代に実施された調査では、労働者は労働組合の存在を知らないか不満に思っている状況が一貫して続いていた。
 全総は、従業員側と経営者側の間を調停し、明白かつ立証可能な権利侵害案件における法的弁論に関する労働者への助言を行うなど、労使紛争に介在する役割がある。また、労働者を代表し、賃金や労働条件について経営者側と団体交渉を行うものである。ただし、労働者の抗議活動を支援することは拒絶する。政府に対する挑戦と受け取られてしまい、全総の手に余る話になるからだ。労働者がデモ行進を決行するならば、労働組合の役員はそれを中止させることが求められている。
 全総の地域拠点である広州市総工会の陳偉光主席は主張する。
「労働組合が労働者の利益を代表しようにも、一つには財源不足という問題がある」
 陳偉光主席は、一般大衆レベルの労働組合、地域レベルの労働組合、産業レベルの労働組合で構成されるピラミッドの頂点に立っている。以上のすべてを合計すれば、組合員は一二〇万人になるとのことであり、労働者であれば非組合員でも支援すると約束している。
 だが、二〇〇五年に陳偉光主席と面談した頃、この労働組合は労使紛争解決のために労働者を支援する法務部を設置していたが、そこには職員が六人しかおらず、仕事量が多すぎるために臨時職員を雇って対応している状況であった。労働組合の活動資金は賃金総額の二パーセント相当の組合費にかなり依存している。この組合費は全総の各拠点で企業から徴収しているが、すぐには集まらないことが多い。
「組合費を集めるのはなかなか難しい。何しろ、払いたがらない経営者が多いからね。労働組合法では、そういう経営者を訴えることはできるが、通常はそこまでやらない」
 広州市内で全総の拠点がある民営企業や外資企業のうち、組合費を支払っているのは四〇パーセント未満である。喫緊の課題である現金収入を得るために、労働組合では事務所のロビーに旅行代理店を開設したほどだ。


 中国唯一の労働組合である全総 (中華全国総工会) の実態が記されています。



 中国の労働組合である全総は、「職場の危険性調査活動、労働者の権利侵害の可能性、労働者に対する法的支援活動、従業員に対する労働契約締結の際の助言、労使紛争における労働者の代理人としての活動など」を行うが、

 (1) 「現在、全総の上層部は政府から指名された人間ばかり」であり、「工場経営者または共産党書記は労働組合の指導者も兼ねている」。

 (2) そして、「労働者の抗議活動を支援することは拒絶する」うえに、「労働者がデモ行進を決行するならば、労働組合の役員はそれを中止させることが求められている」。

 (3) また、「労働組合の活動資金は賃金総額の二パーセント相当の組合費にかなり依存している」が、それを「払いたがらない経営者が多い」ために、全総には「財源不足という問題がある」。




 このような状況であれば、労働組合は「ないよりはまし」だとは思いますが、実質的には (さほど) 機能していない、と考えられます。

 一党独裁の共産党体制下では、このような労働組合のありかたは、やむを得ないのかもしれません。しかし、これでは労働者の利益を擁護するどころか、労働者を弾圧する役割を、労働組合が果たしている、ともいえるでしょう。



 中国が経済の資本主義化を認めた以上、労働組合も、当然、政府から独立した組織になることが求められます。

 したがって、日本が「中国人労働者に対する支援活動」を行う際には、全総に資金を渡して事足れりとするのではなく、草の根の活動を支援したり、直接、市民たる中国人労働者を支援することも必要なのではないかと思います。
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