言語空間+備忘録

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石炭による環境汚染

2010-05-13 | 日記
アレクサンドラ・ハーニー 『中国貧困絶望工場』 ( p.141 )

 石炭は他のどの製品よりもチャイナ・プライスの本質を体現している。中国のエネルギー供給量の三分の二以上が石炭由来であり、日本や米国よりも高い比率になっている。また、中国は世界最大の石炭産出国であり、石炭消費国でもある。沿海部で外貨を稼ぎ続けている輸出工場のように、石炭も経済成長のエンジン役を担い続けているのである。
 一方、石炭は中国における最大の環境汚染源であり、世界にとっても環境を脅かす存在として膨れ上がり続けている。石炭を燃焼させれば、世界で最も安価なエネルギーとなるが、最悪の汚染源にもなり、汚染カクテル (窒素酸化物、水銀、二酸化炭素、二酸化硫黄) のガスを排出している。二酸化炭素と二酸化硫黄については、中国が世界最大の排出国なのである。中国は石炭関連の汚染を米国西海岸など世界中に撒き散らしている。だが、中国自身は石炭の性質がもたらす影響を最も理解していると思っているようだ。何しろ、中国の大気中に排出される煤煙と粉塵の七〇パーセント、二酸化硫黄の九〇パーセントが石炭由来なのである。
 二酸化炭素の排出は地球温暖化につながる。二酸化硫黄が水と結合すれば酸性雨となって降り注ぎ、河川や農作物に悪影響を及ぼす。窒素酸化物はスモッグの原因となり、水銀は幼児や子どもたちの神経を損傷するおそれがある。
 石炭は、他の場面でも中国の人々の脅威となっている。中国には炭鉱が約二万八〇〇〇カ所あり、その内の約二万四〇〇〇カ所が小規模炭鉱である。これらの小規模炭鉱が中国の石炭の約三分の一を産出しているが、危険な職場でもある。大規模な国有炭鉱は次第に近代化を果たし、労働力の代わりに機械を導入したり、安全措置を整備したりしてきた。だが、小規模な民間炭鉱の多くは、危険性が高い旧来の運営手法に依存したままである。その結果、中国では炭鉱事故による死者の七〇パーセント以上が後者で発生している。
 加えて、全世界の炭鉱の中で最多の犠牲者を出しているのも中国の小規模炭鉱である。具体的には、中国は全世界の石炭産出量の三五パーセントを占めているが、炭鉱事故による死者数 (報告ベース) の八〇パーセントも中国で発生している。二〇〇六年、中国の炭鉱では四七四六人が事故で亡くなっている。同年で比較してみると、米国の炭鉱事故死者数は合計四七人だったが、これでも最近一〇年間では最悪レベルの死者数なのである。
 小規模炭鉱も国家の旺盛な石炭需要を満たすことに貢献したという意味で役に立っていた時代はあったのだが、八〇年代後半になると、厄介者扱いされるようになった。無許可炭鉱の場合、すでに満杯状況の貨物列車の運行体制に介入して大手国有炭鉱会社の積載部分を減らし、自分の石炭を密かに輸送させるのである。もちろん、違法行為である。無許可の炭鉱主は低品質の石炭を非効率的に採掘し、九〇年代になっても、好ましからざる余剰石炭を積み増していった。しかも、その作業現場は依然として危険な状態のままである。その後、中国はこのような無許可炭鉱を閉山させようと努力を続けている。
 馬建国が経営する無許可の小規模炭鉱は、地元役人への賄賂提供などの汚れた手段を駆使して生き残りを図っている。多くの場合、この分野を監督する立場にあるはずの役人が炭鉱主と利害を同じくしているのである。
 だが、小規模炭鉱は極めて旺盛な需要に応じているので景気は良い。中国では電力が絶対的に不足しているので、需要のペースに追いつこうとして、石炭を燃料とする火力発電所を少なくとも毎週一基立ち上げている状況だ。また、石炭価格が上昇していることから、炭鉱は魅力的な投資対象になっている。
 山西省の人々は石炭の光と影の中で生活し、呼吸している。同省は中国最大の石炭産出地域であり、毎年全国の約四分の一を生産している。鉄鋼、化学、セメント、電力とともに、石炭は地場経済の大黒柱であり、その八〇パーセント近くは鉄道の貨車で運ばれるが、電力に姿を変えた後に送電線で他省に出荷される。同省の発電所は太原の北東四〇〇キロメートルに位置する北京に送電している。省内の村々で石炭の採掘と精製を主たる収入源とするところは全体の八〇パーセントに上っている。
 一方、黒い塊を満載したトラックの向こう側には、濃くて有害なスモッグが一面に漂っている。これは、この地域に眠る石炭の最後の姿が最も目に見える形で現れたものといえよう。一九九八年、国連環境計画 (UNEP) は太原の大気が世界で最も汚染されていると断じた。大気中に浮遊している液体や固体の微粒子の濃度を測定したところ、世界保健機関 (WHO) が定めた基準値の六~七倍の数値となった。このような微粒子を浴び続けると、呼吸器系の疾病に対する感染性が上昇し、すでに肺や心臓に疾患のある場合は病状が悪化すると考えられている。


 中国では、世界で最も安価なエネルギーである石炭を利用しているが、その代償として、環境汚染が進行している。また、中国における石炭の大部分は (中国国内の) 小規模な民間炭鉱で産出されており、(他国の炭鉱に比べ) 事故が多発しており、危険である、と書かれています。



 中国政府、および中国の人々は、環境を犠牲にしてでも、経済成長を望んでいることがわかります。環境を犠牲にしてもかまわない、というと、いかにも中国政府・中国人に問題があるかに聞こえますが、日本も、高度経済成長期には公害問題が発生していたのであり、中国の政府・人々も、日本と変わらないと考えてよいと思います。



 経済成長のためには、多少の環境汚染はやむをえない。中国人がこのように考えているとすれば、中国政府は、「なぜ、無許可炭鉱を閉山させようと努力を続けている」 のかが、わからなくなります。

「小規模炭鉱も国家の旺盛な石炭需要を満たすことに貢献したという意味で役に立っていた時代はあったのだが、八〇年代後半になると、厄介者扱いされるようになった」

と書かれていますが、

「小規模炭鉱は極めて旺盛な需要に応じているので景気は良い。中国では電力が絶対的に不足しているので、需要のペースに追いつこうとして、石炭を燃料とする火力発電所を少なくとも毎週一基立ち上げている状況だ。また、石炭価格が上昇していることから、炭鉱は魅力的な投資対象になっている。」

というのですから、いまなお、「小規模炭鉱も国家の旺盛な石炭需要を満たすことに貢献し」ている、と考えられます。また、

「無許可の小規模炭鉱は、地元役人への賄賂提供などの汚れた手段を駆使して生き残りを図っている。多くの場合、この分野を監督する立場にあるはずの役人が炭鉱主と利害を同じくしているのである」

と書かれていることからみて、労働者の安全を考慮して、「無許可炭鉱を閉山させようと努力を続けている」わけでもなさそうです。



 おそらく、中国の役人が金銭を優先している (賄賂を受け取る) ところからみて、大規模な国有炭鉱の利益のため、といったところではないかと思われます。とすれば ( この推測が正しければ ) 、一般の人々にしてみれば、政府の方針に従って生計の手段を手放すのは馬鹿馬鹿しく感じられるはずです。したがって、小規模炭鉱は、なかなかなくならないと考えられます。

 したがって、小規模炭鉱による水質汚染も、終わらないと予想されます。



 もちろん、最終消費段階 (燃焼段階) の大気汚染も、続くはずです。

 「中国における環境汚染は、簡単には終わらない」 と予想されます。
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