言語空間+備忘録

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中国の微笑外交

2011-01-07 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.9 )

 中国は如何にして台湾を奪うのか、彼らは日本に対するのと同じく、台湾に対しても微笑外交に転じて今日に至る。以前の彼らは、1996年の総統選挙の時、独立派の李登輝氏の当選を妨げようとして台湾海峡にミサイルを射ち込んだように、強硬策を前面に打ち出した。軍事力で脅せば、台湾の有権者は中国の軍事介入を恐れて台湾独立に傾く李登輝氏を当選させることはないと見たのだ。だが、結果は反対に、李登輝氏の圧勝だった。中国共産党はその体験から学び、以降の総統選挙では平静を装ってきた。むしろ、台湾の対中投資や輸出に便宜をはかり、優遇し、中台友好を印象づけた。
 効果は08年1月に行われた台湾立法院(国会)選挙に明確に表われた。中国から渡ってきた中国人(外省人)の政党である国民党が、全議席の4分の3に迫る大勝利をおさめたのだ。元々台湾に住んでいた台湾人(本省人)の政党、陳水扁氏の民進党政権への失望があったとしても、また、小選挙区制度への移行という選挙制度改革があったとしても、それだけでは国民党の地滑り的大勝利は説明出来ない。明らかに、中国の微笑外交が功を奏し、外省人が政権をとった場合に現実となり得る、中国の脅威に対する台湾の有権者の警戒が緩んだのだ。
 台湾側の中国の脅威への警戒心の緩みは、国防力整備の遅れにも明らかだ。言うまでもなく国防の基本は軍事力である。台湾が中国による併合をあくまでも拒否するとしたら、最終的に中国の軍事力に打ち勝つだけの備えを固めていなければならない。にもかかわらず、戦後一貫して台湾優位が続いてきた台湾海峡の軍事力に、いまや明確な逆転現象が起きつつある。
 中国は台湾に照準を当てたM9(射程600キロ)、M11(同300キロ)の短距離弾道ミサイルの配備を続けてきており、その数は1000基を超えた。台湾侵攻を念頭においた中国の空軍力、海軍力の充実がどのように進んできたか、最近の動きを辿ってみる。
 米国防総省は2006年の「中国の軍事力に関する報告書」で、中国の陸軍の総兵力の約3分の1が、また海軍力のほぼ半分が、台湾に振り向けられていると警告した。その時点で中国の軍拡はすでに地域の軍事バランスを危険な状態に陥れていたのである。
 台湾併合を譲れない目標とする中国の軍事力の充実は、07年1月12日、中国人民解放軍が地上発射の弾道ミサイルで800キロ上空の人工衛星の破壊に成功したという衝撃的なニュースによって、改めて私たちに突きつけられた。中国は米国の人工衛星を破壊する能力を手にしたことを誇示したのだ。米国が唯一の超大国であり続けているのは、宇宙における優位を保っているからだが、その優位は、衛星を破壊されれば一挙に崩れ去る危険に直面する。米軍に深刻な打撃を与え得る衛星破壊実験に続いて、中国は、米軍母攻撃用の対艦弾道ミサイルの開発に着手した。射程1500~2500キロの準中距離弾道ミサイル「東風21」に赤外線探知装置を取りつければ、米空母攻撃も可能になる。同時に中国は、ロシアから超音速の長距離爆撃機、バックファイアー(Tu-22M)を調達中である。同機の行動半径は4000キロで、射程500キロのAS-4空対艦ミサイルを3基搭載する能力を持つ。AS-4による被弾の恐れがあれば、米軍の空母も機動艦隊も、有事の際、台湾海峡に近づくことは難しい。

(中略)

 08年3月3日、米国防総省は08年度の「中国の軍事力」報告書を発表した。中国が米国本土に届く大陸間弾道ミサイルの質を向上させ、数を増やしていること、航空母艦の製造に乗り出していること、宇宙への軍事的進出に積極的なこと、「宋」や「元」などの新鋭潜水艦の建造を急ピッチで進めていること、海軍力を主軸とする軍事力の増強は著しく、中国は説明責任を果たしていないことなどを指摘するとともに、台湾制圧能力、尖閣諸島と東シナ海への対処能力を高めていることを強く警告した。台湾海峡での中台軍事力はいまや逆転寸前である。
 台湾に照準を当てた中国の軍拡路線は、台湾に微笑外交を展開し、警戒心を緩めさせながらも、必要ならば、最終的には軍事力を用いるという鉄の意思の表われなのである。


 中国は日本・台湾に対して「微笑外交」を展開している。相手を油断させ、警戒心を緩めさせながらも、必要ならば軍事力を用いるための軍拡に余念がない、と書かれています。



 著者によれば、中国の微笑は「相手を油断させ、警戒心を緩めさせ」るための手段にすぎない、ということになります。

 著者の分析が正しければ、(中国の微笑に惑わされがちな)日本を救う主張である、ということになると思います。



 しかし逆に、著者の分析が外れていれば、とんでもない主張であるということになると思います。中国は相手に「親切」にしているにもかかわらず、裏に悪意があるのではないか、と邪推していることになるからです。

 つまり、受け取りかたによって、「中国は卑怯な国だ。中国の嘘を見抜いた著者は流石だ」ということにもなれば、逆に、「中国は善意で接してきている。中国の微笑がその証拠だ。それにもかかわらず、中国の微笑には、裏に悪意が隠されているなどという『ひねくれた』受け取りかたをする著者は『おかしい』」ということにもなります。

 このあたり、「親中」派と「反中」派とで、考えかたが分かれるところだとは思います。しかし、このブログでは、「親中」「反中」という立場によらず、事例を検討しつつ、著者の主張の当否を判断したいと思います。



 それでは、どちらが正しいと考えるべきなのか。

 著者は、中国が微笑の裏で、着々と軍事力を強化し続けていることを根拠として挙げています。

 軍事力の強化は、国家として一応、当然の行為であるとも考えられますので、軍事力の強化をもって、ただちに「相手を油断させ、警戒心を緩めさせ」るための手段にすぎないと断じてよいのか、いささか疑問があります。

 しかし、中国が(中国の主張によれば)「同胞」であるはずの台湾(人)に向かって、ミサイルの照準をあわせていることは、中国の微笑が「手段」にすぎないのではないか、と考える有力な根拠になると思います。

 したがって私は、著者の主張には説得力があると思います。本来、「同胞」として誠実に融和を図ろうとするなら、「互いに」軍事力を弱める方向に向かうことはあっても、「着々と」軍事力を強める方向に向かうことはないと考えられます。どちらかといえば、台湾は軍事力を強化しない道を歩んでおり、それにもかかわらず、他方、つまり中国が軍事力を強化し続けるというのは、「同胞」に対する態度として「おかしい」のではないかと思います。



 なお、著者は本のなかで、さまざまな事例をあげて、微笑は中国にとっての「手段」にすぎないことを示しています。したがって、すこしずつ引用を続けつつ、その当否を検討したいと思います。
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