言語空間+備忘録

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延命治療を緩和ケアに

2009-09-07 | 日記
森谷正規 『戦略の失敗学』 ( p.266 )

 この巨額の医療費の最も大きい部分が、末期医療である。それは、一人の患者に対しての治療が数百万円を超えることが珍しくない。そのすべてが、必要な治療であったのだろうか。私は『毎日新聞』で長らく書評を担当しているが、〇七年四月に取り上げた久坂部羊著『日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか』(幻冬舎新書)に次のような事例が紹介されていた。敗血症から多臓器不全になった患者の例だが、集中治療室に入って、じつに多くの治療を次々に受けた。人工呼吸、気管切開、導尿カテーテルの留置、高カロリー輸液投与、抗生物質の多剤投与、凍結血漿や強心剤やステロイドの点滴、そして、最後は人工透析まで行われた。
 ところがその患者は、わずか一ヵ月半だけ長らえて死亡した。非常な濃厚治療だが、末期医療にこうした例が珍しくないようだ。
 このような濃厚な延命治療を少なくするために、高額の医療費の制限、診療報酬の定額化など、病院、医師が行う治療に確かな歯止めをかける制度が必要になる。厚生労働省に、それがなぜできないのか。
 この延命治療が、いったい必要なのか。それよりも、強い痛みを和らげる緩和ケアこそが、大半の場合、望ましいはずである。患者も家族も、たいていそれを望んでいる。にもかかわらず、病院の場合、医師の判断により、濃厚な延命治療が行われているのが現状である。末期医療で、いかなる治療をするのかを的確に判断するためには、余命診断の信頼性を高めねばならない。そして、患者に希望を聞いて余命を告知する。いまでは、余命を知りたいと考える患者が多数である。それによって、患者が治療を選択できるのである。
 一方で、緩和ケアの病棟、病床を大きく増やさねばならない。現在はガン患者を主に対象にしているのだが、高齢者の末期医療にも広く利用させることが必要だ。緩和ケアは、最近になって増え始めてはいるが、そのペースが遅く、まだまだ足りない状況である。
 日本医師会の意識調査によれば、末期医療を受ける場所として、二番目に高いのが、ホスピスなど緩和ケア施設であり、三割ほどの人が望んでいる。高度医療を持つ医療機関を望むのは一割強に過ぎない。延命治療をうけず、穏やかに死んでいきたいのである。


 末期患者に対する延命医療は、( 多くの ) 患者が望んでいないにもかかわらず、行われている。延命医療は医療費を増大させる原因になっており、( ホスピスなどでの ) 緩和ケアに変えるべきである、と書かれています。



 患者自身が延命医療を望んでおらず、( ホスピスなどでの ) 緩和ケアを望んでいる以上、医療の重点を移すべきだと思います。それによって、医療費が非常な高額になるのを防げる、という効果も期待されます。

 誤解を招きかねないので強調しておきますが、医療費の高騰を抑えるために ( 医療の ) 重点を移せ、というのではありません。もともと、患者が望まない医療を行うことは好ましくない、という判断がさきにあります。好ましい医療に変えることで、医療費が安くつくなら、それに越したことはありません。



 ここで、医師がなぜ 「濃厚な」 延命治療を行うのか、それが問題になります。考えられるのは、医学教育が 「生かす」 治療に偏っていることや、安楽死は法的に殺人罪 ( または同意殺人罪 ) に問われかねないこと、医師の使命感、医師にとって病気と 「闘わない」 ことは敗北でもあること、患者や家族のなかには 「生かす」 治療を望む人もいることとのバランス、などです。

 しかし、「生きていればよい」 のではなく、「価値ある生でなければ生きていても意味がない」 といった観点や、患者の 「自己決定権」 を尊重する観点を重視すれば、延命可能性・治療可能性について、医学的な説明がなされたうえで、

   延命治療を続けるのか、緩和ケアに移るのかは、患者の真摯な自己決定に委ねるべき

であると考えられます。医学、そして医師は、あくまでも患者に奉仕する存在であることを考えれば、この際、医学教育や医師の気持ちは判断材料にはならない、と思います。



 もっとも、殺人罪 ( または同意殺人罪 ) については別途、考慮を要します。必要であれば、法改正を行えばよいと思います。
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