言語空間+備忘録

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円高による日本経済への影響

2010-10-27 | 日記
三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 ( p.73 )

 さて、円高が一気に進展したリーマン・ショック以降、マスメディアでは、
「外需依存の日本経済は、円高で破滅する」
 なる論調が流行りました。エコノミストと自称される方々が、連日デレビの画面に登場し、もっともらしく、
「日本経済は外需依存が大きいんですよ。円高は大ダメージです」
 などと、したり顔で繰り返したものでした。
 そんな中、わたくしは週刊誌のインタビューで、
「通貨高で破綻した国など、これまでに一つもありませんので、大丈夫です」
 などと発言したところ、意外にもその後、円調者が大勢現れ、驚いた記憶があります。
 そうなのです。実は人類の歴史上、通貨暴落で破綻した国は、ロシアやアルゼンチンを筆頭に山ほどありますが、通貨高で破綻した国など一ヵ国たりとも存在しません。そもそも、通貨が買われるということは、その国の経済の評価が「相対的に」高まっているということを意味しているわけです。評価が高くなっている国が、世界に先駆けて破綻するというのも妙な話です。
 実際、その後も日本円の高騰は続いていますが、日本経済は幸いにも破綻する兆候は一切見せておりません。
「そんなことはない! 輸出企業の決算は惨澹たる状況で、失業者も増えているじゃないか!」
 と、反駁されそうですが、現在、主要国の中で最も失業率が低いのは日本です。09年6月時点における各国の失業統計を見てみますと、アメリカが9・5%、イギリスが7・8% (4月~6月期ILO基準) 、ユーロ圏が9・4%となっています。ユーロ圏の中でも、特にスペインの状況は凄まじく、直近の失業率は何と18・1%にまで達しているのです。
 また、中国は「都市部の登録失業者」のみをカウントし、2009年は登録失業率を4・6%以内に抑える (2008年は4・2%) と発表しています。しかし、この中国の「登録失業率」には、農村出身の膨大な出稼ぎ労働者、通称「民工」は含まれていないのです。
 中国社会科学院の「社会青書2009年」によると、民工を含めた都市部の失業率はすでに9・4%に達しているとのことです。中国ほどの労働人口を抱えながら、失業率が二桁近いのです。失業者総数は、実際のところ何千万人に達しているのでしょうか。
 米英欧中などが軒並み二桁近い失業率に苦しむ中、日本の完全失業率は直近で5・4%です。もちろん派遣契約を切られる、あるいはリストラされるなどして、塗炭の苦しみを味わう方々が増えているのは事実です。しかし、現在の世界では「これでも他国に比べれば、圧倒的にマシ」であることは、紛れもない事実なのです。
 また、トヨタ自動車やソニーに代表される大手輸出企業は、確かに過去に類例のないレベルの決算悪化に苦しんでいます。
「円高は日本の輸出製品の現地価格を吊り上げ、競争力を低下させます。外需依存、すなわち経済に輸出が占める割合が大きい日本経済を円高が直撃し、日本経済は破滅の淵に追い込まれることになるのです」
 などと新聞記事に書かれると、つい頷いてしまう方は多いと思います。しかし、実際のところこの種の論調は、二重三重に間違いを含んでいるので、ご注意ください。
 まず、「日本経済に輸出が占める割合が大きい」(という説) ですが、実はこれは根拠が全くない嘘なのです。経済に輸出が占める割合を比べた場合、日本は主要国の中で「下から二番目に小さい」という結果になります。

(中略)

 断っておきますが、わたしは別に日本の輸出製造業の価値を過小評価する気も、否定する気も全くありません。日本の輸出は年間に80兆円近く (2007年) を稼いでおり、日本経済の一翼を充分以上に担っている巨大産業です。国際競争力もまだまだ高いです。
 とは言え、日本の輸出依存の状況、すなわち輸出産業を日本経済全体と比較すると、他国よりは割合が小さくなります。と、単純に事実を述べているだけです。日本の輸出産業が小さいわけでも何でもなく、単に日本経済の規模が大きすぎるのです。
 ちなみに、日本の輸出対GDP比率がわずかに15・5%で、主要国の中ではアメリカについで低いと「事実」を書くと、以下の反論をされる方がいます。
「いや、日本の輸出は確かにGDPの15%規模かも知れないが、例えばトヨタ自動車などに部品や資材を納入している下請け、孫請けの企業も多い。そういう企業分も含めれば、実は日本の『外需依存』はもっと高いのだ」
 残念ながら、この手の主張をされる方は、GDP統計について基本すら理解していません。GDPとは、各企業が生産した際の「付加価値」の積み重ねとしても集計されます。
 すなわち、トヨタから輸出された自動車の部品として納品された付加価値分は、始めからGDPの「輸出」(正確には「純輸出」) 項目にカウントされているのです。GDPは最終需要者、すなわち「最後に買うのは誰なのか」で支出項目別に分類されますので、当然、そうなります。


 日本経済は外需依存であると言われているが、じつは日本経済の外需依存度は低い。また、日本の失業率は他国に比べて低い、と書かれています。



 日本経済の外需依存度が低いというのは、たしかにその通りだと思います。そしてまた、日本の外需依存度が低いことは輸出産業の規模が小さいことを意味しない、たんに日本経済の規模が大きすぎるために、「相対的に」 (日本経済全体に占める) 輸出産業の規模が小さいのである、ということも、その通りだと思います。

 しかし問題は、それなら輸出産業が重要ではないといえるのか、ということです。

 輸出とはすなわち、他国に何かを売って「お金」を得ることですから、そこに利潤が上乗せされているかぎり、輸出は日本の富を増大させる活動だといえます。いかに日本経済全体の規模が大きくとも、「さらに」富を増す活動たる輸出が重要ではない、とはいえないでしょう。

 また、日本の輸出産業とはすなわち製造業ですが、製造業は国家の根幹であると考えてよいと思います。製造業があるからこそ、日本の科学技術水準が維持され、向上するのであり、このことはまた、日本が他国から攻撃・侵略されにくい状況をもたらしていると考えます (科学技術の水準が高ければ、防衛兵器を製造する能力も高くなります) 。

 したがって、日本経済全体の規模からすれば輸出産業の規模は相対的に小さいが、製造業のもつ性質上、日本は製造業を重視せざるを得ない、と考えます。



 著者は、「通貨高で破綻した国など、これまでに一つもありません」と述べ、日本経済は問題ない、と主張されていますが、

 通貨高は国内産業の空洞化をもたらし、雇用を失わせるので、大問題である、と考えるべきではないかと思います。だからこそ、いま、アメリカもヨーロッパもアジア諸国も中国も、「通貨安を望んでいる」のではないでしょうか。通貨高が「よいこと」であるなら、これらの国々は通貨高を望み、通貨安を望むはずがないと思います。

 著者の主張するように、たしかに通貨高は相対的に国の価値を高めます。また、国の価値が高まっているからこそ、通貨高になるともいえるでしょう。しかし、だからといって「通貨高は問題ないとは言えない」と思います。



 次に、日本経済は破綻する兆候を一切見せていない、現に日本の失業率は世界最低レベル (=状況がよい) である、という点についてですが、

 日本の企業、とくに製造業が海外に流出するならば、日本経済が破綻する兆候を「一切」見せていないと考えてよいのか、疑問が残ります。工場が海外に移転すれば、関連会社・下請け・孫請け等は破綻し、倒産する可能性が高くなりますし、その分、雇用が失われ、失業率が高くなる (=悪化する) ことになります。

 たしかに、世間で言われているほど日本経済の状況は「悪くない」とはいえるのでしょうが、だからといって、「日本経済は破綻する兆候を一切見せていない」などと言えば、言いすぎでしょう。日本経済は、危機に瀕している、あるいは、危機へと向かっている、と考えるのが、適切ではないかと思います。



 したがって、円高は問題ない、とはいえず、円高には利点もあるが問題点もある、そして問題点は無視しえない、と考えるべきではないかと思います。
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2 コメント

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捉え方 (幸福男ブーミン)
2011-02-08 19:32:09
三橋氏は何も円高が問題でない、とも輸出産業は重要でない、とも製造業は大事ではない、とも言ってるわけとはないと思いますよ。
約8割を占める内需に目を向けることが最重要課題でしょ、ということです。
日本経済が破綻しない、という点について疑問を感じているようですが、破綻しない、といってるのは国家(イコール政府)の財政の話で日本経済全体の話をしているわけではないのです。
そこら辺、混同されているようなのでコメントさせていただきました
Unknown (memo26)
2011-02-16 12:22:41
 コメントありがとうございます。解釈のしかた、捉えかたは難しいですね。コメントしていただけると、より客観的になります。ありがとうございます。

 三橋氏の見解についてですが、

 三橋氏は通貨高はよいことだ、と言っているわけですよね。とすれば、三橋氏は円高は問題ではない、と言っていると考えてよいと思います。

 国家財政と日本経済全体の話の区別についてですが、私は「読み進めつつ」記事を書いているので、ときどき混同をすることがあります。

 なお、最終的に(本全体の内容によれば)、三橋氏は「国家財政は破綻しない。したがって公共事業をして景気をよくしろ、そうすれば日本経済は破綻しない」と言っているようです。

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