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貯蓄優遇政策と投資優遇政策

2011-08-08 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.328 )

 アメリカの家計は、日本やドイツといった数多くの他の先進諸国の家計に比べて、所得のなかから貯蓄にまわす金額が少ない。このような国際的な差が生じる理由は明らかではないが、アメリカの政治家の多くは、アメリカの貯蓄率の低さを重要な問題だと考えている。第1章で学んだ経済学の十大原理の一つは、「一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している」というものであった。しかも、前章で論じたように、貯蓄は一国の長期の生産性の重要な決定要因である。アメリカが貯蓄率を他の先進国並みの水準に引き上げることができれば、アメリカのGDPの成長率は上昇するはずであり、時間の経過とともにアメリカ国民はより高い生活水準を享受できるはずである。
 経済学の十大原理には、「人々はさまざまなインセンティブに反応する」というものもある。多くの経済学者は、この原理を用いて、アメリカにおける貯蓄率の低さが、貯蓄意欲を減退させる税法に少なくとも部分的には帰着できることを示唆してきた。

(中略)

 この問題に対して、多くの経済学者や立法者は、税法を改革して貯蓄を奨励するように提案してきた。たとえば、1995年にテキサス出身のビル・アーチャー下院議員は、政治力のある下院歳入委員会の委員長になり、現行の所得税を消費税に変えることを提案した。消費税にすれば、貯蓄される所得はあとで消費されるまで税金がかからない。本質的には、消費税は、多くの州政府の収入源となっている売上税に似た税である。もう少し穏やかな提案は、個人勘定の基準を緩和し、たとえば個人退職口座(IRA:Individual Retirement Accounts)のように、人々の貯蓄を税から守る隠れ家となる特別な個人勘定を設けられるようにすることである。ここでは、そのような貯蓄促進効果が貸付資金市場に与える影響について考察してみよう。それは図11-2のようになる。
 第1に、この政策は需要曲線と供給曲線のどちらの曲線に影響を与えるだろうか。税制の変更は、それぞれの所与の利子率の下で、家計の貯蓄意欲を変化させるので、それぞれの利子率における貸付資金の供給量に影響を与える。したがって、貸付資金の供給曲線はシフトする。税制の変更は、借り手がそれぞれの所与の利子率の下で借りたい金額に直接の影響は与えないので、貸付資金に対する需要量は変化しない。
 第2に、供給曲線はどちらの方向にシフトするだろうか。貯蓄に対する課税は現在の税法よりも軽くなるので、家計は所得のなかから消費にまわす分を減らすこ輸によって、貯蓄を増加させるはずである。家計は、この追加的な貯蓄を使って銀行預金や債券の購入を増やす。その結果、貸付資金供給は増え、供給曲線は、図11-2に示されるように、S1からS2へと右方にシフトする。
 最後に、元の均衡点と新しい均衡点とを比較しよう。この図では、貸付資金供給の増大によって、利子率は5%から4%に低下する。利子率の低下によって、貸付資金需要量は1兆2000億ドルから1兆6000億ドルに増加する。すなわち、供給曲線のシフトによって、市場均衡は需要曲線上を動く。借入費用が低下するので、家計や企業は、より多くの投資をするためにお金を借りようとする。したがって、税制の改革によって貯蓄が増加すると、その結果、利子率は低下し、投資は増加する。


 貯蓄が増えれば投資が増える、と書かれています。



 引用文中の図11-2を示します。



★図11-2 貸付資金供給の増加

 利子率(%)
   *        供給(S1)
   * xx     xx   
   *  xx   xx   S2
   *   xx xx   xx   
  5 *・・・・・・・・xx   xx    
   *   xx:xx xx     
  4 *・・・・xx・・:・・xx      
   * xx  :xx:xx     
   *    xx : xx    
   *   xx: :  xx   
   *  xx : :   xx  
   * xx  : :    xx 
   *    : :    需要
   ****************************
  0    1200 1600   貸付資金(10億ドル)



 「貯蓄が増えると投資が増える」ことがなぜ重要かというと、この主張は、

   貯蓄が増える
     → 投資が増える。
     → GDPの成長率が上昇する。
     → 国民の生活水準が上昇する。

という大きな論理構造の要素にあたるからです。つまり、生活水準を上昇させるためには貯蓄を増やすことが有効である、ということです。



 それでは、ストレートに直接、投資を増やす政策をとればどうなるでしょうか。以下に引用します。



同 ( p.331 )

 議会で、投資促進を目的とした税制改革が決まったとしよう。要するに、このことは、議会がたびたび行ってきた投資税額控除の立法化に相当する。投資税額控除とは、新しい工場を建設したり、新しく設備を購入したりする企業に対して税制上の優遇措置を与えるものである。図11-3を用いて、この税制改革が貸付資金市場に与える影響について考察してみよう。

(中略)

 したがって、税制改革によって投資が増加すると、その結果、利子率は上昇し、貯蓄は増加する。




 面倒なので(引用を大幅に)省略していますが、次の図を見れば、内容はわかると思います。著者が述べているように、利子率は上昇し、貯蓄は増加します。



★図11-3 貸付資金需要の増加

 利子率(%)
   *    xx      供給
   * xx   xx     xx 
   *  xx   xx   xx  
   *   xx   xx xx   
  6 *・・・・・・・・xx・・・・・・xx    
   *     xx xx:xx   
  5 *・・・・・・・・・・・・xx : xx  
   *     xx:xx:  xx 
   *    xx : xx   D2
   *   xx  : :xx   
   *  xx   : : xx  
   * xx    : :  xx 
   *      : :  需要(D1)
   ****************************
  0      1200 1400 貸付資金(10億ドル)



 ここで、上記をまとめると、

   貯蓄を増やす政策をとれば
     利子率は低下し投資が増え、

   投資を増やす政策をとれば
     利子率は上昇し貯蓄が増える

ということになります。どちらであっても貯蓄と投資、両方が増えるのはよいのですが、利子率が上昇するか低下するかが異なっています。



 この差はどう解釈すればよいのでしょうか。貯蓄を増やす政策とはすなわち、貯蓄に対する課税を減らす政策であり、投資を増やす政策とはすなわち、投資に対する課税を減らす政策です。とすれば、

   貯蓄に対する課税を減らせば、
     それに伴って利子率は低下し、

   投資に対する課税を減らせば、
     それに伴って利子率は上昇する

ので、どちらも「優遇された効果を打ち消すような作用が自動的に現れる」ということになります。

 したがって、貯蓄優遇政策も投資優遇政策も「実質的には同じ」といってよいのではないかと思います。



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