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米中の「戦略的握手」はあり得ない

2011-12-24 | 日記
リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 『日米同盟 vs. 中国・北朝鮮』 ( p.70 )

春原 二十世紀の冷戦時代には対ソ連ということで「チャイナ・カード」という概念もありました。つまり、「敵の敵は味方」ということで、ソ連をけん制するために中国との戦略的接近を米国は試みたわけです。ニクソン・キッシンジャーによる秘密対中外交を支えた考え方ですね。その冷戦も終わった二十一世紀の今日、全く別次元の発想で、「ネオ・チャイナ・カード」のような考え方は米国でこの先も生まれてはこないでしょうか?

アーミテージ 米国も中国もどの国も人口統計と切り離して考えることはできません。今、世界では様々なことが同時に起きていて、我々には弄ぶ「カード」などないのです。ロシアはもはや、ソ連ではなく、日本ほどではありませんが米国よりも古い国です。一方、米国はヒスパニック系の移民によって若返っています。中国も老化が激しく、BRICsと呼ばれる国々、ブラジルやインド、そしてトルコが新たな大国として台頭しています。新しいプレーヤーが生まれ、これまでとは違ったパワー・センターが生まれつつあります。EUももちろん、そこにはいります。彼らの経済規模は十六兆ドルにもなるのです。米国、中国、EU、そしてもちろん、日本。さらにブラジル、トルコ、インドなどがこれに加わってくるでしょう。

ナイ 「チャイナ・カード」という考え方はソ連に対してのみ、通用する論法です。ベトナム戦争後、ニクソンとキッシンジャーはソ連とどう向き合うべきかと考えました。その上で、対中関係を改善することが対ソ連で事実上の同盟関係を作りだすと考えたのです。
 ですから、今日、「チャイナ・カード」云々を論じる意味はありません。一体、誰に対して、そのカードを切るのですか。日本は我々の同盟相手です。ロシアももはや脅威ではなく、カードとして使う必要はありません。その論法は四十年前に通用したものなのです。

春原 それは頭ではわかっていても日本には一九七〇年代のニクソン政権による頭越しの米中和解がトラウマとなっていて、いつかまた、米中間で「戦略的握手」があるのではないかと警戒する空気も強いのです。

ナイ 米中による戦略的握手はあり得ないと思います。第一に、米国は日本を脅威とみなしていません。むしろ、中国を脅威と見ているのです。勢力均衡の観点から言って、中国にスイッチする意味は不明です。加えて、日本は民主国家であり、とても多くの接点もあります。中国は民主国家ではなく、近い将来、そうなる可能性もありません。

アーミテージ ちょっと待って下さい。起こりもしないことにコメントする気はありません(笑)。確かに「なんとかショック」の衝撃は理解します。しかし、もう四十年も前のことですよ。そして(米中接近の原因となった)冷戦が終結してから二十二年も過ぎている。もちろん、(米中間の戦略的接近にも)可能性は少しはあるかもしれません。しかし、そんなことが起こるはるか以前に、我々の関係(日米同盟)はダメになっていることでしょう。

春原 そういう国際情勢の中で、日本と米国、中国という三ヵ国が織りなす「三角形」はどのように進化していくでしょうか?

アーミテージ 日米中の三角関係というものは存在しますが、それは決して正三角形などではあり得ません。米国と日本からもっとも遠く、長い辺の先に中国があるのです。まあ、イメージとしては二等辺三角形でしょうか……。

春原 中国の戦略は米中間の一辺をより短く強固にし、日米間の一辺をより遠く、ぜい弱なものにすることでしょうね。

アーミテージ それは米中間で同盟関係を構築する、という意味ですか?

春原 いや、というよりもある種の「戦略的パートナーシップ」のようなものが米国内の専門家の間でも語られているのではないですか?

アーミテージ 「戦略的(Strategic)」ですか。それこそ、私が(米中関係において)もっとも使いたくない言葉です。

春原 そして、中国が米国との関係で使いたがる言葉ですね。

アーミテージ だから、私は(ブッシュ政権時代)米中対話を「ハイレベル対話」と名付けたのです。「戦略的」という言葉は我々の同盟国のためだけにあるのです。

春原 クリントン政権時代、ナイ教授は日米中による戦略対話の実現に奔走していましたが、結局、うまくは行きませんでしたね。

ナイ 我々が考えていたのは、日米中の三角関係が東アジアの安定度合いを大きく左右するということです。日米中のそれぞれの二国間関係が良好になることを望んでいました。それは結果的に地域の安定を増し、信頼を醸成し、より大きな経済成長をもたらすと思ったからです。
 ただ、この三角形は正三角形ではありえません。なぜなら、我々は日本と同盟関係にあるからです。一方で日米両国が中国と良好な二国間関係を築くことは良いことです。日中関係、あるいは米中関係が悪化することは好ましくありません。

(中略)

春原 日米中の三角関係については以前、ナイ教授が日米同盟を夫婦関係にたとえたことに倣って、男女間の三角関係に似ていると話したことがありましたね。

ナイ ええ、日本から見て、中国が「魅力的な女性」という、あれですね(笑)。

春原 日本からすれば、同盟関係にあるわけですから、我々が「正妻」の座にある。中国は米国を誘惑する魅惑的な女性です。一方、中国にしてみれば、「第二次世界大戦で共に大日本帝国と戦ったのは我々だ」となり、戦後、急速な経済成長で存在感を増した日本が「亭主を誘惑する若い女性」となります。男女同権時代に即して誤解を排せば、このたとえで男女を逆にしても同じです。いずれにせよ、ここでのポイントは米国との関係を巡る日本と中国の争いはともすると感情的、情緒的になりやすい部分があるということです。ちょうど、人間同士の三角関係のように。だから、その狭間に立つ米国には細心の注意を求めたいのです。

ナイ それはそうですね。実際、私が「ナイ・イニシアティブ」と呼ばれた、日米安保条約の再確認(Reaffirming)を協議していた時、ある日本の政府関係者が公式協議の後、深夜遅くになって「中国が(経済的に)今後も成長すれば、あなた方は日本から中国に乗り換えるのですか」と聞いてきました。私の返答はもちろん、「ノー」でした。そんなことが可能だとは思えません。理由はすでに述べた通りです。我々は今後も日本を脅威と見なすことはないでしょう。民主主義という絆でも結ばれていますしね。でも、中国はそうではない。

春原 先ほど触れた日米中の戦略対話ですが、まだ中国はそうした考えを受け入れる態勢にはなっていないと思いますか?

ナイ ええ、そうですね。将来、それが動き出すのを期待していますが。たとえば、環境保護の技術開発などから話し合いを始めれば良いのです。


 米国が日米同盟を破棄して、中国に乗り換えることはない。米中の「戦略的握手」はあり得ない。なぜなら米国は日本を脅威とは看做しておらず、中国を脅威と看做しているからである、と書かれています。



 今回の引用部分が示しているのは、田中宇さんなど、一部の人々のあいだで語られている可能性、すなわち、
米国は中国と対立するのを避けるために (中国から米国が攻撃されるのを防ぐために) 米国は中国と戦略的握手をする
という可能性が「まったくない」ことを示しています。

 米国が日本から中国に乗り換える可能性がない、というのは、本当だと思います。

 中国の軍事力が米国を凌駕しているか、少なくとも中国が米国と対等の軍事力を有しているのであれば、そのような可能性も考えられますが、「米中G2体制はあり得ない」などで(私が)書いているように、いま、そのような状況ではありません。米国の軍事力は、中国を圧倒しているのですから、米国にしてみれば「なにゆえに中国を恐れなければならないのか」ということになります。



 このような現状を前提とすれば、一時期、中国が米国に対し、「太平洋の東半分は米国が、西半分は中国が覇権を握る」話を持ち掛けたといわれていますが、米国にしてみれば、そんなものは「まともに考慮するに値しない」ということになります。米国からすれば、笑い話のようなものでしょう。

 もっとも、そこには中国の「(中国の力に対する)過信・自信」が現れてはいます。だからこそ、(おそらく)米国は中国に対し「米国国内の軍事施設の視察」を許しているのでしょう。つまり、「思い上がるな」「調子に乗るな」と中国に伝えようとしているということです。



 私の理解が「正しい」とすれば、

 春原さんが「米国は本当に、日本から中国に乗り換えないのか」と執拗に確認しているのは、なさけないという感じがしなくもありません。もちろん、その気持ちはわかります。そしてまた、米国の意図を確認することは重要だとは思います。

 しかし、現実問題として、
米国の立場に立ってみれば、そんなことは「あり得ない」
と考えられる以上、あまりに執拗な確認は不要だと思います。そもそも、米国が中国に乗り換えてもよいと思っているなら、確認したところで、「はい。われわれ米国は、日米同盟を破棄し、中国と同盟を結ぶことも考慮しています」などと答えるはずがありません。



 もっとも、上記「執拗な確認」の背景には、中国の核保有などがあると思われます。「核さえ持っていれば(米国と)対等になれる」というのは大きな勘違いだとは思いますが、それについては、今後、さらに考えます。



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