言語空間+備忘録

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英語における "moral hazard" の語義

2010-04-15 | 日記
 「たまたま」数学系の本を読んでいたところ、次のような記述がありました。



レナード・ムロディナウ著・田中三彦訳 『たまたま』 ( p.155 )

章末訳注

 英語は moral certainty。専門語としての固定された和訳はないように思われる。意味は「直観的に得られる、まず間違いない確信」だが、ここでは研究社『新英和中辞典』の訳にしたがって本文のように「強い確信」と訳した。なお、ここでの moral は、「ありそうな、公算の大きい」 ( 小学館『ランダムハウス英和大辞典』による ) という意味。


 この注釈は、翻訳者が "moral certainty" をどう訳すか迷ったすえに、「強い確信」 と訳したことを示しています。



 「たまたま」手元に研究社の辞書があるので、引いたところ、次のように記載されていました。



研究社 『新英和中辞典』 ( moral の項 )

1 a A (比較なし) (善悪の基準になる) 道徳(上)の、倫理的な

(中略)

5 A 心の中で確信できる、間違いないと思える、事実上の:
   a ~ certainty 万々間違いないと思われること、強い確信


 一般的には、善悪の判断を含んだ「道徳(上)の、倫理的な」の意であるが、善悪の判断を含まない「心の中で確信できる、間違いないと思える、事実上の」という語義もある、と書かれています。



 この記述からすれば、「経済学における「モラルハザード」の定義」 を、一般の人々が 「道徳上の、倫理的な危険」 の意味で捉えてしまうのも、やむを得ないと思われます。



 なお、

英辞郎 on the WEB」 の 「moral hazard」 の項

moral hazard
モラル・ハザード◆火災保険に加入することによって、保険金目当てに自宅に放火するという悪いことをしたり、「火事になっても保険金が出るから大丈夫」という安心感から火の用心を怠ったりするなど、危険を回避するための手段や制度ができることによって、人々の注意力が低下したり、自己への規律が失われたりして、危険の発生率が高まること。
create a moral hazard
倫理欠如{りんり けつじょ}[モラルハザード]を起こす、モラルハザードを生む
eliminate moral hazard
モラル・ハザード[倫理{りんり}の欠如{けつじょ}]を根絶{こんぜつ}する
generate moral hazard within the entire system
システム全体{ぜんたい}にモラル・ハザードを生み出す
mitigate moral hazard
モラル・ハザード[倫理{りんり}の崩壊{ほうかい}]を抑制{よくせい}する
reduce moral hazard
モラルハザード[倫理{りんり}の欠如{けつじょ}]を緩和{かんわ}する[減少{げんしょう}させる]
succumb to moral hazard
モラルハザードに陥る
discourage moral hazards of
~のモラル・ハザードを阻む


 これを見るかぎりでは、"moral hazard" の語義は「危険の発生率が高まること。」とあるので、経済学的な意味が記されているとも考えられるのですが、その下の用例を見ると、( 英語圏においても通常は ) 経済学的な意味では用いられない、と推測されます。

 とすると、ネイティブですら、"moral hazard" を経済学的な意味で理解することは、「まれ」 らしい、と考えられます。



 日本人の多くが 「モラル・ハザード」 を 「道徳上の、倫理的な危険」 の意味で捉えているのは、当然である ( 日本人の英語力の問題ではない ) 、と考えてよいと思います。
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