言語空間+備忘録

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ケインズ以前の経済理論、および政治状況

2009-06-29 | 日記
伊東光晴 『ケインズ』 ( p.86 )

 このような経済像から、伝統的な経済理論は次のようなことを結論する。
 (イ) 競争さえ確保されていれば、現在の技術・資源・人々の趣好などにマッチするように価格がきまる。需給の不一致が生じたり、技術や資源に経済が適応しないのは、競争状態を阻害する独占が市場に存在するからである。したがって、伝統的理論は経済政策として、国家のなすべきことは、独占の排除、自由競争の確保だと主張する。
 (ロ) 競争さえ確保されているならば、人々は価格を目安に、自分がもっとも得なように行動すればよい。その結果は、経済は均衡状態になる。

(中略)

 (ハ) こうした価格の自由な動きによってもたらされた経済の均衡――それによる調和を外部から破壊してはならない。政府が経済に干渉することは、この自由競争と自由主義、個人主義原則による調和を攪乱することであるから、政府のなすべきことを最小限に止どめる安価な政府であるべきであり、同時に政府の財政は、この調和に無関係なように、収入と支出とが等しい均衡状態であるべきだ。

(中略)

この見方は、価格をもって経済を動かす戦略的な要因と見なすところから、外部製品との競争に対しては、これに関税をかけて外国品の価格を高めさえすれば、国内の産業は保護できるという考えを生みだした。国内に対しては自由競争を主張し、対外的には関税による保護政策をとるという一見矛盾する考えが、経済についての同じ理論と同じ見方から発生するのである。

[ケインズの苦闘]

 このような伝統的な理論は、一九二〇年代から三〇年代にかけて動揺をきたしてはいた。安価な政府は労働党の出現による社会立法によって後退しつつあった。しかしこのような考え方がいかに政治経済を支配していたかは、労働党が均衡財政を守るために自分の主張である失業保険制度を縮小させてしまったことでもわかる。保守党を中心とする考えが価格の動きを利用して関税による国内産業の保護をはかろうとしたことでもわかる。


註: 下線部は、原文では圏点になっています。また、引用文中の括弧に囲まれた部分、すなわち [ケインズの苦闘] は、本のなかの見出しを示しています。

 自由競争を主張する伝統的な理論が、対外的には関税による保護政策を主張していた旨、記されています。また、当時のイギリス議会が、伝統的な理論に沿った主張をしていたことも、記されています。



 伝統的な ( ケインズ前の ) 理論に沿った主張を、当時のイギリス議会が行っていたことは、重要だと思います。労働党が ( その支持基盤である ) 労働者に不利な主張をしたり、保守党が ( その支持基盤である ) 資本家に不利な主張をしたりしていたことになるからです。

 このことは、引用文中に示されているように、いかに、伝統的な理論が強い影響力をもっていたかを示しています。

 また、イギリスの政党 ( 政治家 ) の 「筋を通す」 姿勢をも示しています。( 現代の知識からみて正しいかどうかはともかく ) すくなくとも、当時は 「正しい」 とされていた理論に従い、( 一時的に ) みずからの支持者に不利になろうとも、「正しい」 政策をとろうとしていたことがわかります。



 ところで、自由競争を志向する ( ケインズ前の ) 理論が、外国との競争については、関税による保護を主張していたところが、ひっかかります。この本の著者は、「一見矛盾する考えが、経済についての同じ理論と同じ見方から発生するのである」 と書かれているので、「一見矛盾するけれども、じつは矛盾しない」 と読むべきであろうとは思いますが、( 私としては ) 疑問が残ります。



なお、( 当時のイギリスにおける ) 政党の支持基盤は、次のとおりです。付記します。

同 ( p.32 )

金利生活者の利益を推進し、現に金本位制度への復帰を唱えている保守党、企業家階級の利益を守り、イギリス中産階級の知性を代表する自由党、そして一九一八年の国民代表法によって男子についての普通選挙権が確立していらい、労働者の利益の代表として政治の前面におどり出た労働党であった。

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