言語空間+備忘録

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中国は 「借りた金を返さなくてもよい」 文化

2009-12-15 | 日記
田代秀敏 『中国に人民元はない』 ( p.77 )

 親しい中国人から 「お金を貸して欲しい」 と頼まれることがある。まとまった金が必要であることは正直に話してくれるのだが、返済計画は話してくれない。借用書を用意していることはめったにない。稀に用意していても、「返せるようになったら返します」 という旨が書いてあるだけで、自分の住所も生年月日も書かれていないし、捺印もなく、単なる手紙みたいなものである。
 しかし、彼等は私を騙そうとしているのではない。そもそも、中国では決済が規範化されていないのである。こう言うと難しい話のようだが、要するに、中国では、借りた金を返すということが、してもしなくても好いことだということである。
 これは個人と個人との間のことだけではない。金融機関が相手でも事情は同じである。
「中国で、銀行から資金を借りる際に、返済のことを考えている企業は一社もない」
 これは、反中的言辞で人気を取ろうとする日本人の評論家の発言ではない。中国のエコノミストの重鎮で、党や政府から助言を求められる人物が、オフレコの場で語ったことである。
 これでは銀行の経営はもたない。実際、中国の銀行は不良債権のかたまりである。その不良債権を上海雑技団もびっくりのトリックで帳簿から消してしまい、株式市場に上場させた。どうして中国では決済が規範化されていないのだろうか。
 中国では人間と人間との関係が徹底的に具体的である。血縁や愛情や友情に基づく関係は大切にする。しかし、抽象的な規則や法律に基づく関係は、大切にしない。
 企業が銀行から融資を引き出す際にも、抽象的な財務データより、具体的な人間関係がものをいう。たとえば、銀行の支店長の妻の父親を、自分の会社の顧問にするのが、融資を引き出すのに一番効き目があると言われる。
 中国の家庭の中では夫は妻の尻にしかれている。北京でも上海でも男性の会社従業員は午後五時になると脱兎のごとく退社して、六時には自宅に帰り、夕食の準備をする。そのうえ、中国人は父系の血縁集団である 「宗族 ( そうぞく )」 を何よりも大切にする。
 銀行の支店長にとって、自分の妻の父親が顧問を務めている企業に対して融資をことわるには、相当の勇気と覚悟とが必要であるということは、中国人の家庭生活を知っている者には、容易に想像がつくだろう。
 そうやって引き出した融資の返済期限が来たからといって、企業はおとなしく返済することはないのが道理。会社の 「事情」 を、顧問からその娘を経て支店長に伝えれば、返済は延期される。
 決済を免れる手は他にもいくらでもある。中国の企業では、財務責任者の評価は、払うべき金をどれだけ払わずに済ませるか、つまり、どれだけ踏み倒せるかによって、決まる。だから、中国では法人間でも決済は、その場で直に現金で済ますのが原則である。
 最初の話に戻って、中国人の知り合いから金を貨して欲しいと言われたら、どうすればよいだろう?
 中国人は面子を大切にする。日本人から金を借りようとするのは、よほど信頼してのことである。その中国人との人間関係が自分にとって大切なものであれば、それを保つためには借用書なしに金を貨してやるのが賢明である。そして、返してくれることは期待しない。請求することも控えたほうがよい。
 そうすれば、自分が本当に困った時に、相手が助けてくれるかもしれない。しかし、助けてくれるかどうかは、その時に自分と相手との関係が、いまよりも良好であることが前提である。金を貨してやったことを感謝しろと要求すれば、人間関係は壊れ、当然、金は返ってこない。
 したがって、中国が日本からの円借款をきちんと返済しているのは大変なことである。もちろん、国家間のローンを返さなければデフォルト扱いされてしまいかねないので返済しているのだろう。しかし、決済が規範化されていない中国にとって、自分達がきちんと返済していることを日本が大いに感謝しないことに、不満であることは想像に難くない。
 アメリカは、中国に対して経済援助を、ほとんど供与していない。それは、中国にドル借款を供与しても感謝されないし、きちんと返済されることを感謝しなければならないことを見抜いた上での、深慮遠謀だったのではないだろうか。


 「中国では、借りた金を返すということが、してもしなくても好いこと」 である。したがって、「金を貨してやったことを感謝しろと要求すれば、人間関係は壊れ、当然、金は返ってこない」 。それどころか、貨した側が、「きちんと返済されることを感謝しなければならない」 のである、と書かれています。



 これを読むと、借りた金を返さないなど、「とんでもない」 と考える人が圧倒的だと思います。しかし、視点を変えれば、

   未来志向の人間関係であり、助けあいの精神がある、

と考えられます。どうですか? すこし表現を変えただけですが、急に、「よい」 ことだと思われたのではないですか?

 現在、中国では法制度の整備が進んでいるようですが、「借りた金を返さない」 文化・習慣は、( よい面もある以上 ) しぶとく生き残ると思います。したがって、日本としては、よい面にも着目しつつ、対処しなければならないと思います。



 中国が日本の円借款をきちんと返済しているなら、日本は 「感謝しなければならない」 とまでは書きませんが、「きちんと返済するのが当然」 という態度をとるのも、どうなのか、と考える余地があります。

   視点を変えれば、常識が非常識になり、非常識が常識になる

ので、日本の対中政策を考える際には、この点に注意しなければならないと思います。



 なお ( 以下、本稿の趣旨とは無関係です ) 、

 中国では法規範に基づく関係よりも、具体的な人間関係が大切であるなら、中国人と ( あるいは中国で ) ビジネスを行う際には、法規範よりも人間関係を重視しろ、となります。しかし、法的サービスが必要なことも、たしかだと思います。関連ニュースを次に ( 一部 ) 引用します。

西村あさひ法律事務所」 の 「西村あさひ法律事務所と弁護士法人曾我・瓜生・糸賀法律事務所が中国業務に関して業務提携合意

また、当事務所は、本年6月に北京市司法局に対して北京駐在オフィスの設立申請を行っており、来年5月までには同オフィス(日本人弁護士2名、中国人律師資格保有者数名の駐在を予定)を開設できる見込みです。これに併せて、現在、中国のトップクラスの法律事務所との間で人材交流などのプログラムを積極的に実施しており、今後もこの分野での業務対応能力の向上を図って行きます。

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