言語空間+備忘録

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課税のタイミング

2010-01-17 | 日記
井堀利宏 『日本の財政改革』 ( p.175 )

 労働所得税の減税や消費税率の引き上げのような税制改革の各世代別の税負担に与える影響は、移行期につきるものではない。将来世代にとっても、課税のタイミングを生涯の後にもっていくか、あるいは前にもってくるのかは、完全に無差別とはいえない。なぜなら、税負担のタイミングの相違によって、貯蓄が変化するからである。老年期から青年期へ課税のタイミングが変化すると、貯蓄は減少する。将来の税負担が軽減されると、それに備えての貯蓄をする必要性も小さくなる。この効果は、理論的には賦課方式の年金の拡充によって、貯蓄が抑制される効果と同じである。
 逆に言うと、税支払いのタイミングを将来の方向にずらす税制改革は、貯蓄を増加させる。労働所得税から消費税への代替は、課税のタイミングを将来にのばす税制改革であり、マクロの貯蓄を増加させる効果を持っている。これは、将来世代にとっては利用可能な資本ストックの増加をもたらし、将来世代の労働所得を増加させて、その経済厚生を上昇させる。そのような税制改革は、移行期の世代にとってはマイナスであっても、将来世代にとってはプラスに働く。ただし、この効果は、資本蓄積の拡大が長期的に望ましい状態 ( 経済成長経路が動学的に効率的な状態 ) にあることを前提としている。また、将来世代の経済厚生の増加が移行世代の経済厚生の減少よりも量的に大きく、経済全体として利益が大きいことがいえれば、こうした税制改革は望ましいと評価できる。いずれの前提も、現実の経済を抽出したシミュレーション分析では、多くの場合においてもっともらしく妥当している。


 課税のタイミングによって、貯蓄が変化する。課税が生涯の後になればなるほど、貯蓄が増加する、と書かれています。



 ( 生涯における ) 課税の時期によって、貯蓄が変化する。それはその通りだと思います。私は、「公債の中立命題」 には疑問をもっているものの、まったく成り立たないとまでは考えていません ( 「「公債の中立命題」 の成立条件」 参照 ) 。



 とすると、課税のタイミングを操作することによって、貯蓄を操作することが可能になります。そこで、貯蓄を増やすべきなのか、減らすべきなのかを考えます。

 現在、日本ではめぼしい投資先がほとんどない状態が続いており、「貯蓄が過剰になっている」 と考えてよいと思います。他方、国債発行残高は増加を続けており、現在、かなりの規模にまで膨らんできています。とすれば、課税のタイミングを後にずらす ( 課税の先送り ) のではなく、課税のタイミングを前にもってくるほうが、よいのではないかと考えられます。



 著者は、「資本蓄積の拡大が長期的に望ましい状態 ( 経済成長経路が動学的に効率的な状態 ) にある」 場合には、課税の先送りが望ましいと評価し、「現実の経済を抽出したシミュレーション分析では、多くの場合においてもっともらしく妥当している」 と述べていますが、

 すくなくとも現在の日本経済については、「もっともらしく妥当している」 とは 「いえない」 と思います。すなわち、いまの日本経済は、「動学的効率性の条件」 を満たしていないと評価すべきだと思われますので、「貯蓄を増加させる政策 ( =資本蓄積を増加させる政策 )」 ではなく、その逆、「貯蓄を減少させる政策 ( =国家債務を減少させる政策 )」 をとることが、適切ではないかと思います。



 なお、著者が述べているように、課税のタイミングを前にもってくるなら、消費税ではなく、労働所得税を重視すべきである、と考えることになると思います。所得が二極分化しつつある現状に鑑みれば、ある程度の累進性が肯定されている所得税を重視することにも、合理性が認められるのではないかと思います。
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