言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

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米中の政策スタンス

2009-11-19 | 日記
リチャード・クー&村山昇作 『世界同時バランスシート不況』 ( p.134 )

 また財政赤字のファイナンスという点では、ガイトナー米財務長官が〇九年の五月末に中国を訪れているが、このとき中国は、同長官に対して米国における財政出動の必要性を認めているという話をしている。これは、中国が以前から日本のバランスシート不況の実態を研究し、この種の不況では財政出動が不可欠であることを理解していたことを考えれば、当然の発言と言えよう。
 実際に中国は、何年も前から図 16 に示されたポイント、つまり日本が巨大なバブルの崩壊に直面しながらGDPを落とさなかったことに注目していた。当時の中国には株と不動産のバブルがあり、これらが崩壊したときに中国経済はどうなるのかという点について彼らはたいへん神経質になっていたからだ。つまりいまの共産党政権は共産主義をドブに捨てた後で、唯一政権の正統性を主張できるのは人々の生活水準をずっと引き上げてきたという実績であった。ところがバブルが崩壊して人々の生活水準が落ち始めるといまの政権は瞬時にその求心力を失いかねない。これは民主主義的な選挙で選ばれたわけではない彼らが誰よりも痛感している点であり、だからこそ彼らはバブルが崩壊してもGDPを落とさなかった日本の例に注目したのである。その結果は私は何回も中国で講演することになったし、私の英文の本 『The Holy Grail of Macroeconomics: Lessons from Japan's Great Recession』 は中国語に訳されてベストセラーになった。中国は欧米より一足先にバランスシート不況という概念の重要性に気付いていたのである。
 実際に中国は、米国や日本が本格的な財政出動に動く前の〇八年十一月から、GDP比一七%に匹敵する巨大な財政出動を打ち出しており、彼らからしてみれば、オバマ政権下の米国はようやく正しい方向に動き出したと映っていよう。
 その意味では、米国における財政出動の必要性を理解している中国が、米国債を買わないとか売るという行動に出る可能性は低い。
 しかしそうだとしたら、なぜ中国はここに来て新しい基軸通貨の必要性を主張しているのだろうか。それは同国が、米国の財政政策ではなく米国の金融政策に懸念を持っているからではないかと思われる。
 つまり昨年秋から、バーナンキ氏率いるFRBは巨額の資産を民間から購入しており、同行の急拡大したバランスシートには多くのリスク資産が含まれている。しかも最近のFRBは、リスク資産だけでなく財務省証券も大量に購入しており、それは、「中央銀行による国債引き受け」 という過去に多くのハイパーインフレをもたらした政策を連想させる行為でもある。
 もしも中国が過去の日本の経験を正しく理解していれば、彼らはバランスシート不況下では金融緩和が効かないことを知っていることになる。その彼らがいまのバーナンキ議長の非伝統的と言われるがむしゃらな金融緩和を見れば、彼らは当然、大きな懸念を持つだろう。
 しかも同議長は〇八年二月の議会証言ではっきりと、ドルのトークダウンと見られる発言を繰り返しており、このことと、昨年秋以降のFRBの行動とを合わせて考えると、同議長はかなりのドル安論者、またはドル安のリスクを軽視しているのではないかと見られても仕方がないところがある。
 同議長によるドルのトークダウンは、昨年春の国際商品価格の暴騰を受けて下火になったものの、本来金融政策では対応できないバランスシート不況をバーナンキ議長が無理やり、金融政策で対応しようとしているところに、人々が危機感を抱いても不思議はない。
 この懸念は中国当局者に限ったことではなく、ドイツのメルケル首相もここに来てFRBに対して全く同じ懸念を表明している。また、中東や欧州の機関投資家で、FRBのバランスシートの急激な拡大とその内容の悪化を心配しているところは、決して少なくない。


 中国は日本のバランスシート不況を研究しており、財政政策が不可欠であることを理解している。金融緩和が効かないことも理解しているはずである。現に、中国は巨額の財政出動を打ち出しており、ガイトナー米財務長官に対しても、米国における財政出動の必要性を認めていると語っている。
 したがって、中国が米国債を買わない可能性、売る可能性ともに低い。中国が新しい基軸通貨の必要性を主張しているのは、米国の金融政策に懸念を持っているからではないか、と書かれています。



 経済成長著しい中国では、巨額の財政出動を行うことは合理的だろうと思います。税収の増加によって、その費用を賄うことは、容易だと考えられるからです。



 しかし、金融政策が効かないことも理解しているはずである、という部分については、わかりません。著者の本がベストセラーになったり、何回も講演に招かれたことが、ただちに、著者の見解に同意したことを示しているわけではないからです。貴重な見解であり、傾聴する価値がある、と考えられたのはたしかだと思いますが、だからといって、同意しているとはかぎりません。

 中国では、通貨の発行量が増大しているのではないかと思います。著者の見解に同意していれば、通貨の大量発行はあり得ないのではないかと思います。

 もっとも、中国のそれは為替政策であって、金融政策ではない、と考えるべきなのかもしれませんが、「バーナンキ議長の非伝統的と言われるがむしゃらな金融緩和」 に、近い政策であることには変わりないと思います。これについては、

   ドルに合わせて金融緩和をしたくないから、新しい基軸通貨の必要性を主張している

と読むべきなのかもしれません。



 とはいえ、バーナンキ議長のスタンスも、微妙に変わりつつあるのかもしれません。( 金融緩和は継続するが ) ドル安を望まない旨、発言したと報じられています。

 また、バーナンキ議長の発言を歓迎する旨、欧州中央銀行総裁が発言したと報じられています。

 併せ、次に引用します。



YOMIURI ONLINE」 の 「FRB議長「ドル相場監視する」 強いドル維持へ異例の言及」 ( 2009年11月18日 )

 【ワシントン=岡田章裕】米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は16日、ニューヨーク市内で講演し、ドル安傾向が続く為替相場について「ドル相場の動向をしっかりと監視し続ける」と述べ、適切な経済・金融政策を通じてドルの価値を維持する考えを表明した。FRB議長が為替相場に言及するのは異例だ。

 バーナンキ議長は、ドル相場について、金融危機が最も深刻だった時には相対的に安全資産と考えられたドルに資金が流入したが、金融市場が落ち着きを取り戻すにつれ、資金が他の資産に移っていると分析。その上で、米国経済が本来持つ強さを背景に、FRBが「強いドルと世界の金融経済の安定を確かなものに出来る」と強調した。

 景気認識については「貸し渋りと失業率の高止まりが景気回復に制約を課している」と指摘し、超低金利政策を長期間継続する考えを改めて示した。




Bloomberg.co.jp」 の 「トリシェECB総裁:バーナンキ議長のドル発言は「非常に重要」」 ( 2009/11/18 03:49 JST )

11月17日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は17日、強いドルは世界の利益にかなうと述べ、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が16日の講演でドル相場について発言したことは「非常に重要だ」との見解を述べた。

フランクフルトでの行事に出席したトリシェ総裁は、米当局者が強いドルは米国の国益にかなうと発言したことを高く評価していると語った。トリシェ総裁がドルについて発言したのはこの日2度目。

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