言語空間+備忘録

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総支出の削減に伴う為替変動

2010-01-27 | 日記
竹森俊平 『資本主義は嫌いですか』 ( p.111 )

 ドル価値が大幅に下落する可能性を、サブプライム危機前から指摘していたのもロゴフであった。すなわち二〇〇三年の、著名な国際金融学者、オブストフェルドとの共同論文である。この研究は、もし今の時点で、アメリカが経常収支赤字を一挙に解消しなければならない必要に迫られたら、為替レートはどの程度ドル安に転換しなければならないかという問いかけから出発している。この研究の結論は、二〇%から四〇%のドルの減価ということであるが、ここで興味深いのは、アメリカが経常収支赤字を一挙に解消しなければならない必要とは、具体的にどのようなものと著者たちが考えているかである。
 そのような必要が起こる状況として、著者たちは二つ挙げている。一つは、国債の金利が急騰するとかいった理由によって、連邦政府が早急に財政赤字を削減しなければならなくなり、それが経常収支赤字の縮小をもたらす可能性である。もう一つは、( ここが面白いのだが ) 住宅バブルが崩壊して、アメリカの住宅投資と家計債務が急速に縮小する過程で、経常収支赤字も縮小に向かう可能性である。このように、著者たちはこの二〇〇三年の論文で、四年後に発生するサブプライム危機を見越したような議論をしている。
 それでは、アメリカが経常収支赤字を解消しなければならない必要に迫られた時に、なぜ、為替レートについて二〇%から四〇%の大幅なドル安が起こるのか。これはいかにもロゴフらしい、巧妙な議論である。そもそもこの数字を計算するに当たって著者たちは、アメリカの経常収支赤字の解消自体は、為替レードのドル安への変化ではなくて、消費、投資、財政支出の合計である 「総支出」 の削減によってのみ可能だという立場を取っている。それにもかかわらず、ドル安はやはり必要である。なぜなら、アメリカの 「総支出」 の削減に伴って、相対価格の調整が必要になるからだ。
 要するに各国の支出に 「自国財への偏向」 があるという事実が、相対価格調整の必要性を生む。いずれの国も、海外から輸入された財よりは、自国で生産された財に、支出の大部分を振り向ける傾向がある。そうだとすれば、アメリカが大規模な 「総支出」 の削減をした場合には、輸入財よりも、アメリカ国内で生産された財に対する支出がより大きく減少する。そうなると、商品の国際市場において、アメリカ製品が売れ残る状態が発生する。どうすれば、需給の均衡を回復できるのか。答えは、アメリカ製品の相対価格の大幅な下落である。これを実現する手段が、すなわちドル安ということである。彼らの議論をより正確に伝えるならば、「アメリカが経常収支赤字を解消するために総支出の削減に出るならば、大幅なドル安は避けられない」 ということになる。


 アメリカの 「総支出」 が減れば、ドル安になる。なぜなら、各国の支出には、「自国財への偏向」 があるからである、と書かれています。



 現在、アメリカの 「総支出」 は減ってきている、と考えてよいと思います ( ここでは、「総支出」 とは、「消費、投資、財政支出の合計」 であると定義されています ) 。

 したがって、上記引用において紹介されている論文、すなわち、ロゴフとオブストフェルドとの共同論文の内容が 「正しい」 ならば、ドル安が進むはずである、と考えられます。20 ~ 40 %もドルが減価するとなれば、大幅なドル安といってよく、影響は大きいと思われます。



 そこで、その根拠が重要になるのですが、要は、どの国にも、「自国財への偏向」 がある、というのが、根拠のようです。

 「自国財への偏向」 があれば、輸入財の消費が大幅に減る、と考えるのかと思えばそうではなく、その逆、すなわち、自国財の消費が大幅に減る、となっています。もともと消費支出に占める割合の大きかった自国財は、消費の落ち込みに伴い、消費が減る度合いも大きい、ということなのでしょう。

 これには意外性があります。そこで考えるに、「自国財への偏向」 などというからわかりにくいのであって、

   ( 全体の ) 消費が減れば、もともと消費に占める割合の大きかった財ほど、消費が減る

と考えれば、それでよいのではないかと思います。消費が、すべての財につき 「同じ割合」 で減れば、もともと消費に占める割合の大きかった財ほど、( 絶対額でみた場合の ) 消費が減るからです。



 上記引用によれば、自国財が大幅に余り、余った分は輸出に回される。その結果、為替レートが下がる、と論じられているものと考えられます。

 しかし、もともと消費に占める割合が小さいとはいえ、輸入財に対する消費も 「同じ割合で」 下がるならば、為替レートには影響が出ないのではないかとも考えられます。

 実際には、「自国財への偏向」 の結果、輸入財は自国財に比べて、「より大きな割合で」 消費が冷え込むと考えられ、

   大幅なドル安ではなく、わずかにドル高になるはずである

と思います。



 以上をまとめると、私は、

 「アメリカが経常収支赤字を解消するために総支出の削減に出るならば、大幅なドル安は避けられない」 どころか、実際にはその逆になる。すなわち、

   「アメリカが経常収支赤字を解消するために総支出の削減に出るならば、わずかにドルは上昇する」 はずである、

と考えます。



 そもそも、アメリカの 「総支出」 が減れば ( 経常収支赤字が減れば ) 大幅なドル安になる、という論理は 「おかしい」 のではないでしょうか。経常収支赤字が減れば 「ドル高になりこそすれ、ドル安にはならない」 と考えるのが、自然ではないかと思います。



■追記
 輸出云々は ( 私の ) 考えすぎでした。余った米国製品を米国市場で消化するために、米国製品の国内価格は、輸入製品の国内価格に比べ、相対的に下落する。すなわちドル安になる。これが論文の趣旨だと思います。
 とすると、本当に経常収支赤字は減るのか、などが問題になりうると思います ( 経常収支赤字が減ってドル安になる、というのは、やはり変だと思います ) 。
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