言語空間+備忘録

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税率引き下げ競争とフラット税

2011-04-26 | 日記
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.238 )

 過去二五年間、とりわけここ五年間で、世界の税率は二〇世紀のどの時期よりも速いペースで引き下げられている。成長志向の減税は、世界経済で現在最も顕著に見られる傾向とすら言えよう。法人税率は下がっている、個人所得税も下がっている、富裕税は引き下げられるか廃止されている。アメリカの新左派は、税金は成長とは無関係だと議会でもテレビ番組でもさかんに主張しているが、世界は明らかにその説を信用しなくなってきた。社会主義国の指導者でさえ、グローバル化する経済と移り気な資本という現実を認識し始めている。たとえばブルガリアの社会主義政府は、このほど一〇%のフラット税を導入した。国際市場で競争力を発揮し経済成長を遂げようとする国にとって、税率を低水準に維持することは、効果的な戦略となりうる。
 税率引き下げの波が始まったのはあのレーガン減税からだ。他の国はこのお手本を見習った。先進国の平均的な個人所得税の税率は、一九八〇年には六八%だったが、九五年には五〇%を下回り、現在では四五%になっている(表9・1参照)。三〇年足らずで三分の二に下がったのである。
 法人税の引き下げ幅はもっと大きい。先進国の平均的な法人税率は、レーガン政権の発足当時と比べると、四三・五%から三〇・三%へ、およそ半分になっている(表9・2参照)。残念ながらアメリカの平均法人税率は、世界で三番目に高い。なにしろカリフォルニア州やメーン州の法人税率は、世界で一番高いのである(*4)。多国籍企業は、国外で事業を行えば、このように高い法人税を課されずに済む。私たちの一人(ムーア)は、このほど税制に関する意見交換会に参加した。そこにはインテル、デル、IBM、キャタピラーなどフォーチュン五〇〇社の多くが出席しており、各社は口々に次のような本音を漏らした。今日では多くの国で、法人税負担をほぼゼロで済ますことができる。アメリカの税率は高すぎる。これでは新工場をアメリカに建設するなど考えられない、と。このように、高い税金はアメリカの優位を危うくしている。
 世界各国が税率を引き下げる傾向はかれこれ三〇年も続いているが、最近ではそのペースが加速している。「このところ税率の引き下げがたくさんの国でひんぱんに行われているので、税率表の更新が追いつかない」と、タックス・ファウンデーションの理事長スコット・ホッジがこぼすほどだ(*5)。その最大の原因は、フラット税を導入した国や税率の低い国に出し抜かれるのはもうごめんだ、と多くの国が考えるようになったからだと想像される。
 世界には現在、フラット税を採用している国が二四ヵ国あり、すべて東欧諸国である(表9・3参照)。なんという様変わりだろう。これらの国々は半世紀にわたって鉄のカーテンの向こうに閉じこめられ、厳格な経済統制でがんじがらめにされ、生活水準は停滞し、実質的には下落した。それがいまでは資本主義の優等生で、フラット税のお手本である。二四ヵ国の平均税率は二〇%で、西欧の四〇~六〇%はとてつもなく高く感じられる。フラット税採用国は競い合うようにして低い税率を採用しており、ロシアが一三%であることは先ほど述べたとおりである。ポーランド政府が一五%と発表すると、ブルガリア政府は個人所得税をフラット化し、一〇%とした。
 数十年にわたり世界で唯一のフラット税採用国だったのは、じつは香港である。香港は一九四七年からフラット税を採用しており、税率は一五%。配当税、キャピタルゲイン税は存在せず、域外で上げた利益にも税金はかからない。香港は関税のない自由貿易港であり、資本主義の天国である。超高層ビルが建ち並び、夜中過ぎまでごった返す通りでは、ピーナツからロレックスの時計にいたるまで、ほとんどあらゆるものが活発に取引されている。税法はたった一八〇ページで、数万ページにおよぶアメリカの税法とは対照的だ。おかげで香港は、土地がなく(超高層ビルが立ち並ぶのはこのためだ)資源もないにもかかわらず、数十年にわたって繁栄を謳歌してきた。なぜ他国が香港を見習うのに半世紀近くを要したのか、まったくふしぎと言わざるを得ない。
 香港を取り上げたからには、ここで中国にも言及しておかないと片手落ちになる。スタンフォード大学フーバー研究所のアルビン・ラブシュカは、「中国の偉大な減税」政策が中国の経済改革の原動力になったと指摘する。あまり知られていないが、これはじつにみごとな政策である。小平は一九七八年に改革開放路線への転換を決断し、自由市場の導入を基本とする経済改革を推進する。農場の民営化(これによって農業生産高は二倍近くに拡大した)、経済特区の導入、外国資本への門戸開放、国営企業の民営化、減税などがその柱とされるが、「最も重要なのはサプライサイド減税政策だった」とラブシュカは話す。ラブシュカは中国で丹念にデータを集めた結果、一九七八年には政府の税収がGDP比約三一%に達していたことを突き止めた。しかし減税導入後は、約一一%まで下がっている(*6)。ここには間接税や規制などによる負担が含まれていないが、それでも二〇年間で税負担が半分以下に下がったことはまちがいない。これが、中国本土の二桁台のめざましい経済成長に寄与したことは明らかである。減税がなかったら、奇跡のような好況があれほど長く続くことはなかったにちがいない。


 いまや、世界中の国々が税率を引き下げ始めており、税率引き下げ競争の様相を呈している。東欧諸国はフラット税をも導入した。共産主義の中国でさえも税率を引き下げ、それによって2桁台のめざましい経済成長を遂げた、と書かれています。



 引用文中の「表9・1」「表9・2」を示します (引用の都合上、2つの表を連結しています) 。



表9・1 先進国の     表9・2 先進国の
  個人所得税最高税率     法人税最高税率

国名(abc順) 1980年 2007年 1980年 2007年 

オーストラリア 62  49   46.0  30.0
オーストリア  62  50   55.0  25.0
ベルギー    76  50   48.0  34
カナダ     64  44   37.8  36.1
デンマーク   66  59   40.0  25.0
フィンランド  68  51   43.0  26.0
フランス    60  48   50.0  34.40
ドイツ     65  45   56.0  39.90
アイルランド  60  42   45.0  12.5
イタリア    72  43   40.0  33.0
日本             42.0  39.5
ルクセンブルグ        40.0  30.4
メキシコ    55  28   42.0  28.0
オランダ    72  52   48.0  25.5
ニュージーランド62  39   45.0  33.0
ノルウェー   75  40   29.8  28.0
ポルトガル   84  42   47.2  26.5
スペイン    66  43   33.0  32.5
スウェーデン  87  56   40.0  28.0
スイス     38  34
イギリス    83  40   52.0  30.0
アメリカ    73  39   46.0  39.3

平均      68  45   43.5  30.3



 これらの表を見ると、たしかに世界中の国々が税率を引き下げていることがわかります。「表9・1」と「表9・2」は先進国のみを対象としていますが、引用文中の記述をも併せ考えれば、先進国にかぎらず、ほぼすべての国が税率を引き下げてきていると考えてよいと思います。

 そして、先進国のみを対象としたこれらの表と、(先進国以外をも対象としている)「表9・3」を比べてみると、あきらかに「表9・3」に掲載されたフラット税導入国の税率のほうが低いことがわかります。これらの国々は「レーガン減税」の成功に学び、「限界税率と経済成長率の逆相関関係」を利用して経済成長を遂げようとしているものとみてよいと思います。



表9・3 フラット税採用国と税率(%)

アルバニア   10  キルギスタン     10
ブルガリア   10  ラトビア       25
チェコ     15  リトアニア      27
エストニア   22  マケドニア      12
グルジア    12  モーリシャス     15
ガーンジー(英領)20  モンゴル       10
香港      16  モンテネグロ     15
アイスランド  35.7 トランス・ドニエストル
             (モルドバ共和国内)10
イラク     15  ルーマニア      16
ジャマイカ   25  ロシア        13
ジャージー(英領)20  スロバキア      19
カザフスタン  10  ウクライナ      15



 しかし日本も、これらフラット税採用国のように、10%~20%のフラット税を採用すべきかは、別の問題だと思います。これについては今後、機会があれば考えたいと思います。
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