いつだったか、会社のチームでサッカーをやっている40代の友人に、「日本のサッカーがダメなのは、誰も踊れないから」って冗談半分で言ったら、「そんな軟弱な選手はいらん」と返された。ぼくはサッカー選手だったことがないので、そのまま笑って終わらせたけど、そのときぼくはかなり本気だった。
彼は今回のブラジルW杯でのロッベンのキレキレの切り返しを見てどう思っただろうか。ロッベンは50mを6秒くらいのスピードで走って、5歩の減速で止まれる。右に高速フェイントをかけて、0.3秒で左に切り返せる。スペイン戦でピケやカシージャスを置いてきぼりにしてゴール前でフリーになれたのは、強靭な体幹と脚の筋肉が可能にする荷重移動の速さがあったからだ。右脚に100％乗った次の瞬間に左脚に100％乗せられるか。当然、右脚に体重の何倍もの重力がかかり、それを押しのけて逆脚に移動していくってものすごく難しい。脚の裏でしっかり地面を捉えていないと滑るし、素早く体をねじっていかないとならない。たぶん、ロッベンの速さで切り返せる日本人選手は誰もいない。長友が近いスピードでできるかもしれないけど、対戦したら10回に9回は抜かれるだろう。
ロッベンが踊りが得意かどうかはしらないけど、南米の選手はみんなかなり踊れる。コロンビアのチームがボゴタの空港から直行した帰国報告会のステージでは、選手たちがレゲトンにのってを延々と踊っていた。ダンサーのキレとサッカー選手のキレにはやはり共通したものを感じる。つまり荷重移動の速さであり、アイソレーションの完璧さである。ダンサーはみんなサッカーが上手いなんて言うつもりはないけど、サッカー選手のトレーニングにヒップホップのようなダンスを入れるのは悪くない様な気がする。友人は賛同してくれないかもしれないけど・・・。
