フルータリアンの備忘録

フルータリアンとは、果物を主食にしているベジタリアンのことです。

もうすぐ“フルータリアンの本”が発売されます

2024-09-13 | お知らせ・告知等
私が執筆を担当しました“フルータリアンの本”が10月初旬に発売されます。

タイトルは『フルータリアン・ダイエット――最も古くて新しい、果実食主義者の健康学』
出版社は、共栄書房さんです。


この手の本が日本語で出版されるのはとても珍しいことなので、その一助となることができて嬉しく思っています。
フルータリアンダイエットをある程度体系化した形で、入門書・導入書としてまとめてみたいと思ったのが、執筆の動機です。
ページ数は252ページと、ある程度のコンパクトさを保ちながらも、短すぎることもなく、しっかり内容の伴ったものになりました。
私自身がフルータリアンダイエットについて考察する際にも役立つような、良きリファレンスが出来たと思っています。
表紙のフルーツアートも素晴らしいデザインです。

本書を企画し始めてから、本という具体的な形になるまで結局丸2年もかかりました。
その間、執筆に集中するため、本ブログの更新も止まったままでした。
昨今の出版不況の中、出版企画が出版社に採用されるのがいかに困難であるかについて、厳しいお言葉をいただくこともありました。
気持ちが折れてしまって、本書の出版自体をあきらめて半年ほど放置してしまうこともありました。
しかし、そんなときほど、なぜか執筆のアイデアが湧いてくるもので、本書の進化が止まることはありませんでした。
その後、偶然の出会いのようなものを繰り返しながら、無事出版にいたりました。
この偶然の出会いには本当に感謝しています。

どうぞよろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。


執筆期間中、パンダのフィギュアを少しずつ集めたことが個人的な思い出です。
(本書でもパンダの話しが少しだけ出てきます)
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20 世紀日本で最も注目すべき食養家――栗山毅一

2024-08-01 | 20 世紀に学ぶ
日本の食養家というと、マクロビオティックをはじめとする玄米菜食の提唱者を思い浮かべる人が多いと思います。玄米菜食は伝統的な日本食に近い部分が多く、導入に対する心理的な抵抗も少ないことから一部では人気があります。
その一方で、70 歳前後で亡くなっている提唱者・指導者たちも多く、一般の平均寿命と変わらない印象があります。寿命があまり変わらないのなら「自分の好きなものを食べて死んだ方がまし」とか「結局はバランスの取れた食事が一番大事」といった考えに落ち着く人が多いのにも納得がいきます。

私は、20 世紀の日本で活躍した食養家の中で最も注目されるべきは、このような玄米菜食主義者ではなく、栗山式食事療法を提唱した栗山毅一氏 (1890~1984) だと思います。95 歳で亡くなるまで精力的に活躍を続け、自然食の普及に大きく貢献した食養家です。
また、栗山式自然食を実践していた有名人として、美容家のメイ牛山さんがいます。ハリウッド美容専門学校で指導に当たるなど美容業界で世界的に活躍された方で、美容に関する書籍も 30 冊以上執筆されています。90 歳を超えても第一線で活躍を続け、96 歳で逝去されました。
現代では、芸能人の訃報などを見ると、70 歳どころか 50 歳にもなれない人が増えてきているような気がします。このお二人のように、90 歳を超えてもなお現役という人はますます少なくなっているのではないでしょうか。
ここでは、お二人の活力と長寿を支えた栗山式自然食について、簡単に紹介したいと思います。『永遠の若さを保証する自然食の秘密~食品公害の中で生き抜く知恵~』(栗山毅一[著]、トクマカジュアルブックス[出版社])という本が私の手元にありますので、この 50 年前の本を元に栗山式食事療法のポイントを、次のように大きくまとめてみたいと思います。

ポイント 1: 生の果物と野菜から“生きた”水分を豊富に摂取する。加熱水分は避ける。
ポイント 2: 動物性脂肪および動物性タンパク質の摂取を控える。基本的に菜食を推奨。
ポイント 3: 塩分は控えめに。
ポイント 4: 米、カボチャ、サツマイモなどの澱粉食品は体の基礎を作る。
ポイント 5: 生青汁を推奨。
ポイント 6: 一日二食主義。

この他にも、体の症状別にさまざまな理論と実践が展開されているのですが、他の食養法と一線を画する最も特徴的な点は、ポイント 1 の「生の果物と野菜から“生きた”水分を豊富に摂取する」という点です。栗山氏は、野生動物たちが人間に比べると遙かに健康的で病気が少ないのは「食べ物を加熱せずに“生きた”水分を摂取しているから」ということに気付いていました。次のように言っています。

「しかし人間がとるべき食物は、自然食、または自然的食物といって、生ものか、これに近い食物がよく、これは健康のためにも、美容のためにもなっている。私の自然食の眼目もまさにこの点にある。動物はすべて生ものを食べて、病気にもかからず、きわめて自然に天寿を全うしているように、人間も生水を飲み、生野菜、果物を食べることにすれば、病気を知らず、美しさを誇り、天寿を全うすることができるのである。自然の産物である人間が自然の法則にしたがうとは、このことを意味している」

マクロビオティックなどの玄米菜食では、体が冷えるという理由で果物や生野菜が避けられることが多く、そのことで大きな損をしているように思います。生の食べ物で体が冷えるなら、人間以外の野生動物たちは常時体を冷やして健康に支障をきたしていることになります。しかし、実際はそうではありません。加熱調理によって酵素が死んでしまい、ビタミンやミネラルなどの栄養素が壊れてしまうことの方が問題です。
また、現代の美食は穀物や動物性食品が多すぎて体質が酸性に傾いてしまい、それが病気の温床になっているが、生の果物と野菜はそれをアルカリ性にしてくれるとも説明しています。

「主食をご飯(酸性)、副食物に肉類(動物性脂肪)を中心にして食べていると、これは酸性に片よっていることだから、アチドージスをひきおこすことになる。これを防ぐには、副食物を肉類からアルカリ性の食物に切りかえなければならない。アルカリ性の食品、たとえば野菜、果物、海藻類をとれば、無機質を十分にふくんでいるので、酸性になっている血液を中和することに役立つのである。いってみれば、血液を浄化し、働きをたすけるのである」
※ここで言う「アチドージス」とは酸毒症のこと。

体質をアルカリ性に変えてくれるという点では、ポイント 5 の「生青汁」も推奨しています。人間は草食動物たちとは違って、野菜の繊維質を分解する酵素「チターゼ」の分泌が少ないため、生野菜を大量に食べると消化不良をきたします。青汁にすることで、消化吸収が早くなり、栄養配給の効率も良くなります。当時はすり鉢で青野菜をすって青汁を作っていたようですが、現在はジューサーの性能も上がり手軽に青汁を絞れるようになりました。
青汁には 4 つの効用があります。1 つ目は、体液や血液の酸性をアルカリ性に変える点。2 つ目は、造血作用が高いこと。3 つ目は、コレステロールを分解流出する点。4 つ目は、細胞の増殖を助け活力を与える点、です。

ポイント 2 の「基本的に菜食を推奨」ですが、菜食主義者の方がスタミナがあり精力も強いことを指摘し、菜食こそ強精食と言っています。菜食はタンパク質が不足すると考えている人もいますが、さまざまな植物性食品の植物性タンパク質を組み合わせることで、体が必要とする各種アミノ酸を完全に充足させることができます。

「植物性タンパクだけでも、これに含まれている必須アミノ酸を上手に利用すれば、栄養価を高め、健康になり、美しくもなることができるのである。たとえば、ヒスチジンの多い小麦タンパクと、リジンの多い豆タンパクを組み合わせれば、おたがいの欠点を補うことになるだろう。」

ポイント 3 の「塩分は控えめ」の考え方ですが、これは、植物にも動物にももともと塩分が含まれているので、特別に塩分を摂取する必要はないという考え方です。人間の体に必要な塩分はほんのわずかであり、過剰な塩分は腎臓の負担になります。塩分は摂るものではなく、抜くものだと言っています。これは、運動をしたり、風呂やサウナに入ったりして汗を流すことで、体から余分な塩分を抜くぐらいが丁度よいということです。

「もともと人間の体が必要とするナトリウム(塩)は、ごく微量なものである。果物なら 100 グラムに 0.04 グラム、牛乳には 0.01 グラムの塩分があり、ほかの植物や動物にもあまねくふくまれているから、ことさら塩分をとらなくても、人間の体には十分に間に合っている。」

ポイント 4 の「澱粉食品は体の基礎を作る」ですが、米、カボチャ、サツマイモなどの炭水化物食品を澱粉食品と呼び、体の基礎を作る食品として推奨しています。玄米と白米の区別にはあまりこだわっていなかったようで、ほとんど玄米の話しは出てきません。特にカボチャとサツマイモは、豊富な栄養素を持った美容食品として推奨されています。

ポイント 6 の「一日二食主義」ですが、食事は空腹のときにとればよいので、一日三食にこだわる必要性は特にないということです。

「私はすでに 50 年来、ずっと二食主義を実行してきているが、体に何の支障もないばかりか、三食による胃腸の負担が減るので、体の調子はいたってよく、つねに快適にすごしている。生物学の法則からいっても、食事はもともと空腹のときにとればよいのだから、二食でもいっこうにかまわないのである」

以上の 6 点が栗山式自然食の大きな特徴ですが、栗山式自然食とフルータリアンは共通する点が多いです。フルータリアンを栗山式に説明するなら、「“生きた”水分を豊富に摂取する食事スタイル」と言えます。

同時代に、果物と生野菜を中心とした食事を推奨していた世界的な先駆者として、ノーマン・ウォーカー(1886~1985)という人がいます。
ニンジンジュースなどの生ジュース療法を世に広めたことでも有名で、主要な著作は日本語にも翻訳されています。ウォーカー博士自身、果物と生野菜を中心とした菜食を実践し、99 歳で亡くなる最晩年まで執筆活動などを続け、非常に健康的だったことが知られています。
健康の秘訣は「果物と野菜に含まれている生きた水分を多く摂取すること」でした。これはまさに栗山式健康法と同じです。ウォーカー博士も青汁健康法を研究し、その研究成果を『生野菜汁療法』という本にまとめています。

その他個人的に興味深いのは、栗山氏が「加熱食品が虫歯を作る」と言い切っているところです。砂糖をはじめとする酸性食品をとりすぎた結果、酸毒症が引き起こされることが虫歯の原因と書かれています。果物は甘いから虫歯になりやすいと思っている人が多いのですが、私の経験からしても、これは果物に対する完全な誤解だと思います。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. 栗山毅一(著)『永遠の若さを保証する自然食の秘密―食品公害の中で生き抜く知恵』徳間書店(1970)
2. 栗山毅一(著)『完全食事療法/病気の自己診断法 医者のくるまで』株式会社栗山食事研究所出版部(1964)
3. N.W.ウォーカー(著)、樫尾 太郎(翻訳)『生野菜汁療法:毎日の一杯が難病をなおす』実業之日本社(1976)
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オプションメニューとしての果実茶――ローズヒップの世界

2024-05-22 | フルータリアンの実践
私は毎日、三つのカテゴリーのフルーツメニューを楽しむことを心掛けています。一つ目は生ジュース、二つ目は固形のフルーツ、三つ目は塩分を含むメニュー(アボカドサラダなど)です。この三つを消費しているうちに気がついたら一日が終わっていて、ローフードだけで一日を過ごすことができたということが多いのです。

これに加えて、あくまでオプションメニューという扱いにはなりますが、果実茶も飲んでいます。
「お茶も果実系なんだ」と突っ込まれたりもするのですが、お茶についても果実由来のものを選択することができるということです。
そして、果実茶の効能を考えれば、それはそれで導入を検討してみる価値はあります。
果実茶と言われても、日本人にとってあまりピンと来ないかもしれませんが、天然の果実茶として最もポピュラーなのがローズヒップティーです。

■ 野菜不足の冬を支えてきたローズヒップ

ローズヒップティーは 21 世紀の始め頃、日本でも美容食品としてブームになったことがあります。
ローズヒップは、バラ科の植物である野イバラの実の部分です。これを乾燥させて細かく砕いたものがローズヒップティーです。ローズヒップティーは、ヨーロッパで古くから伝統的に飲まれてきたお茶で、特に、野菜が少なくなりがちな冬に体調を整えるお茶として重宝されてきました。

ローズヒップティーはノンカフェイン飲料ですから、強い刺激物であるカフェインの摂取量を減らすのに役立ちます。お茶やコーヒーを常飲してきた人は、まずこの部分で違いを感じるでしょう。よく聞かれる体験談が、夜間に寝つきが良くなり、睡眠の質がアップしたというものです。
また、ローズヒップは「ビタミン C の爆弾」とも呼ばれ、レモンの約 20 倍ものビタミン C を含みます。ビタミン C は水溶性ですから、抽出後の上澄み液には多くのビタミン C が含まれています。基本的に現代人はビタミン C が不足しがちなので、補助的にローズヒップティーで補うのは良い方法です。

抗酸化物質のリコピンにいたっては、トマトの約 8 倍も含まれています。体内で常時発生している活性酸素が、老化や生活習慣病の原因の一つと考えられていますが、リコピンはこの活性酸素を消去する働きが極めて強いため、近年注目を浴びています。
ローズヒップティーには、カルシウムや鉄などのミネラル類も豊富に含まれており、カルシウムは牛乳の約 8 倍、鉄分はホウレン草の約 2 倍です。特に、女性に多いとされている鉄欠乏性貧血の改善にも役立ちます。

ローズヒップティーはハイビスカスと相性が良いため、多くの商品でハイビスカスがミックスされています。ハイビスカスで食用に使われるのは、花の萼(がく)の部分ですから、「ローズヒップ&ハイビスカス」のハーブティーは厳密には「果実と花」のお茶ということになります。

ハイビスカスティーは、特にアフリカ、東南アジア、中南米で広く飲まれてきたお茶で、ポピュラーなハーブティーとして多くの研究が行われ、さまざまな効能が報告されています。
コレステロール値の低減作用、動脈硬化の防止作用、高血圧の改善作用、心臓保護作用、抗肥満・減量作用、抗炎症作用、免疫調節作用、抗菌作用、抗酸化作用、抗老化作用、抗糖化作用、抗糖尿病作用、抗ガン作用、腎臓結石・痛風の防止作用、などです。
成分面での特徴としては、酸味成分であるクエン酸とリンゴ酸が、疲労の回復を助けます。また、ポリフェノール類が豊富に含まれ、強い抗酸化作用があります。特に、赤い色の色素成分であるアントシアニンは、眼精疲労を緩和する働きがあります。
『メディカルハーブ安全性ハンドブック』によると、ローズヒップ、ハイビスカスともに、安全性クラス 1 の「適切に使用する場合、安全に摂取することができるハーブ」とされています。
ローズヒップ&ハイビスカスティーが素晴らしいのは、味が分かりやすくて美味しいという点です。緑茶やコーヒーの苦みに慣れた舌には、初めはローズヒップティー独特の酸味に違和感を覚えるかと思います。しかし不思議なもので、飲み続けているうちにはまったという人が多くいるのです。

私自身は、アントシアニンによる眼精疲労の緩和を期待して、飲んでいるところもあります。
個人的に気に入っているのが、食器の茶渋汚れがかなり少なくなることです。そして、これと関係してか、茶渋による歯の着色汚れも少なくなります。

ローズヒップティー以外の果実茶としては、ブルーベリーやカシスなどのベリー系、アップルとシナモンのミックス、オレンジピール(果皮)を用いたハーブティーなどが比較的ポピュラーでしょう。
ネット通販であれば、フルーツティー専門店というお店も見つかります。半分遊びでバリエーションを試してみるのも面白いかもしれません。
  

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. 古田 久子(著)『ローズヒップでつるつる美肌になる―美しさと健康を手に入れる!』リヨン社(2003)
2. 米国ハーブ製品協会(AHPA)(著)、ゾーイ・ガードナー(著)、マイケル・マクガフィン(著)、小池一男(監修)、林真一郎(訳)、渡辺肇子(訳)、今知美(訳)『メディカルハーブ安全性ハンドブック』東京堂出版(2016)
3. Leslie Taylor. Hibiscus Flower: Nature’s Secret for a Healthy Heart (The Rainforest Medicinal Plant Guide Series Book 1). Rain-Tree Publishers (2020)
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冷凍フルーツでバリエーションをつける――フローズンメニューの導入

2022-05-25 | フルータリアンの実践
冷凍フルーツを取り入れることで、単調になりがちな食生活に、バリエーションをつけることができます。

冷凍ものの方が安価で、季節を気にせず年中楽しめるというメリットがあります。
半解凍のまま利用して、フローズンスムージーやアイスクリーム風ミックスボウルなど、ひんやり食感のメニューを楽しむことができます。

様々な冷凍フルーツが出回っていますが、よく見かけるのが、イチゴ、ブルーベリー、マンゴー、パイナップル、ブドウ、キウイ、ライチなどです。
私は、このうち、冷凍ブルーベリーと冷凍マンゴーをよく利用しています。

その一方で、冷凍処理による栄養損失について気にされる方もいるかもしれません。
これについては後半で触れることにして、まずは、冷凍フルーツを利用した、ひんやり美味しいフローズンメニューを紹介したいと思います。

■ かんたんフローズンメニュー

[1] 冷凍ブルーベリー

・バナナとブルーベリーのミックスボウル


ブルーベリーが半解凍ぐらいのタイミングで、バナナとミックスします。
ひんやりとした食感で、アイスクリームのような味わいがあります。

スーパーが閉まっていてコンビニしか開いていないときでも、用意できる可能性が高いメニューです。
最近のコンビニは、冷凍フルーツの取り揃えがとても充実しています。

・バナナとブルーベリーのフローズンスムージー


汗をかいて水分欲求があるときは、フローズンスムージーにするのもよいでしょう。

眼精疲労を感じているときにブルーベリージュースを飲むと、翌日に目の疲れが和らいでいることに気付くこともあります。
ブルーベリーに豊富に含まれるアントシアニンには、目の毛様体筋の緊張をほぐす効果があり、眼精疲労を軽減させます。

バナナとブルーベリーの組合せは、クレープやお菓子に使われる定番ですが、子供たちがもっとも好きな味の一つです。
砂糖入りの炭酸飲料を与える代わりに、果物だけのスムージーを作ってあげることで、子供の虫歯を防ぐことができます。

[2] 冷凍マンゴー

・マンゴーとバナナのミックスボウル


バナナの上に、冷凍マンゴーをかけただけの簡単メニューです。
リンゴとも相性が良いです。

東洋医学やマクロビオティックの影響を受けた方に多いのですが、生の野菜や果物を食べると体が冷えると考えている人もいます。
しかし、多くのローフード実践者が体験している世界は、その逆です。
「体の内側からポカポカする」、「血のめぐりが良くなったのか、体温が上がった気がする」などと、体の冷えとは真逆の現象を体験する人が多いのです。
この理由としては、生の野菜や果物は、加熱処理によって酵素が破壊されておらず、大変消化が良いため、全身の代謝が良くなっていることが考えられます。
なにより、人間以外のすべての野生動物は、食べ物を加熱することなく、そのままの状態で食べています。
寒さが厳しい冬の季節においては、寒風にさらされて冷え切った食べ物をそのまま食べることもありますが、それはそれで何の問題もないわけです。

・ひんやりトロピカルジュース


冷凍マンゴーとパイナップルのミックスジュースです。
南国フルーツ同士の掛け合わせが生み出す、独特でトロピカルな味わいが魅力です。

マンゴーやパイナップルに含まれる豊富な酵素により、腸内の毒素や未消化物が分解され、腸内をキレイな状態に保つことができます。

■ 冷凍による栄養損傷について

果物に対して様々な加工が行われていますが、中でも、濃縮還元されたジュースは栄養の損傷が激しく、栄養価という観点から見た場合、全く別物と考えるべきです。
加熱殺菌の工程を伴うため、酵素は死滅し、ビタミン・ミネラルをはじめとする栄養素も損傷を受けています。
米国のフルーツ研究家、ポール・グロス博士は、自著『スーパーフルーツ』(未訳) の中で、未加工のままの果物と、濃縮還元されたジュースの栄養価を以下のように比較しています。


多くのローフード実践者が、市販の濃縮還元ジュースには手を出さずに自分で生ジュースを絞るのは、こういった理由からです。

それに対して、冷凍処理の場合は、未加工の果物や乾燥果実と近いレベルで栄養価が保たれると、グロス博士は言っています。
そして、その根拠となる理由も多くあるわけですが、以下、ポイントとなる論点をいくつか示したいと思います。

・前処理のブランチングについて   

冷凍野菜の場合、前処理としてブランチングという加熱処理が行われています。
加熱により酵素を不活性化させて、冷凍保存中の変質や変色を防ぐためです。

それに対して、冷凍果物の場合、ブランチングをしてしまうと新鮮さが失われてしまうため、ブランチングは行われていません。
ただし、ごく一部のスライス状の果物は、変色を防ぐためにブランチングを行うこともあるようです。
正確なことは、製造元に確かめなければわからないようです。

・急速冷凍と通常冷凍の違いについて

現代の冷凍食品は、急速冷凍により冷凍保存されています。
どの程度、"急速"かというと、マイナス 5℃~マイナス 1℃の範囲を「30 分以内」で通過する速さです。

この温度帯は、「最大氷結晶生成温度帯」と呼ばれており、食品の水分が氷結晶に変わる時間帯です。
この際、氷結晶の肥大化が起こり、食品の細胞膜が破壊されてしまいますが、
この温度帯をできるだけ素早く通過させることで、氷結晶の肥大化を抑制することができ、細胞破壊を防ぐことができます。

通常の冷凍 (緩慢冷凍と呼びます) では、この温度帯を通過するのに何時間もかかるため、食品体積の膨張とともに細胞破壊が起こり、品質の劣化につながります。
以下のグラフは、急速冷凍と緩慢冷凍の凍結曲線を比較したものです。 (参考:一般社団法人日本冷凍食品協会のホームページ内資料より)


・冷凍によるビタミン C の損傷について

栄養素の中でもビタミン類は損傷を受けやすく、特にビタミン C は、栄養素として重要性が高く、分析もしやすいことから、冷凍フルーツの品質を測定する上で最も代表的な指標になっています。

Bisset と Berry による研究 (*3) では、濃縮オレンジジュースを冷凍保存した場合に、ビタミン C がどれだけ保持されるかが調査されています。
濃縮オレンジジュースを、-20.5℃で凍らせた後、-20.5℃、-6.7℃、1.1℃の 3 通りの温度で冷凍保存を行いました。

最も低い温度である -20.5℃ で冷凍保存した場合、一年後のビタミン C 保持率は 91.5%でした。
それに対し、-6.7℃では 8 ヶ月の時点で 79%の保持率、1.1℃ではたった 3 ヶ月で 89%の保持率となりました。

-20.5℃の低温下では、かなり高い保持率で、ビタミン C が保持されていたと言えるでしょう。
以下のグラフは、濃縮オレンジジュースの冷凍保存時のビタミン C 保持率を示したものです (アルミ付紙パックで保存した場合のデータ) 。



・冷凍によるビタミン B 群の損傷について

Spiess による研究 (*4) は、冷凍保存におけるビタミン B 群とカロテンの保持に関するものです。
オレンジジュースとイチゴを -18℃で冷凍保存した場合の、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ピリドキシンの安定性について報告されています。
12 ヶ月の冷凍保存後、チアミンとピリドキシンのみが減少していました。それ以外は、ほぼそのまま保持されていました。
従って、-18℃での冷凍保存が 1 年までであれば、ビタミン B 群において、はっきりとした栄養損傷は見られないと結論づけています。

Minasyan と Astabatsyan による研究 (*5) では、様々な冷凍フルーツで、ビタミン B 群の変化について調べています。
各フルーツは、-40℃で冷凍された後、8ヶ月間、ポリ袋で冷凍保存されました (-18℃~-20℃)。
冷凍前、冷凍後、冷凍保存後に、各ビタミン B 群 (チアミン、パントテン酸、ピリドキシン、ニコチン酸、イノシトール) の測定を行いました。
冷凍保存後、ビタミン量のわずかな減少が認められました。
イノシトールとニコチン酸の保持率は、94.9%~99.3%。ピリドキシンの保持率は、78.3%~97.6%、パントテン酸は 85.1%、チアミンは 88.2%でした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Lester E. Jeremiah (ed.). Freezing Effects on Food Quality (Food Science and Technology Book 72). CRC Press (2019)
2. Paul M. Gross. Superfruits: (Top 20 Fruits Packed with Nutrients and Phytochemicals, Best Ways to Eat Fruits for Maximum Nutrition, and 75 Simple and Delicious Recipes). McGraw Hill (2009)
*3. O.W.Bisset and R.E.Berry. Ascorbic acid retention in orange juice as related to container type. J.Food Sci. 40(1):178 (1975)
*4. W.E.L.Spiess. Changes in ingredients during production and storage of deep-frozen food―a review of the pertinent literature ZFL 8:625 (1984)
*5. J.A.Venning, D.J.W.Burns, K.M.Hoskin, T.Nguyen, and M.G.H.Stec. Factors influencing the stability of frozen kiwifruit pulp. J.Food Sci.54(2):396-400,404 (1989)
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フルータリアンの基礎は菜食にあり――知っておきたいロマリンダ食

2022-03-30 | 20 世紀に学ぶ
■ フルータリアンにいたる道

普通の食生活をしていた人が、いきなりフルータリアンの食生活を始めるのは珍しいことです。
私の場合もそうでしたが、多くの場合、次のようなステップを経てフルータリアンに近づいていきます。

ベジタリアン(菜食主義)

ヴィーガン (完全菜食主義)

ローフード (生菜食) の導入(生食率を30%→50%→70%と徐々に上げていく)

フルータリアン(果菜食)

それぞれの段階に応じて超えるべき壁のようなものがあり、少しずつステップを踏みながら体を慣らしていく方が、最終的には長続きします。
実際、既にヴィーガンを実践していてローフードやフルータリアンに興味を持ち始めたという人の方が、圧倒的に長続きする可能性が高いです。

よって、今まで普通の食生活を送っていた人でフルータリアンを実践してみたいという人がいたら、「まずは菜食から始めてみてはどうか」「果物多めの菜食スタイルを試してみてはどうか」と提案すると思います。

例えば、日本でヴィーガンを実践する上で超えるべき壁の一つとして、スープに使われている出汁 (だし) をどうするかという問題があります。
大半の出汁は鰹節が使われているため、これを避けようとすると外食での選択肢は大きく狭まります。
だからといって自分で出汁を準備するのも手間だったりします。

そこで、うどんやそばを出汁を使わずに美味しく食べる方法はないだろうかと考えるようになるわけです。
そして、実際、四国地方には醤油うどんというメニューがあることに気付きます。
残念ながら現在の醤油うどんは出汁が使われているのですが、20 世紀前半頃、うどんに純粋な醤油だけをかけて食べていたという記録があり、しかも大変なご馳走であるとされていました。
そして今度は、どんな醤油がうどんに合うだろうかと試行錯誤を始めるようになります。

このような模索を重ねながら、そして、その過程で得られる様々な気づきを増やしながら、少しずつステップを踏んでいくわけです。
やはり食生活というのは、子供の頃から何十年もかかって身につけてきた習慣ですから、急激な変化には耐えられないのだと思います。

多くのフルータリアンはこのようなステップを経てフルータリアンになっているので、自分はベジタリアンである、またはヴィーガンであるとのアイデンティティを持っていることが多いのです。
今のところ日本では菜食主義者は少数派ですから、同調圧力が強いと言われる日本社会の中で、嫌でも自らのアイデンティティを意識せざるを得ないでしょう。
特に、「菜食主義者 VS 非菜食主義者」の健康上の議論に巻き込まれるのは必至です。

このような議論が巻き起こった場合、栄養学の最先端の論文を研究されている方などが、「最新の栄養学はますますプラントベースの食事を支持している」と総括して教えてくれることがあります。
これは世界中の研究者によって、もう何十年も前から叫ばれ続けていることです。
その一方で、菜食は健康に悪いという記事や論文も少なからず見つかることから、これらが非菜食主義者に取り上げられて、議論の応酬が続くことになります。

このような場合、両陣営とも、比較的最新の研究を持ち出してきて議論し合うことが多いようです。
しかし、そのような最新の研究に頼らなくとも、菜食の健康上の優位性という点については、20 世紀の時点で既に証明されているのだと思います。

それを最もわかりやすい形で示しているのがロマリンダ食です。

■ 禁煙・禁酒・菜食の町 ロマリンダ

ロマリンダとは、米国ロサンゼルスの東方 100 キロメートルに位置する小さな田舎町のことです。
ロマリンダは、キリスト教の一教派「セブンスデイ・アドベンチスト」(Seventh Day Adventists = SDA) の信者によって作り上げられました。
町の多くの住民は菜食主義者であり、町ぐるみで健康食・自然食運動が実践されてきました。

現在においてもロマリンダは有数の長寿地域として知られ、"アメリカにおける唯一のブルーゾーン"とも言われています。
ブルーゾーンとは、作家で探検家のダン・ビュイトナーによって調査・提案された、現代世界における 5 大長寿地域のことです。
(イタリアのサルデーニャ島、米国カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島、沖縄の大宜味村)
"一般のアメリカ人よりも 10 年長く生きるスリムな人々"といった文句で紹介されることもあります。

ロマリンダで最も活発な産業は医療事業であり、多くの市民が医療活動に従事しています。
ロマリンダは、人口一万人弱の小さな町でしたが、1984 年にロマリンダ大学医療センターが、世界で初めてヒヒの心臓を赤ちゃんに移植するというショッキングな手術を行ったことで、世界的に有名になりました。
その次に活発な産業が出版・教育事業です。
出版・教育事業に力を入れているのは、同教派が「キリストの再臨のメッセージを全世界に宣べ伝えることを使命としている」ためです。
現在、信徒数は世界全体で 2000 万人を越えており、日本での信徒数は 1 万 5 千人余だということです。

本記事では、現在のロマリンダではなく、20 世紀後半のロマリンダに焦点を当てようと思います。
大規模で貴重な栄養疫学調査の大半は、20 世紀後半に行われているためです (よって現在の状況とは異なる記載もあります)。

アドベンチストが菜食を実践するのは、聖書に
「神がはじめに穀類、堅果類、果物、野菜などの菜食を人間の食物として与えられた」(創世記第一章)
ことが記載されているためです。

また、次に挙げる五つの生活原理を日常生活の心がけとしています。

[1] バランスのとれた食事をする

[2] 自然治癒に努める

[3] 病気にならないよう予防を心がける

[4] 精神衛生に注意する

[5] 神と人間に対して愛を持つ

これら生活原理の内、特に[1][2][3]を忠実に守ろうとすれば、菜食だけではなく、禁酒・禁煙の習慣にもつながっていくわけです。
酒やタバコは、はっきりと「有害なもの」として認識され、町のスーパーマーケットでも売られていませんでした。
また、精製した小麦や砂糖のような"非自然食品"は、食料品売り場の片隅に追いやられていました。
香辛料やカフェインの入ったコーヒーやコーラなどの嗜好品も、"反自然飲料"と考える人が多く、避けられる傾向にありました。
[3]の病気の予防の観点から、適度な運動を心がけようとする人も多く、健康維持のために様々なスポーツやエクササイズが実践されていました。

■ SDA 栄養疫学調査

ロマリンダのような、禁煙・禁酒・菜食を実践する社会集団は珍しく、熱心な研究対象になってきました。
代表的で重要な疫学調査を取り上げたいと思います。
なお、各調査では、セブンスデイ・アドベンチストのことを「SDA」と簡略的に表します (Seventh Day Adventists = SDA)。

☆ セブンスデイ・アドベンチストの 5 つのダイエットグループと、グループ別の疾患発症リスク

最も大規模な疫学調査の一つが、2002 年から行われている AHS-II (Adventist Health Study II) と呼ばれる調査です。
米国とカナダの約 10 万人の SDA が調査対象になっています。
セブンスデイ・アドベンチストの食スタイルで最も多いのが卵乳菜食でしたが、信仰の度合いや信仰を食生活にどれほど反映させるかによってばらつきが生まれます。
本調査では、研究対象の人数が多かったこともあり、以下の 5 つのグループに分類して健康状態を比較することができました。

・グループ 1:ノンベジタリアンの SDA (ノンベジ)

SDA の中で最も大きな割合を占めるグループで、全体の 43.7%を構成。
果物、野菜、乳製品、卵、魚、鶏肉、赤肉を含むすべての食品群を食べる。
5 つのグループの中で最も不健康なグループ。

・グループ 2:セミベジタリアンの SDA (セミベジ)

すべての食品群を食べるものの、魚・鶏肉・赤肉の消費量が極めて少ないグループ。
SDA 全体の 8.3%を占める。
健康状態は、ノンベジタリアンよりも優れている。

・グループ 3:ペスコベジタリアンの SDA (ペスコ)

果物、野菜、魚、卵、乳製品は食べるが、赤肉や鶏肉は食べないグループ。
SDA 全体の 9.7%を占める。
赤肉や鶏肉を食べるグループより健康状態が優れている。

・グループ 4:ラクトオボベジタリアンの SDA (ラクトオボ)

動物性食品の内、卵と乳製品は食べるが、魚、鶏肉、赤肉を食べないグループ。
卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト、バター、アイスクリームなどの卵・乳製品を食べる卵乳菜食。
SDA では二番目に多く、全体の 34%を占める。
魚、鶏肉、赤肉を食べるグループより健康状態が優れている。

・グループ 5:ヴィーガンの SDA (ヴィーガン)

食事のすべてが植物性食品から構成され、魚、鶏肉、赤肉など一切の動物性食品を口にしないグループ。
いわゆる完全菜食主義者で、SDA 全体の 4.3%を占める。
最も素晴らしい健康状態を享受している。


各グループの割合と特徴を以下のようにまとめることができます。



次に、疾患別に、グループ同士で疾患リスクの比較が行われました。

・グループ別糖尿病リスク


ノンベジの罹患リスクを 1 とした場合、セミベジが 0.72、ペスコが 0.49、ラクトオボが 0.39、ヴィーガンが 0.22 と、ヴィーガンが最も低い。

・グループ別高血圧リスク


ノンベジの罹患リスクを 1 とした場合、セミベジが 0.77、ペスコが 0.62、ラクトオボが 0.45、ヴィーガンが 0.25 と、ヴィーガンが最も低い。

・グループ別体重比較 (BMI値)


ノンベジの BMI 値は28.3、セミベジは 27、ペスコは 25.7、ラクトオボは 25.5、ヴィーガンは 23.1。
ヴィーガンのみが、普通体重の範囲内。

☆ 平均余命の調査

次は、1974 年から 1988 年にわたって行われた AHS-I (Adventist Health Study I) と呼ばれる調査です。
カリフォルニア在住の 25 歳以上の SDA 信徒 34192 名が調査対象になっています。

・世代毎で平均余命を比較 (男性の場合)

すべての世代において、SDA の平均余命は、カリフォルニア住民を上回っていることがわかります。

・世代毎で平均余命を比較 (女性の場合)

男性の場合に比べると平均余命の上げ幅は少ないものの、女性の場合もすべての世代で、SDA の平均余命の方が長くなっています。

☆ SDA の死亡原因の比較

次は、SDA 信徒と 普通の食事をしている人とで、死亡原因を比較したデータです。
ロマリンダ大学で、1958 年から 1965 年までの 8 年間にわたって行われた調査で、カリフォルニア在住の約 5 万人の SDA 信徒 (35 歳以上) が調査対象になっています。
カリフォルニア全州の住民と比較しています。

平均寿命を比較すると以下の通りとなりました。

・カリフォルニア男性:71 歳
・SDA 男性:77 歳
・カリフォルニア女性:77 歳
・SDA 女性:80 際

個別の疾患毎の死亡原因発生率は以下の通りです。
カリフォルニア住民の値を 100 とした場合の SDA の値が示されています。


このように、すべての疾患において、SDA の方が低いことが示されました。
がんによる死亡についても、すべての部位のがんで、SDA の方が低い発生率となっています。
喫煙と深い関わりのある死亡原因、肺がん・口腔がん・咽喉がん・喉頭がん・気管支炎・肺気腫・膀胱がん、においてはかなり低い発生率となっています。
また、飲酒と深い関わりのある死亡原因、食道がん・肝硬変・交通事故においても明らかに発生率が低くなっています。

非喫煙の習慣のみが、低い死亡率に寄与しており、菜食の習慣は関係ないのではないかと考える人もいるかもしれません。
そこで、非喫煙の SDA と非喫煙の非 SDA のがん罹患率も比較されています。
そして、この比較においても、やはり SDA の方が低い値でした。

[非喫煙の SDA と非喫煙の非 SDA のがん罹患率を比較]

・がん全体の死亡率は、SDA 男性の場合で 85%、SDA 女性の場合で 78%。

・肺がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 67%、SDA 女性の場合で 42%。

・結腸直腸がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 67%、SDA 女性の場合で 42%。

・乳がんによる死亡率は、SDA 女性の場合で 81%。前立腺がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 93%。

・リンパ腫または白血病による死亡率は、SDA 男性の場合で 93%、SDA 女性の場合で 89%。

・全ての死因を総体的に比較すると、非喫煙 SDA 男性の死亡率は、非喫煙非 SDA 男性よりも 21%低く、非喫煙 SDA 女性の死亡率は、非喫煙非 SDA 女性よりも 9%低い。
冠動脈心疾患や卒中などのがん以外の死亡率も、SDA の方が低い。

この頃の日本では、一生涯のうち日本人の 4 人に 1 人はがんにかかると言われていました。
それが 21 世紀を迎える頃には、3 人に 1 人になり、今では、2 人に 1 人となっています。
これらは 50 年以上も前のデータですが、現代の日本人においてこそ意味のある調査研究でしょう。

菜食をするとがんの発生が少なくなる理由については、はっきりとしたことはわかっていませんが、2 つの観点から因果関係を推測することができます。
まずは、植物性食品に豊富に含まれる食物繊維、ビタミン類、ポリフェノール・カロテノイドなどの抗酸化物質が、がんを抑制する働きをしていることが考えられます。
もう一つの観点としては、肉を焼いたり揚げたりした場合に変異誘発物質が発生すること、また、PCB・PCD などの発がん性のある農業・工業用化学物質は、肉・魚・乳製品・油脂類に蓄積されやすいことなどが考えられます。
農薬というと果物や野菜を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際には動物性食品に高濃度で検出されます。
世界的な環境活動家のジョン・ロビンズ氏も、
「すべての有害な残留農薬の 95~99 %は、肉・魚・乳製品・卵から体内に取り込まれている」
と述べています。
農薬の付着した飼料を家畜が食べることで、脂肪組織や筋肉組織に汚染が蓄積・濃縮されていくためです。

■ 日本の中のロマリンダ

「ロマリンダ」または「アドベンチスト」という名がつく病院があれば、菜食に理解のある病院である可能性が高いです。
最も古く長い伝統を持っているのが、1929 年に開設された東京衛生アドベンチスト病院です。
キリスト教系の病院ということで理由のない迫害を受けて、1945 年に閉鎖に追い込まれたものの、数年後に再度活動を再開して今日に至っています。
病院では菜食メニューが振る舞われ、禁煙教室や菜食料理講習会などの活動も盛んに行われてきました。

その他としては、神戸アドベンチスト病院や沖縄のアドベンチストメディカルセンターも長い伝統を持っています。
神戸アドベンチスト病院は、菜食レストランや菜食教室も運営しており、菜食のレシピ本なども出版しています↓

知花雅之著『神戸アドベンチスト病院栄養科スタッフがつくる おいしくて体にいい穀菜食レシピ』福音社

一度覚えてしまえばずっと使えそうなレシピが多く参考になります。

私は、事故や大病をして入院した経験などはまだないのですが、このような菜食に理解のある病院が日本にもあることを心に留めておきたいと思います。

セブンスデー・アドベンチスト教団の食品事業部である三育フーズも、菜食食品の会社として様々な菜食食品を手掛けています。
グルテンを抽出した代替肉を販売したのは三育フーズが日本初であり、昨今のヴィーガン食品への関心の高まりとともに菜食食品の需要も拡大しているようです。

このように、ロマリンダは遠く離れた日本においてもその活動を広げて、少なくない影響を与えてきました。  
日本人目線でロマリンダの存在を知ったときに改めて感動することは、飽食・肉食大国のアメリカにおいて、
ごく少数の社会集団でありながら、差別を受けることなく社会的に認められて、医療・出版事業を中心に大きな役割を果たしてきたことです。

これが日本であればそうはうまくいかなったかもしれません。
同調圧力の強い社会の中で、不当に差別されたり、偏見を持たれたり、嫌がらせを受けたりする可能性が高かったことでしょう。

アメリカには、互いの考え方の違いを自由として尊重する文化があります。
様々な人種がいるので、考え方の違いを認め合わないと社会的にやっていけないという側面もあるでしょうが、日本人としてはその態度に学ぶ点も多いはずです。
また、菜食同士の夫婦であっても、細かなスタイルの違いはどうしても出てくるものですが、こちらにおいても個人の自由としてお互いのスタイルを認め合う傾向が強いようです。

■ セブンスデイ・アドベンチストは果物をどのように捉えていたか

セブンスデイ・アドベンチストは果物をどのように捉えていたのでしょうか?
セブンスデイ・アドベンチストのリーダー的存在であり精神的な支柱でもあったエレン・グールド・ホワイト (1827 年~1915 年) の言葉を基に推察してみたいと思います。

エレン・グールド・ホワイトは、宗教家・教育家・著述家として、セブンスデー・アドベンチスト教会の創立において指導者的役割を果たした人物です。
「預言者」とも呼ばれており、生涯で見た幻の内容は文書として大切に保存され、教会の中では聖書に次ぐ重要文書という扱いを受けています。

☆ 果物から受ける祝福

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アダムがエデンの家郷を失ったとき、主が果物の供給を断たれなかったことに対し、私は神にとても感謝している。

『Statement from E.G.White Manuscript files』157 節、1900 年
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年間の大部分を通じて新鮮な果物が得られる国々に住んでいる人は、そのような果物によって受ける祝福に気付くよう主は望んでおられる。
木から採ったばかりの新鮮な果物に頼れば頼るだけ、その祝福も更に大きいのである。

『Testimonies for the Church. Vol.7』126 節、1902 年
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→ もともと初期の人類は果実が豊富に採れる森に暮らしていましたが、道具を発明して狩りをすることを覚えたり、農耕技術を発展させたりして、自らの生存領域を森以外に拡大させていきました。
人間は森を捨て去りましたが、森は人を見捨てませんでした。
その果実を通じて人間の健康を支え続けたのです。
アダムとイブは、旧約聖書の『創世記』に登場する理想郷「エデン」を追放されることになりましたが、それでも神によって果物の供給だけは断たれることがありませんでした。
果食に原始回帰的な意味合いを見出す人もいます。
失われてしまった森とのつながりを果食を通じて取り戻すという感覚です。

☆ 果物は最上の食物、しかし食後の果物は NG

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加工されず、単純であるが、量の豊富な果物は、神の働きのために準備している人々の前に備え得る最上の食物である。

『Statement from E.G.White Manuscript files』103 節、1896 年
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健康を支える仲介者として、我々は特に果実を推薦する。
しかし、他の食物で十分にまかなった食後に食べてはならない。

『Statement from the E.G. White Manuscript files』43 節、1908 年
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→ 加工されていない自然のままの果物が、最上であると言っています。
また、食後に果物を食べるのは良くないことも指摘しています。
消化が複雑になるためでしょう。
ビタミンという言葉すらも存在しない時代に、この原則を見抜いていたのはすごいことです。

☆ 食事の際に大量の飲み物を飲むのは変?

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大量に食塩をとってはならない。
ピクルスや調味料の入った食物を用いることを避け、豊富に果物を食しなさい。
そうするならば、食事のときにあれほど飲物を要求させた刺激は、大部分消失するであろう。

『Medical Ministry』305 節、1905 年
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→ ローフードは、食べ物自体にたっぷり水分が含まれているので、飲み物を特別に添える必要がなくなります。
逆に、普通の食事をしていたときはなぜあれほどまでに水分を欲したのだろうかと考えたくなります。
その一つの原因として、加熱食品特有のある種の"刺激"が考えられます。
単に水分を補給するためだけではなく、この"刺激"を抑えるためにドリンクを飲んでいたのかもしれません。

☆ 臨時のフルーツファスティング

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不摂生な食事が、しばしば病気の原因であって、身体が最も必要とすることは、これに負わされた無理な重荷を除くことである。
いろいろな病気の場合に最もよい治療法は、過労した消化器官が休息する機会を得るため、患者が一度か二度食事を断つことである。
数日間、果物だけの食事をとることは、しばしば頭脳労働者の荷を大いに軽減してきた。
多くの場合、短期間絶食をし、その後に単純で過度の食事をすることにより、自然そのものの回復力が働いて、全快に至らせた。
一、二ヶ月の節制した食事は、多くの苦しむ人々に、克己の道が健康への道であることを確信させることだろう。

『Medical Ministry』235 節、1905 年
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→ 不摂生な食事が多くの病気の原因であることは、この時代に既に知られていました。
また、酷使された消化器官の負担を取り除く上で、果物だけの食事が有効であることも知られていました。
果物だけの食事は、消化器官を休めるのに役立つだけではなく、豊富な栄養と浄化力によって、自然そのものの回復力が働くのを助けます。

☆ 有害な食品の代わりとして

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我々の医療機関においては、禁酒について明瞭に教えるべきである。
患者に、人を酔わせるアルコール飲料の害と絶対禁酒の祝福を示さなければならない。
彼らの健康を破壊したものを廃止するよう患者に求め、このような食物の代わりに、果物を豊富に与えるべきである。
オレンジ、レモン、プルーン、桃など、またその他多くの種類の果物を手に入れることができる。
骨折って努力が払われれば、主が造られた世界は実り多いからである。

『Statement from E.G.White Manuscript files』145 節、1904 年
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→ アルコールや砂糖などの健康に良くない食品の摂取を完全に断つのは難しいことです。
それらを断つことだけに意識を集中するのではなく、代わりの食品として果物を導入するのはよい方法です。
果物を多く食べていると、味覚が自然な状態に近づき、有害な食品が与える強い刺激に違和感を感じるようになります。

☆ 果樹園から採れたての果物は格別

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家庭も機関も、土地の栽培と改善のため更に努力することを学ぶべきである。
土地が季節に従って生じる地の産物の価値を人々が知りさえすれば、土を耕すために、もっと勤勉な努力が払われるはずである。
果樹園や農園から採れたての果物や野菜の特別な価値を、すべての者が知るべきである。
患者や学生の人数が増加するにつれて、更に広い土地が必要になってくる。
ブドウの木を植えて、その機関がブドウを生産することもできる。
また、その土地にオレンジ畑も有利である。

『Statement from the E.G.White Manuscript files』13 節、1911 年
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→ 土地の有効利用について述べた言葉です。
採れたての果物や野菜こそ健康に最善であり、果樹の栽培を積極的に検討すべきだと言っています。

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【参考文献】

1. 箕浦 万里子『ロマリンダの長寿食―アメリカの町ぐるみ自然食実践レポート』自然の友社 (1985)
2. 知花雅之『神戸アドベンチスト病院栄養科スタッフがつくる おいしくて体にいい穀菜食レシピ』福音社 (2013)
3. Elvin Adams MD MPH. The Healthiest People: The Science Behind Seventh-Day Adventist Success. iUniverse (2019)
4. Ellen G. White. Counsels on Diet and Foods. Ellen G. White Estate, Inc. (2010)
5. エレン・G・ホワイト『食事と食物に関する勧告』サンライズミニストリー (2002)
コメント (4)
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