手捻りで大壷を作る一般的な方法は、紐状の土を積み上げて形作るやりかたです。
但し、この方法ですと肉厚が厚く成り易く、重たい作品になってしまいます。
そこで、今回は叩きの技法を取り入れて、肉厚をやや薄くし強度を持たせる方法を述べます。
① 丸い球形の壷が一番難しい。
大壷に限らず、手捻りでも、轆轤であっても、壷の形で難しのは球形です。
左右上下が対称の完全な球形が出来れば、陶芸では一人前とさえ言われている程です。
左右は轆轤挽きすれば、対称に成り易いですが、上下関係では、大抵は下膨れない成ったり、
腰や下部の丸みが少ない等、上下が非対称に成り易いです。
それ故、最初から難しい形に挑戦するのではなく、簡単な形から作る事を勧めます。
・ 注: 人間の目の錯覚で、スケールで計った完全な球でも、やや縦長に見えます。
即ち、横よりも縦の方が強調されるものです。その為若干縦寸法を短くする事です。
② 今回取り上げる大壷の形と寸法。
下部は丸味の少ない「逆ハの字」形で、肩径が最大径とし肩の張った形にします。
・ 下部が極端に張っている形では、上に載せる紐の重量を支えきれずに、形が崩れ易いです。
大壷の焼成後の想定高さは、約25cm、肩径が約20cm、口径が約9cmとします。
当然、土の種類によりますが、生の状態では、高さが約29cm、肩径が約23cm、口径が
10.5cm程度にする必要があります。
③ 作り方は、おおよそ次ぎの手順で行います。
底作り、下部に紐を数段巻きつけて形作り、乾燥後に上部を紐作り、仕上げとなります。
その他の方法として、上下を別々に作り、適度に乾燥させてから、上下を接着する方法もあり
ますので、後日お話します。
④ 準備する物
土約3Kg、手轆轤、剣先(針)、切糸と弓、「木コテ」と「叩き板」、なめし革、カンナなどです。
⑤ 大壷を作る。
) 底を作る。適量の土(約700g)を手轆轤の中心置き、掌(てのひら)で叩いたりして平らにし
土を締めながら、約1.5cmの厚みに伸ばします。
・ 注: 土の厚みは物差しでは計れません。簡単な方法は、適当な棒切れの先に針を
埋め込み、所定の長さ(この場合は1.5mm)だけ外に出る道具を作る事です。
この針で底の中央と十字の4ヶ箇所を刺して、棒の痕が突けばほぼその厚みになります
手轆轤を回転させながら、約15cmの綺麗な円板になる様に、針で切り出します。
) 残りの粘土で紐を作る。
土を採り団子状にした後、テーブル板の上で転がしながら紐を作ります。
土の軟らかさ(乾燥具合)によって、作り易くなったり、「ヒビ」が入ったりしますので、適度の
硬さの土を使うと上手くいきます。
太さは約2cm程度とします。なるべく太さを一定にします。長さは不揃いでも良いのですが、
紐を積む際一本の紐とし、途中で継ぎ足さない様にしたいです。
それ故最大で65~70cmの紐が数本必要に成ります。
大きな作品ですので、必要な紐の数は20本程度です。尚、紐が乾燥しない様に、濡れた布を
掛けておきます。
) 紐を一段積み密着させる。
底の縁の上面に紐を一本巻き付け、両端が若干重なるます様に切ます。
・ 注: 切り方は三通り有ります。a) 紐を直角に切る。b)紐を楔(くさび)形に切る。
この場合、上下方向で斜めに切る方法と、内外方向に斜めに切る方法があります。
その際、底の縁よりやや内側に載せ、底の縁が5mm程度真上より見える様にします。
a) 紐は底に押し当て、空気が入らない様にし、紐の内側の土を崩しながら、底に指を使って
なすり付けます。 更に、「コテ」で紐と底の境を撫ぜてなだらかにします。
b) 紐からはみ出ている底の縁の土を、竹へら等で上になすり上げて、密着させます。
) 更に二段紐を重ねます。今回は輪積みの方法で行います。
紐の合わせ目位置が一箇所にならない様に、適度に移動させます。
積む時は真っ直ぐ上に載せる様にします。(口が開かない様にします。)
a) 内側の繋ぎ目を指を斜め下、斜め上と交互に動かせて繋ぎ目を消します。
b) 同様にして、外側の繋ぎ目を消します。
) 肉厚を一定にする。
両手の親指と他の指を向かい合わせて土を摘み、全周の肉厚を均等に1cm程度の
厚みにします。 薄くする事により、口縁は上開きの形になります。
この際、親指が内側に来るか、外側に来るかは自由です。
) 更に二段積み上げる。
口がやや広がった上に紐を載せる場合には、縁よりやや内側に積みます。
上記と同様に紐同士を密着させ、繋ぎ目を消し、更に、土を指で摘んで肉を薄くします。
水で濡らした「木コテ」を使い、滑らかに整えます。
) 更に数段積み上げてから、若干丸味を持たせます。
a) 叩き板で叩き、土を締めながら肉厚を薄くします。
・ 注: 叩き板には、模様が線刻されています。締めが強く成ると同時に、叩いた時の
文様が壷の表面に残ります。但し、壷の表面に文様を残したくない場合には、文様の
無い、平らな板を使います。
b) 叩く際には、内側から木製の受け板を当てます。
受け板は片手で持ち易い形状で、作品の内側にぴったり合う様にします。
特に腰周りに余分な土が残り易いですので、やや強く叩きます。
) 目標の最大径まで積み上げたら、下部分は完成となります。
乾燥させてから更に上に積み上げますが、口縁に塗れた布や新聞紙を被せ乾燥を
防ぎます。
以下次回に続きます。