釉の専門家である、祖父鈴木道雄氏と、織部に大胆なデザイン化を施した、人間国宝の父鈴木藏氏の
家系に生まれ、地元美濃の織部に拘りながらも、新たな織部を目指して活動しているのが、鈴木徹氏
です。
1) 鈴木徹(すずき てつ): 1964年(昭和39) ~
① 経歴
1964年 岐阜県多治見市に、鈴木藏氏(人間国宝)の長男として生まれます。
1987年 龍谷大学文学部史学科を卒業します。
1988年 京都府陶工職業訓練校成形科を卒業します。
1991年 「日本伝統工芸展」で初入選を果たし、以後も入選を繰り返しなす。
1994年 「東海伝統工芸展」に入選し、以後連続入選。
1997年 日本工芸会正会員になります。同年 黒田陶苑(東京銀座)で個展を開催します。
1999年 「東海伝統工芸展」で岐阜県教育委員会賞を受賞します。
2001年 「東海伝統工芸展」で東海伝統工芸展賞を受賞します。
2002年 東京日本橋三越本店で個展を開催します。
2003年 「日本伝統工芸展」で新人賞を受賞。「日本工芸展」(毎日新聞社主催)に入選します。
現在、名古屋芸術大学陶芸コースの非常勤講師を務めています。
② 鈴木徹氏の陶芸
京都府陶工職業訓練校を卒業後、父の仕事を手伝いながら、訓練校で知り合った仲間とともに
グループ展や個展で作品を発表しています。更にグループ展に参加する度に、新しい技法を発表
しています。
) 作る作品は主に、皿や鉢や湯呑などの食器類が多い様です。
) 彼の使う土は、「ザックリ」した、美濃の五斗蒔(ごとまき)土の単味です。
) 彼の作品の特徴の一つに、櫛目と箆目(へらめ)の作品が多い事です。
平面的な皿には、数十本の力強い櫛目と、数本の箆目が施されています。
a) 櫛は自作のもので、合板(ベニヤ板)を折って「ぎざぎざ」の切断面を使っています。
当然、櫛目の間隔もばらばらで、櫛部の長さもばらばらです。
この櫛を強く押し当てると、幅や深さに強弱のある筋となります。
この様な櫛を多数準備してあり、適宜使い分けています。
b) 箆(へら)も手製の合板による箆になっています。
幅の広い箆や、湾曲した箆など多種類の箆を自作しています。
c) 櫛目や箆を動かす方向は、その場その場で、瞬時に判断して施している様にも見えます
) 櫛目や箆目の他に、美濃伝統の「そぎ目」の技法も取り入れています。
自家製の松の木を削った箆や、合板で作った切れ味の悪い刀状の箆を使っています。
a) 「そぎ目」を入れる場所は、皿などの底削りの際や、口縁周辺部に施します。
b) あえて切れ味の悪い箆を使う理由は、器の表面を「ささくれ」させ、作品に力強さを与え、
施釉して焼成するとその装飾的効果が、一段と発揮されるとの事です。
) 鈴木徹氏の使用する釉薬は、「緑釉」と「灰釉」があります。
「緑釉」は一般に織部釉と呼ばれる釉ですが、あえて「緑釉」と呼ぶ事で、今までの織部とは
異なる釉を目指しているからです。施釉は素焼き後に行います。
a) 施釉の方法は、浸し掛けでは無く、筆で2~4回重ね塗りをしています。
釉n厚みを確認しながら施釉できるとの事です。又濃目の釉と、薄目の釉を塗り分けている
そうです。焼成すると、濃目の釉が薄目の釉の中に溶け込み、櫛目や箆目とは異なる
効果が出るそうです。
b) 櫛目を入れた際の「毛羽立」ちや、削り作業の「ささくれ」等の表面の「バリ」には釉が
濃目に付くそうです。
尚、彼の作品は自身のホームページの「 陶藝 鈴木徹」 で見ることが出来ます。
(福島県で同姓同名の陶芸家がおりますので、間違わないようにして下さい。)
次回(佐藤和彦氏)に続きます。