釉にはそれに適した土があります。どの土にも合い、どんな窯の焚き方に対しても、それなりに
良い色に発色し、更に温度範囲が広い(1180~1280℃)釉であれば、理想的な釉と言えますが、
中々万能の釉は少ない様です。 市販の釉を購入する場合、メーカーのカタログや、陶芸材料店に
ある色見本、ネット(色が明確ではない)などで選ぶのが一般的ですが、どの様な土が最も適して
いかは、ほとんど載っていません。
逆に、ご自分で使う数種類の土から判断して、それに合う釉を選ぶ事が多いです。
・ 但し、市販の釉の種類は多く、必要最低限(同色で2~3酒類)の色を選ぶべきです。どんどん
新しい釉が欲しるのが人情ですが、種類が多くなると、手におえなくなります。
・ 購入量も最小(1Kg)で試し、納得がいけば量を増やします。
前置きが長く成りましたが、本日の本題に入ります。
4) 灰釉: 木灰の種類は多く、松、杉、樫(かし)、楢(なら)などの幹や枝の灰を用いたものと、
栗皮の様に幹に付いている表面の皮を焼いて灰を作ります。又これらの灰が単独で配合される
場合と、混合して土灰として使われています。 灰の種類によって出る色は変化します。
緑系の灰釉には以下の釉があります。
① ビードロ釉: 綺麗なガラス質の緑色の釉で、鉄系と灰系があります。
又、薪窯で焼成した場合で、松灰が降り掛かり、緑色又はグレー掛かった緑色の釉となって
作品を覆たり、流れ落ちる時、ビードロが美しく出たと表現します。
これを自然釉のビードロとよびます。
) ビードロ釉: 還元で(1230℃程度)焼成すると、艶のある青緑に焼き上がります。
酸化焼成では、やや黄色味を帯びます。伊賀の土に似合う色と言われています。
・ 同じ名前の釉が各メーカーより販売されていますが、メーカーに寄って差が有り、酸化、
還元とも同じ様に発色する釉や、流動性が有り流れ易い釉もありますので、必ず試し
焼きを行ってから、本番で使う事です。
) ビードロ結晶釉: 細かい結晶がありますので、透明感はありません。
焼き上がりは、還元焼成でも、やや黄色味を帯びた青緑色です。細かな貫入(ひび)が
発生し易いです。
) 酸化ビードロ釉: 酸化焼成で艶のある、強い緑色を呈します。還元では赤味を帯びた緑色
になります。
) 松灰ビードロ釉: 天然又は合成の松灰で調合した緑釉です。還元焼成で行います。
推奨焼成温度1230℃。薪窯風に仕上がります。
) 蛇足ですが、施釉した際、底(畳付き)や、高台脇などの余分の釉を剥がします。それら
多種類の釉を集め、廃物利用として、壷の内側などの人の目に見えない場所に施釉すると
思います。この集めた釉も緑色に焼き上がります。
但し、黒い色が多く使いと、緑色が茶色になり、釉に熔けない材料(コバルト等)が入った釉
が混入すると、その色が斑点となって現れます。
② 灰マット釉: 木灰を基礎釉に使った釉に、アルミナ(カオリン類)を添加して、マット状に
した釉です。尚、光沢のある上記の釉も、わずかなアルミナ類を加えるとマットになります。
詳細は、第二章(市販の釉に他の材料を添加した釉、)で述べる予定です。
灰マット釉には、灰マット抹茶釉等の名前で市販されている、緑系の釉があますが、余り
一般的ではありません。
5) その他の緑釉
① (青)緑伊羅保釉: 流れ易い緑色(又は青緑)の釉で、筋状に流れ落ちた痕が残りましす。
それ故、薄く掛けます。 焼成温度は1200~1250℃で、酸化焼成します。
② 松葉みどり釉: 光沢のある、深い(濃い)緑色の釉です。
③ 緑なまこ釉: 緑色の乳濁釉です。(なまこ釉に付いては、後日述べる予定です。)
④ 黒斑緑釉: 酸化焼成すると、緑の地に結晶が現れます。
⑤ 青萩釉: 酸化焼成で、青緑の乳濁釉になります。
以下次回(黄色系)に続きます。