3) 奈良三彩と緑釉の技法。
③ 釉に付いて。前回の続きです。
) 基礎釉の製作。
) 色釉を作る。
) 施釉方法。
施釉は、素焼き後に行う場合と、素焼きをせずに行う方法があります。
正倉院の三彩は、素焼き後に施釉したのではないかと言われています。
a) 素焼きの温度は、本焼きの温度より50~100℃程度高い温度で、行った可能性が
あります。 即ち900~1000℃程度と考えられています。
イ) 素焼きの利点。 現在は施釉する場合、必ず素焼きするのが慣わしです。
それは、施釉する際作品が壊れる事を予防する為です。奈良三菜も事情は同じですが、
違いもあります。現在の素焼きは本焼きより低い温度で行いますが、奈良三彩では、
本焼き以上の温度で素焼きをしている事です。
ロ) 高い温度で素焼きを行う事は、より素地の強度を増す事に成ります。
b) 施釉は、筆又は刷毛(はけ)塗りの技法を取っています。
唐三彩が量産的手法で釉掛けが行われたのに対し、我が国では、一品づつ色を塗る
製作方法が取られます。
施釉の順番は、ほとんどの場合、緑釉を最初に塗り、次いで黄色(又は褐色)を塗り、最後に
空間を埋める様に白釉を塗っています。尚、唐では藍色が使われる事もありますが、奈良
三彩では、緑、黄色、白の三色のみです。
c) 描かれた文様は、線条文と円弧連続千鳥状配文を基本とし、鹿の子斑、網目、山道風、
麻の葉文、線条文などに限られています。
4) 正倉院以外の三彩・緑釉陶器。
昔は彩色陶器は、奈良の宮殿や一部の貴族や僧侶などで使用されていた、希少価値のある
焼き物と思われていました。しかし、第二次世界大戦後で行われた各地の土木工事に伴う発掘
調査で発見例が急増します。北は秋田や山形県から南は鹿児島県に至るまで、日本全国で出土
します。その数は270ヶ所以上と言われています。その主な場所以下の通りです。
① 奈良、平安時代の墳墓より出土。
) 国宝 瑠璃骨壷: 8世紀 奈良県 文祢麻呂(ふみのねまろ)の墓より出土。
高さ17.2cm、東京国立博物館蔵。
墓誌から、慶雲4年(707)に亡くなった文祢麻呂(渡来人)の墓であることが判明します。
緑色の火葬蔵骨壷で、金銅製の外容器に納められていました。
) 仏教伝来と伴に、火葬の風習も我が国に伝わります。その為骨壷が生産される様になり
ます。形は三彩や緑釉を施した、大型短頸壷で特に奈良時代に限られていた様です。
著名な火葬用骨壷として、以下の物あります。
・ 重要文化財 三彩壷: 8世紀 伝川崎市登戸出土。総高さ16.5cm、胴径19.8cm
昭和初期に登戸付近から出土した物と言われ、この種の三彩壷としては最も美しいと
言われています。蓋付きで最上部に宝珠状の摘みが付いています。
・ 三彩壷: 8世紀 和歌山県一里山古墳出土 総高さ20.4cm 胴径28.1cm
京都国立博物館蔵。
発見されている同種の壷では、最大の火葬蔵骨器です。緑色は無く白釉の中に赤釉、
褐色釉が掛かった物で、他の三彩とは趣が異なります。
・ 重要文化財 緑釉壷: 9世紀 京都市大日廃寺出土 高さ17.5 胴径21.2cm
大日廃寺の一角の墳墓から出土した骨壷です。割れた蓋が周囲から同時に出土
しなす。焼成温度が低い為、口から肩に掛け、釉が剥落しています。又、刷毛塗りの
跡が見られる壷です。
) 墳墓からの三彩小壷出土。
以下次回に続きます。