③ 辻村史朗氏の作品。
辻村氏が使う土は、日本各地の粘土を取り寄せ、目的に応じて使い分けたり、土を混ぜたり
(ブレンド)して使用しています。
「どこそこの粘土でなければ駄目だ、地元の粘土でなければ駄目だという人もいるが、私は、
作りたいものに合わせて粘土を選ぶ」と語っています。
) 辻村氏の作品の特徴は、一見して荒々しい表情をしています。
一部釉が施された作品もありますが、大部分の作品は、自然釉の掛かった、焼締陶器で、
緋色、ビードロ、ビードロの流れ、焦げ、他の土との引っ付き、更には破裂や割れのある作品
もあり、堂々とした作品に成っています。肌からは粗い長石の粒子が吹き出ていたり、
「ぶく」が発生している所もあります。
) 自然釉大壷は高さが40~50 cmもある大物です。
a) 壷の表面に大きな丸い傷跡がみえます。これはこの傷跡を下にして、即ち作品を横倒しに
して焼いた跡です。(流れた自然釉がこの円に向かっている事から推察されます。)
又、土の塊や他の作品を肩に乗せたり、側面に貼り付けたと思われる作品もあります。
b) 大壷は紐作で成形している様です。
壷の中央部又は肩の部分に、土を繋げたと思われる跡(段差)が見受けられます。
口は外側に捻り出され、首の部分は比較的短く、底の径も小さくなっています。
全体に丸っこい形の壷に成っています。 たぶん「ベタ高台」だと思われます。
) 花器について。 高さ30~50 cmの背の高い作品が多いです。
a) 土の塊の中央をえぐり穴を開ける方法で、花器にしたと思われます。
無釉の焼き締めによる作品で、ビードロや焦げのある、表面が凸凹で大きな亀裂が入った
作品が多いです。 この亀裂は高温焼成により、偶然発生したものと思われます。
表面や側面に、釘彫りと見られる人物(羅漢様?)が描かれていますが、大きな亀裂の為
絵柄がはっきりしません。
b) 花器の中には、砂を固めて焼成した様に見えるものもあります。
即ち、器肌が細かい砂の粒子状に成っています。形も縦長で、縦や横方向に大きな亀裂が
見受けられます。自然釉による青緑の色(還元焼成?)と、緋色や褐色の肌(酸化?)に
成っています。
c) 轆轤挽きで成形した作品もあります。高さ29cm程度の作品です。
伊賀耳付花入は、底が広く安定感があり、上部は筒形で高温により、又は故意に変形して
います。
) 水指の作品。高さ16~24 cmの作品で、共蓋(土制の蓋)に成っています。
伊賀耳付水指、伊賀矢筈口水指、伊賀三角水指など、伊賀の土を使った水指が多いです。
緋色、ビードロ、焦げと自然釉の掛かった水指で、大きな歪みや、切れや破裂したものも
見受けられます。
) 抹茶々碗について。井戸茶碗、粉引茶碗、信楽筒茶碗、引出黒茶碗、灰釉茶碗、灰釉
割高台茶碗、伊賀茶碗、長石割高台茶碗、信楽沓茶碗、志野茶碗、唐津茶碗など、
あらゆる種類の茶碗を作っています。 辻村氏は今までに茶碗を1万個以上焼いたそうです。
) 皿や鉢について。制作個数は比較的少ない様に思われます。
皿は四方皿(縦横26cm)、伊賀手鉢(径24cm)、粉引鉦鉢(どらばち、径27.5cm)等が
あります。
) 北条羅漢を描いた陶板。(72.7 X 53 cm)
周囲を茶色又は白色にし、中央の羅漢様を描く部分は黒くして、その中に羅漢を一体又は
数体を釘彫りで描いています。釘彫りされた部分は、下地の白が浮き上がっています。
注: 北条羅漢とは、兵庫県加西市北条町北条1293、北榮山羅漢寺にある五百羅漢
(実数は約450体)の事で、制作者、制作年代不明ですが、慶長年間(1596~1614)では
ないかと言われています。市指定文化財、兵庫県観光百選指定。
その他、同じ技法で、羅漢様ではなく、女性を描いた作品もあります。(53 X 33.3cm)
次回(大上昇氏)に続きます。