わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸150(川崎千足)

2012-06-27 23:10:48 | 現代陶芸と工芸家達

小学2年の時広島で原爆を体験し、悲惨な情景を目の当たりした事から、極限状態の人間がいかに

無力で弱い存在かを知り、その弱い人間を心から愛し、人間の魂を「土くれ」に託し、抽象彫刻の様な

作品を作り続けている作家に、川崎千足氏がいます。

1) 川崎 千足(かわさき ちたる): 1938年(昭和13年)~

 ① 経歴

   広島県安芸郡畑賀村に、農業技師の川崎確二の三男として生まれます。

   1960年 行動美術協会展へ、彫刻を出品します。(美大在学中)

   1961年 京都市立京都美術大学の彫刻科を卒業し、大阪市立高津中学の美術の非常勤講に

    成りますが一年で退職します。

   1962年 京都市立京都美術大学の彫刻専攻科に入学します。辻晋吾氏の影響で、陶彫を始めます。

   1964年 同校を卒業後、滋賀県甲賀郡信楽町に移住し、作陶生活に入ります。

    (尚、当時の信楽は寂れていて、家賃が安いのが魅力であった様です。)

   1969年 信濃橋画廊(大阪)、秋山画廊(東京)で個展を開催します。

    同年 現代彫刻作家の30点の作品を集め、「日本現代の造型 -信楽69-野外彫刻展」を信楽で

    開催します。

   1972年 「第一回日韓現代彫刻展」(韓国・ソウル画廊)に彫陶を出品します。

    同年 「京都野外彫刻展」に彫陶を出品しています。

   1975年 滋賀県造形集団の結成に参加し、「第一回野外彫刻展」を大津市長等公園で開催します。

   1978年 「現代の工芸作家展」(京都市美術館)に出品します。

   1981年 「第一回びやこ現代彫刻展」の、企画実行に参加します。

   1983年 「’83陶磁器デザインコンペティション」(日本陶磁器意匠センター主催)で、銀賞を受賞します。

   上記以外にも、数多くの個展を開催しています。

    ギャラリー射手座(京都)、紅画廊(京都)、カビーナ志野(大阪)、ギャラリーマロニエ(京都)、

    ギャラリー紅(京都)などで、開催しています。

 ② 川越氏の陶芸

  ) 彼の仕事は彫刻から出発しています。それ故、彼の視点は現代の立体的な造形にあります。

     しかし、八木一夫氏や鈴木治氏の流れではなく、戦後に辻晋吾(しんご)氏が始めた、土の

     造形への挑戦に、強く影響されたと言われています。辻氏は従来の陶芸的常識と異なり、

     無謀とも思える大胆で奔放な作品で、数々の国際展で活躍していました。

  ) 川崎氏の作品は、幾何学的形態を基調にしていますが、「冷たさ」や「とり澄まし」などの観念的、

     抽象的な立体造形ではなく、「生々しさ」や「艶やかさ」のある作品で、一種のエロティシズムの美が

     見受けられます。

    ・ 「ロマンチシジムの編み」(高 112 X 横 121 X 奥行26cm)(1977年):「結び目シリーズ」

      全体にはハート型の作品で、その中央部分には、土製の紐が編み込まれた作品です。

   ・ 「結界(けっかい)」(高 90 X 横 57 X 奥行 18cm)(1979年):「結び目シリーズ」

     縦長の四角い箱の中央部が丸くくり貫かれ、土製の紐が絡み合っている作品です。

   ・ 「ふたまたぐもⅠ」(高 116 X 横 119 X 奥行 30cm)(1982年)

     立った二体の人物が、接吻している様に見える作品です。表面には緩やかな凹凸があり、

     上部は頭の様に丸みを帯びています。オレンジ色の本体には、黒色で、雲、蝶、唇などの様な

     模様が描かれています。  「ふたまたぐもⅡ」(1982年):同様の作品ですが、一方の人体が

     浮き上がっています。 

   ) 彼の作品のほとんどは、手捻りによる作品で、時には型を使用する場合もある様です。

    ・ 土は、数種類の信楽の粘土をブレンドし、シャモット(焼粉)を適量加えています。

    ・ 焼成は、ガス窯と電気窯を使っています。

      大物や火色を出す為には、ガス窯を使っています。小型の作品や黒陶の場合は、電気窯を

      使用しています。

    ・ 彼の黒陶の技法は、成形後、乾燥途中で念入りに磨きあげ、低火度(810℃程度)の釉が

      掛けられ、500℃程度に温度が下がったら、松の葉を窯に投入し窯を密閉して、黒色を

      出します。、

      「大地の墓標」(高 89 X 横 600 X 奥行92cm)(1972年)

       凸型の黒陶の作品で、縦の部分が三段のハートの様な形で、6個が平行に置かれた

       一組の作品です。

      「W’83-6黒陶に朱」(高 70 X 横 70 X 奥行30cm)(1983年)

       ハンドバッグの様な形の作品で、縁が波打ち、朱色の溝の線が輪郭(縁)に沿って彫られて

       いる作品です。

  ) 「陶芸的」な作品も作っています。

     1974年には志野陶石による「傘立」を造る様になります。

     1975年の「信楽陶芸展」では、大賞を受賞しています。

 次回(林康夫)に続きます。      

コメント
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