ほわみ・わーるど

超短編小説会にて短編小説を2013年より書き始めました。
これからも続けていきたいです。

不機嫌な時代

2016-10-31 09:27:13 | 創作
 早苗はいつもどこか頼りない。やや太っているので、きびきびしたとこもなく、中年女にありがちな、よっこらしょの女性である。 

 ただいささか、お節介なところもあり、視覚障害の人に会うと、一緒に行けるとこまで行こうという気になってしまう。

 この間も知り合いの目は見えないが、しっかりと歩く川口さんと夕方いっしょに山手線に乗った。夕方の人込みでは、いくら慣れているとはいえ、歩きにくいだろうと考えてしまう。

 その日は金曜日でやはり中年の視覚障害の久保田氏も一緒になった。彼はやはり池袋まで用事で行くとのこと。なんかハッピーな会合があるようだ。3人で山手線に乗り、二人は同じ出口から出るというので、早苗は一瞬改札口まで送ろうとした。

 しかし川口さんは「ありがとう」と言って改札口までしっかりと久保田氏の手を肩にかけ、しっかりした足取りで白杖を使って歩いて行った。

 その後ろ姿は頼もしくて、自信に満ちていた。

 ときどき早苗は考える。まわりにいる障がい者は優秀だし、たくましい。決して障害に負けてはいない。健常者の自分の方が、未熟で、いろいろなことにとらわれて不機嫌である。

 川口さんのマラソンで鍛えた身体がすごくまぶしく思えた瞬間であった。


(超短編小説会10月同タイトル参加作品)
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