MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

何も足さない

2016-10-03 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
もう20年以上、秋から冬にかけて、会社の健康診断を受けています。

今回の診察はおしゃべり好きな高齢の先生でした。
ただ、お話の中で、ちょっと気になったことがありました。

「鎮痛剤はね、使わないほうがいいのよ。
私は頭痛とか肩こりなら鎮痛剤を使わなかったから、今でも元気なの」と。

たしかに先生はお元気だとおもいます。
でもそれは鎮痛剤を使わなかったからだけではありません。
例えば、強い痛みを慢性的に抱えている人に
そんなことを医師が言ってもいいのかなと思いました。
ましてや、はじめてお会いした健康診断の医師です。
私の持病や体質についてご存知なわけではありません。
それに薬は医師の指示で適切に使うことが大切なのではないでしょうか。

人は誰かが病気になると、その原因を決め付けたがります。
「がんになったのは○○をしたから」
「認知症になったのは○○を食べたから」
だから自分はそうしなければ大丈夫と根拠のない安堵を得ようとします。
そのことが、時に患者や家族を傷つけます。

最近「人工透析をしているのは
お酒を飲んで、ひどい食生活を直さないから自業自得」と書いたブログが炎上しましたが、
お酒を飲まなくても、きちんとした食生活をしていても人工透析になるし、
無茶な生活をしていても人工透析にならないひともいます。
もちろん、過度な飲酒や喫煙がよくないことは言われていますが、
病気というのはそんなに単純なものじゃないと思います。

何がいいたいかというと、
医療の現場で、専門職や影響力のある人の発言は
患者や家族を追い詰めてしまうことがあるという自覚が必要ということです。

医療通訳の中で
「何も足さない 何も引かない」ということが言われますが、
これは機械翻訳のようにやれといっているわけではありません。
こうした個人の主観を
もし医療通訳者が患者や家族に伝えたとしたら
患者や家族はどうしても影響を受けてしまうでしょう。

医療通訳者が勝手な主観を足すことで、
診断や治療に影響を与えてしまう存在であるということを
強く意識しておかなければなりません。

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