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身をもって知った現実 「海外エッセー 世界の街から」

【出所:2017年5月18日 共同通信社】

 中国上海の自宅で就寝中、腹部に不快感を覚え嘔吐(おうと)を繰り返し、未明に近くの総合病院の救急部門に駆け込んだ。

 中国の病院は医療ミスで恨みを持った患者が医者に暴力を振るう事件が頻発するなど良いイメージはないが、日系の病院は夜間対応がなく、わらにもすがる思いだった。

 夜勤の若い医師は聴診器を当てるでもなく、触診をするでもなく、ただ血圧を調べただけで、血液検査を指示し、点滴を受けることになった。ずさんな対応に腹が立ったが、苦しくて抗議する気力もない。ベッドで点滴を受けて夜が明けるまで持ちこたえようと自分を励ましたが、甘かった。

 点滴用の部屋では20人超の患者が椅子に座って点滴を受け、わずかなスペースに置かれたベッド数台には血を流した老人ら息も絶え絶えの重症者が横たわっていた。座って点滴を受けていると、その老人の周辺が騒がしくなり、老人は運び出された。周囲からは「死んでしまった」との声が相次いだ。「朝が来て早くここから抜け出したい」。苦しみが増す中、私はそれだけを考えていた。

 結局、外国人も多く通う別の病院で受けた診断は虫垂炎。手術を受け、今はすっかり良くなった。

 中国の病院関係者によると、中国では医師による患者への寄付要求などの問題が深刻。救急は金銭的な魅力がなく、やる気のない医師が多い。

 中国ではお金がなければ、検査まで数日待たされることもあるという。もし私が外国人でなく、地方から来た貧しい出稼ぎ労働者だったら...。治った今だから言えるが、庶民が直面する厳しい現実を身をもって知る、忘れがたい夜になった。(上海共同=一井源太郎)
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