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論文、バイエル社が下書き 医師名で発表、営業に活用

【出所:2017年4月20日 朝日新聞】

 製薬大手バイエル薬品の血液を固まりにくくする薬をめぐり、会社の患者調査に協力した医師が発表した論文2本を、同社が事実上代筆していたことが19日、関係者への取材でわかった。論文は2本とも昨年撤回されている。

 同社は、患者への調査主体が同社だと明確にされていなかったことや、患者のカルテを社員が不適切に閲覧したことなどが論文撤回の理由だとしている。この社員によると、同社は営業活動にこの論文の内容を活用していたという。

 この薬は抗凝固薬。心臓の一部が細かく震える心房細動の患者で脳梗塞(のうこうそく)を防ぐために使われる。同社は2012年4月に「イグザレルト」を発売。同年、宮崎県のある診療所の医師に協力してもらい、患者計約180人に抗凝固薬を1日に飲む回数や飲む数などについて好みを調べた。

 論文は国内の医学誌に12年と13年、診療所の医師の名で発表された。いずれも患者が「1日1回の服薬」を好む傾向があるなどとする内容。イグザレルトは1日1回服薬だった。13年の論文は同社が学術的助言をし、論文作成、投稿の費用を負担したと記されていたが、2本とも筆者に会社関係の名前はない。

 この医師を担当し、カルテを見た社員によると、同社がデータを集計、原稿を下書きした。社員は「原稿を医師に見せて、数カ所直してもらった。会社が論文を書いていることにあぜんとした」と話す。

 医師の代理人弁護士は取材に、同社が作った下書きを医師が了承したことを認めたうえで「製薬会社と協力して論文を作るのはこの業界では当たり前。医師は内容はきちんと確認している」と説明した。バイエル広報本部は「事実関係を確認中」「関係者の同意が得られていないのでコメントできない」などと回答した。

 この社員を含む3人が、調査に応じた患者のカルテを診療所で無断で閲覧していたとして、同社が10日に謝罪している。社員は取材に「カルテの閲覧は上司の指示だった。やりたくなかったが聞いてもらえなかった」と語った。

 ■論文使い販売促進、医師の処方に影響

 桑島巌・臨床研究適正評価教育機構理事長の話 製薬企業が論文作りに関わることは、その企業に有利な結果を導き、真実を反映していない結果になる恐れがあるので問題だ。さまざまな形でなされているのが実態だろうが、企業主導でできた論文なのに医師が書いた体裁となり、販売促進材料に使われると、医師の処方の動機に影響が及び、患者にとって適切な選択にならない可能性がある。
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