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(がん新時代:86)若さゆえの悩み、どう支援 進学は、仕事は、結婚は

【出所:2017年3月19日 朝日新聞】

 ■がんと暮らし

 若い時にがんを発症した「AYA(アヤ)世代」と呼ばれる患者への対策が課題になっている。がん患者全体に占める割合は小さいが、希少がんを含めがんの種類は多い。進学や就職、結婚、出産など人生の節目に直面し、ほかの世代とは違った悩みを抱えている。

 ■治療・相談の充実、国が議論

 東京都内に住む齊藤太樹さん(32)は9年前、足に点状の内出血があるのに気付いた。11歳で慢性骨髄性白血病にかかったが、骨髄移植を受け、症状は落ち着いていた。看護師になり1年ほどで仕事がひと通りできるようになったと思った矢先に、働いていた病院で検査を受け、今度は急性リンパ性白血病と判明した。

 「5年生存率も知っていた。半分の確率で死ぬと覚悟した」。一方で、入院中に見舞いに来た看護師の友人の話に「自分がベッドで寝ている間も仕事しているんだ」と孤独さを感じた。
 臍帯血(さいたいけつ)移植を受けて1年後に復職。「一からやり直しか」と再び働く中で、自分の将来に目を向ける気持ちになった。30歳を機に、がん専門看護師の認定を目指して大学院で学び始めた。「当時は自分のキャリアが終わったと感じたが、あの入院で自分の進むべき道が固まったと今は思える」

 AYA世代とは、思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult)を組み合わせた言葉で、主に15~39歳をさす。がん患者全体に占める割合は2・5%と高くないが、小児から成人への移行期にあたるため、がんの種類が多岐にわたる。25歳未満では白血病など小児に多いがんや脳腫瘍(しゅよう)などの希少がんがみられ、25歳以上で子宮頸(けい)がん、30代で乳がんや大腸がんなど成人に多いがんが増える。治療法が確立されていない部分もあり、ほかの世代に比べて治療成績の向上が遅れているとの海外の報告もある。

 国でもAYA世代の対策が今後の重要な課題として議論されている。今夏に閣議決定される第3期がん対策推進基本計画に治療や生活支援の充実のための施策が盛り込まれる見通しだ。

 ■「子どもを残せるか」

 AYA世代は様々な人生の節目に直面するため、悩みも多様だ。

 都内のIT会社に勤める男性(29)は3年前の秋、精巣がんと診断された。10万人に1人程度とまれだが、AYA世代に多い。すぐ入院し、片方の精巣の摘出手術を受けた。当初は「命が続くのか」と不安だったが、転移がなかったことで「子どもを残せるのか」「結婚できるのか」と心配になった。

 ネットで知り合った同世代の患者や医学部に通う友人らに相談。再発の可能性を下げるための化学療法は受けず、経過観察を選んだ。生殖機能への影響を避けたいと考えた。

 厚生労働省の研究班は昨年、AYA世代のがん患者・経験者計約500人にアンケートを実施した。主な悩みは「今後の自分の将来のこと」が全体的に多いが、15~19歳の6割は学業を挙げ、それより上の世代は仕事が多かった。また、20歳以上の患者の4~5割は治療費など経済的な悩みも訴えた。不妊や生殖機能への悩みも25~29歳の半数、30代の4割が抱える。

 大阪市立総合医療センターは2年前にAYA世代支援の対策委員会を設けた。医師以外に臨床心理士、ソーシャルワーカーらが様々な診療科に点在する患者の相談に応じる。原純一副院長は「医師以外の身近な人には不安を打ち明けてくれる場合もある」と話す。

 ただ、診療経験が少ない病院では、AYA世代の悩みへの十分な対応は難しい。研究班は昨秋、診療数が多いがん診療連携拠点病院を中心に「AYA診療拠点」の指定や相談窓口の周知などを提言した。

 研究代表者の堀部敬三・名古屋医療センター臨床研究センター長は「院内外の支援スタッフが充実した拠点を設け、診療数の少ない病院のAYA患者を連携して支援する態勢をつくることが重要だ」と指摘する。

 ■患者同士、経験分かち合う

 インターネットなどを通じて積極的な情報発信や交流に取り組む患者も多い。

 患者団体「STAND UP!!」は交流会や年1回のフリーペーパー発行を手がける。昨年度、ネットで情報発信するAYA世代を中心にした患者約100人にアンケートを実施したところ、3分の2は自身の治療経過を知らせていると回答した。7割がフェイスブック、5割がブログを活用していた。「患者同士でつながれた」「気持ちを整理できた」などと答える人が多かったという。

 ウェブサイト「がんノート」は若い患者へのインタビューを生中継でネット配信している。「STAND UP!!」でも活動する岸田徹さん(29)が、AYA世代の患者に治療や仕事など様々なことを尋ねる。

 岸田さんは5年前、精子や卵子の元になる細胞のがん「胚(はい)細胞腫瘍」と診断された。手術の後遺症で射精障害に悩んだが、なかなか役立つ情報を得られなかった経験からサイトを立ち上げた。「性やお金の問題などセンシティブな話題もユーモアを交えながらきちんと取り上げるようにしている」。中継後は参加者らが交流する場も設けている。

 岸田さんは「AYA世代の患者に『一人ではない』と伝え、将来に見通しを持ってもらいたい。また、若くしてがんになる人がいて仕事や結婚などいろいろな課題があることを多くの人に知ってほしい」と話している。

 ■(アピタルがんインタビューから)テーマ:がんと食事 手術のあとは少しずつ元に 飯島正平さん

 がん患者にとって治療中の食事は悩みのひとつです。手術の影響や治療の副作用で吐き気だけでなく、味覚が変わり、これまでのような食生活を送れなくなることがあります。がんになったときの食事のポイントを、飯島正平医師に聞きました。

 がん治療で味覚が変化する原因は様々です。舌や咽頭(いんとう)への放射線治療で直接照射を受けた組織に影響が出るだけでなく、舌の表面で味を感じ取る「味蕾(みらい)細胞」が抗がん剤などによる治療で影響を受けることもあります。味蕾細胞にかかわる「亜鉛」は短期間の食事摂取量の減少で不足しやすいことも考えられます。

 飯島さんは「がんの切除手術をして体の構造が変わっても、人間はその構造変化に対して適応する能力をもっているので、手術後は少しずつ食事も元に戻していくことが大事」と話します。治療による食欲不振が続く際は「あっさり、さっぱり感」のある食事をすすめています。

 一方、ネット上などの「○○の食品で△△がんが治る」という情報には注意が必要です。「研究は進められていますが、特別にがんに効く食品は見つかっていません」と飯島さん。「おかずを中心に魚を基本としたたんぱく質や脂質のほか、ビタミンや亜鉛などをまんべんなくとってほしい」と助言します。

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 大阪府立成人病センター(25日から大阪国際がんセンター)緩和ケアセンター長・栄養腫瘍科主任部長。専門は消化器外科、代謝・栄養学。
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