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(患者を生きる:3304)我が家で 腹膜透析:3 1日4回、自室で作業

【出所:2017年5月17日 朝日新聞】

 がんで左右の腎臓を失った福岡県田川市の吉田秀文さん(66)は、血液透析を10年続けた後、自分で透析の作業ができる、腹膜透析を主に使うことを決めた。2016年5月、田川市立病院で、左の脇腹に直径5ミリのカテーテルを通す手術を受けた。

 透析は1日に4回、自分の部屋で作業する。マスクをつけて手を洗い、脇腹から出ているカテーテルの先端に、専用のバッグをつなげる。古い透析液を排出するための排液バッグだ。

 いすに座ると、排液バッグを床に置いた。落差を利用して、おなかに入れてあった透析液を流し込む。にごりなどの異常がなく、透明であることを確かめ、「記録ノート」に記入した。「よし、1800グラムだ」。

 次は注液だ。カテーテルにつながった排液バッグを外し、透析液バッグにつなぎ替え、ポールハンガーの高い位置につり下げた。中には、ブドウ糖や塩分を含んだ新しい透析液1500グラムが入っている。カテーテルを通じて、おなかの腹膜に覆われた腹腔(ふくくう)と呼ばれる内臓のすき間に入れる。

 排液量と注液量の差が、尿にあたる。「300グラム」。吉田さんが記録した。

 腹膜透析を始めた当初は、うまくいかなかった。15年5月の記録ノート。「△220、△162、△166……」。マイナスの数値が並ぶ。体内から排出される透析液より、体内へ入れる量のほうが多いことを意味する。体重が増えて、身体もむくんだ。「腹膜透析なんて、やらなきゃよかったのか……」

 吉田さんは不安にかられたが、周囲には気持ちを隠した。卵巣がんと闘病する同級生の友人(66)を大学病院へ送った時には、「腹膜透析にしたら、車を運転する時間もできたぞ。お互いに頑張ろうな」と励ました。

 友人に「ご主人は偉いわね」と感謝され、妻の彰子さんは答えた。「人に負けたくないって意地が、闘病を支えているの。『ええ格好しい』なのよ」

 主治医の大仲正太郎さんは静かに見守っていた。「安定するまで1週間ほどかかるのは、よくあることです」。ほどなくして、数値は落ち着いた。
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