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赤ちゃんポスト、命守るには 熊本の病院、母子の孤立防ぐ取り組み 神戸の計画は当面見送り

【出所:2017年4月5日 朝日新聞】

 実親が育てられない子どもを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を神戸市の助産院に設置しようとしていた計画が3月、安全面などから当面見送られました。望まない妊娠や生活困窮などの理由で孤立する母と宿った命をどんな態勢で支援するのが適切なのか――。2007年に全国で初めて赤ちゃんポストを設置している熊本市の慈恵病院の取り組みから考えます。

 07年5月にポストを置いた慈恵病院(熊本市)は、熊本市の中心部から車で約15分。ひっそりとした病院の裏道の門をくぐり、約4メートルのスロープを歩くと、ポストがある。そのすぐ隣には、相談を促す看板とインターホンも設置されている。

 二重扉を開け、子どもが預け入れられると、新生児室などにあるブザーが鳴る。すぐに2人以上の看護師らが駆けつけて子どもを保護。常駐する医師が診察しながら、他のスタッフは警察と児童相談所にも連絡。必要な時は親の相談にも乗る。

 熊本市によると、15年度までに預けられた子ども125人のうち、医療行為を必要としたのは29人。この割合は、近年増え続けている。

 ■大半が未受診で出産

 また、自宅や車中で出産し、預けるケースも目立つ。14、15両年度にポストに預けられた計24人のうち20人にのぼり、その大半が未受診での出産だった。

 開設から14年3月までに預けられた101人を分析した市の検証報告書によると、預けた理由は「不明」が25・7%。次いで「生活困窮」21・8%、「未婚」と「世間体(を考慮)・戸籍に入れたくない」が各17・8%だった。障害のある子も約1割にのぼった。

 ポストについての法律は整備されていない。だが、実親が匿名で赤ちゃんを預けても「保護責任者遺棄罪」に抵触しないのは、病院が安全で、子どもの健康を維持できる施設だと、県や市、警察などが解釈しているからだ。病院との連携は10年を迎える今も密接だ。

 関西でのポスト設置を目指しているNPO法人「こうのとりのゆりかごin関西」では、「常駐の医師が不可欠」との神戸市の指摘を受け、ポストの設置は当面見送り、相談業務だけに絞る計画の変更を3月3日、市と厚生労働省に伝えている。

 慈恵病院の蓮田健(たけし)副院長(50)は訴える。「匿名で命を守る受け皿を増やす必要はあると思う。だが法整備もなく、親に対する自己責任を求める傾向が強い日本でポストを責任を持って続けるには、情熱、関係者の覚悟、周囲の理解が必要だ」

 ■切迫した相談に対応

 慈恵病院では、ポストはあくまで「最後のセーフティーネット」と位置づけ、むしろ、そこに至るまでの相談業務に力を入れてきた。

 フリーダイヤルで、11人の看護師や助産師が24時間相談を受けている。病院負担は年間約1千万円。

 病院への相談件数は、15年度は5466件に増えている。逆に熊本市への相談は、07年度の732件から15年度は308件に減っている。

 ひとりで夜中に出産。放心状態で電話相談した若い女性。障害児を育てられないと思い悩み、電話相談の中で育てることを決めた母親……。

 相談員の平田直美さん(38)は「ゆりかご(ポスト)という安心のシンボルがあると相談しやすく、命を守る支えになっている。だからこそ、その期待や信頼を裏切らないよう、切迫した相談にも十分に対応できるスキルと連携先がないと責任持って対応できないと思う」と話す。

 ■「国は見解示し、対応を」 専門家

 熊本では、預けられた125人のうち29人が身元が分かっていない。ポストで子どもの命を守っても、「出自を知る権利」を奪うという課題が残る。

 参考になるのは、慈恵病院がモデルにしたドイツだ。

 新生児の遺棄や殺害を防ぐため、00年からキリスト教の団体が、保育所や病院など約110カ所に相談とセットでポストを設置している。世論の賛否が分かれる中、国として、14年に赤ちゃんの命と子の権利を守るため、妊娠支援の拡充と「内密出産」を導入した。母親は実名で相談し、医療機関では匿名で出産。子どもは16歳になると、原則出自を知ることができる。

 慈恵病院への設置当初からすべてのケースを検証してきた熊本市専門部会長の山縣(やまがた)文治・関西大教授(児童家庭福祉学)は「慈恵の取り組みが5月で10年を迎える。匿名性を担保しないと救えない命に対して、国は自治体任せにして静観するのではなく、設置のあり方について見解を示し、適正ならば法整備をし、不適切だと判断するなら対応する施策を検討すべきだ」と指摘する。

 しかし、厚労省家庭福祉課は「賛否がある中で熊本の事例を現時点で一般化して国の政策を進めることはできない。妊娠期からの切れ目ない相談業務のより一層の充実をはかりたい」と距離を置く。
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