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HIV治療「1日1錠」に 月1度の注射薬も開発中

【出所:2017年5月17日 朝日新聞】

 エイズウイルス(HIV)感染の治療薬の進歩がめざましい。1日に20錠必要だった飲み薬は1日1錠が可能になり、飲み続ければ健康な人とほぼ変わらない生活を送れるようになった。数年後には月1度の注射薬も世に出る見込みだ。専門家は「感染がわかれば早期に治療を」と促す。

 NPO法人「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」(東京都)代表の高久陽介さん(41)は朝1錠、夜2錠のエイズ治療薬を飲んでいる。2005年に薬を飲み始め、半年ほどでウイルスは検出されなくなった。だが睡眠障害の副作用に悩まされた。

 08年、新しく出た薬に切り替えると睡眠障害は消えた。「自分に合う薬が出て助かった」

 かつて「死の病」と言われたエイズは、1990年代後半から薬でウイルスの活動を押さえ込めるようになった。作用の違う薬を組み合わせて飲む多剤併用療法で、HIV感染者の免疫機能を保ち、エイズの発病を止められる。だが当初は約20錠を1日数回に分けて飲む必要があり、重い副作用が起きることもあった。

 「命が大事で副作用は二の次。飲み方もこれは空腹時に、これは食後に、と複雑で大変だった」と国立国際医療研究センター(東京都)の岡慎一エイズ治療・研究開発センター長は言う。飲み忘れなどで薬の効かないウイルスが増え、薬の切り替えが必要になることもあった。

 現在の治療は厚生労働省研究班の指針によると、主役の薬1種類に補助の薬2種類を加える併用療法が中心。複数の薬を1錠にまとめるなどの工夫で05年ごろに1日1回、13年から1日1回1錠が可能になった。

 主役の薬は、HIVが持つ酵素に働きかけてウイルスができるのを防ぐ。標的にする酵素の違いで、00年ごろから3段階で変わってきた。「HIVが増えると変異が起きて薬への耐性を持つが、非常に強く抑えて増えることができないため、耐性ウイルスは現れなくなった」と岡さんは言う。

 第1弾の薬は1日1回を可能にしたが、めまいやうつなどの副作用がありあまり使われなくなった。第2弾は糖尿病や脂質代謝異常などになりやすくなるが、耐性ウイルスが出にくい。第3弾の薬は今のところ重い副作用はない。

 現在、1カ月に1回、2種類の注射を打つ治療薬の臨床試験が国内外で進行中だ。1週間に1錠ですむ薬も海外で開発が進み、数年内には世に出る見込みだ。

 「毎日飲むのは大変なのでありがたい」と高久さんは新薬に期待する。

 ■重い負担、治療の壁に

 いつ治療を始めるか。薬の副作用が重かった時代には議論があった。その後、感染が分かってすぐ治療を始めた方が、死亡率やエイズの発病率が低くなるという結果が海外の臨床試験で出た。感染判明後、早期に治療を始めるのが今や、国際的な常識だ。

 だが、国内では治療費の負担を下げるため、治療の開始を遅らせる感染者がいる。背景にはHIV感染が身体障害として認定される制度がある。HIVが壊す免疫細胞「CD4陽性リンパ球」の値が一定以下になるか、ウイルス量が一定以上になるなどの条件を満たすと認定される。治療薬の費用は月約20万円で3割負担でも大きい。障害が認定されれば、収入に応じて5千円、1万円などと負担は大幅に減る。

 国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨・HIV/AIDS先端医療開発センター長は「収入の少ない若い感染者らにとっていい制度だが、高いCD4と少ないウイルス量の場合には、病状が進行し、障害認定を得るまで治療に踏み切れない人が一部にいる」という。

 治療を始め、ウイルス量が減って検出限界以下になると、他者に感染させるリスクは非常に低くなる。「自身のためにも、パートナーのためにも、早めの治療が大切」と白阪さんは話す。
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