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寄り添いと摘発の間で 引き裂かれる現場 核心評論「生活保護差別ジャンパー問題」

【出所:2017年4月19日 共同通信社】

 神奈川県小田原市の生活保護担当職員が受給者を見下すような言葉をプリントしたジャンパーなどを作製し着用していた問題で、市が設置した有識者検討会は先ごろ報告書をまとめ、市長に提出した。

 あらためて明らかにされたのは自治体の担当部署が、大きなストレスにさらされている現状だ。もちろん、ローマ字や英文とはいえ「保護なめんな」「不正受給はクズ」などと記されたジャンパーを着て業務に当たっていた職員に人権意識が欠けていたことは非難されて当然だ。

 一方で、本来は職員にとってやりがいとなるはずの「利用者(受給者)の自立」が難しかったという未達成感が「(不正の)摘発」に傾斜させたのではないかという報告書の指摘は示唆に富む。

 人々に「寄り添う」といういわば性善説の対応を基本としながら、不正を「摘発」するという性悪説に基づく対応も強いられる。相反する業務の間で職員たちは引き裂かれていたということだ。今後は、二つの業務の担当を分離することが検討されてもいい。

 また、問題のジャンパーが2007年から10年にわたって着用されながら見逃されていたことも重大だ。生活保護担当の部署に対しては、市役所全体の中でも関心が払われず、担当者が孤立していたのではないかと疑わせる。役所ですらそうなら、一般社会の保護に対する認識は推して知るべしだ。ことは小田原市にとどまらない。

 今後、同様な事態を引き起こさないためには、生活保護が憲法25条の「生存権」に基づく権利だという認識が国民の間で共有され、担当者が自信を持って寄り添いに当たれる環境をつくる必要がある。その前提として、不正を過度に強調するバッシングは排除されなければならない。

 不正受給は15年度に4万3938件、金額では169億9408万円と発表されている。子どものアルバイト収入の申告漏れなど悪質とは言い切れないケースも含まれており、1件当たりでは38万7千円と厚生労働省が把握する1997年以降では最低だった。

 不正は許されるものではないが、4兆円に迫る保護費全体の中では微々たるものだ。専門家の間では従来、保護されるべき人々に支給されない「漏給」がむしろ問題とされている。不正だけに注目するのは、本末転倒だ。

 小田原市は今回、検討会メンバーに受給経験者を加え公平性を確保した上、会議を公開して透明性を高めた。行政チェックのモデルケースとして評価できる。その意味でも、自治体を「喜びと悲しみを分かち合うプラットフォーム」と位置付けた報告書の精神が広く知られることを望みたい。(
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