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(奈良)危機感 全職員で共有<県立病院機構>

【出所:2017年5月15日 読売新聞(奈良)】

 ◇経営改善 ようやく本腰

 債務超過の地方独立行政法人・県立病院機構が、収支改善に向けた取り組みに躍起だ。県直営から独立法人へ移行した2014年度から毎年赤字を計上し、累積赤字は51億円を超す。来春には、建て替え工事中の県総合医療センターの新病院が、奈良市七条西町にオープンする予定で、経営改善が急務となっている。

   ■意識改革

 「5月11日 前日稼働率5階北100%、ICU37・5%……」

 同市平松の同センター2階にある医局近くの廊下に、倉庫で眠っていた1台の古いホワイトボードが置かれたのは4月中旬のことだ。1日3回更新される入院者数などの書き込みに、通りかかった医師や看護師は足を止め、最新の数字を確かめる。

 病床の稼働状況を事細かにチェックすることで、病院の経営に対する職員の意識を変えようという試みだ。大峯朝記・事務部長は「職員全員が現状を把握し、危機感を共有することが大事」と、狙いを説明する。

 同センターなどを運営する県立病院機構の経営改善策は、今年に入ってから本格化した。

 これまで各病院に勤務する看護師や薬剤師らに月額4000~5000円支給していた「病院勤務手当」を、4月に廃止。県によると「他県ではあまり見られない手当」だという。

 さらに、勤務する医師の給与に上乗せしていた「初任給調整手当」も減額。多くの医師は、月額約5万7000円カットされた。両手当の廃止や削減で、17年度は8200万円の経費削減につなげる。

 こうした改革を主導する県病院マネジメント課の岡本真昭参事は「今後、医師には業績評価を導入し、県立病院時代から据え置きになっていた給与体系の見直しにも着手したい」と話し、厳しい表情で付け加えた。「そうしないと、本当に病院を維持できなくなってしまう」

   ■赤字の構図

 同機構は同センターのほか、県西和医療センター(三郷町)、県総合リハビリテーションセンター(田原本町)などを運営する。県は独法化の際に16億円を出資。その後も毎年運営費を負担し、昨年度は18億円をつぎ込んだ。

 しかし、支出は想定を上回り、1年目の14年度は29億円、15年度は22億円の赤字を計上。負債額が資産総額を上回る債務超過の額は、15年度末で約35億円に上り、その後も増加に歯止めがかかっていない。

 独法化の狙いは、現場の裁量を広げて経営の効率化を進め、支出を減らすことだった。皮肉なことに、その独法化が赤字を招く結果となった。

 県の直営だった時代は収支不足を県が穴埋めしていたため、各県立病院の決算が赤字になることはなかった。独法化後、県が自動的に穴埋めすることはできなくなり、赤字が顕在化した。だが、それだけではない。

 来春、新病院へ移転する県総合医療センターでは、最大110床増の540床になる。これを見越して医師や看護師を増員した結果、人件費が膨れあがった。

 さらに現在の病院でも、古くなった医療機器の更新やトイレの改修などを行ったため支出が増大。県病院マネジメント課は「収入に見合った支出ではなかった。赤字の原因は小さな支出の積み重ねだ」と分析する。

   ■課題と懸念

 4月からは診療部長を管理職とし、超過勤務手当の削減を図っている。

 医師の中にはこれまで、論文の執筆や学会発表の準備など、診療以外の目的で残業し、手当を受給していたケースもあったという。本来の手当の趣旨とは違うとして改める方針だ。

 しかし、こうした様々な見直しには、優秀な医師や医療スタッフが病院から去り、人手不足に陥るリスクも伴う。

 センターに勤務する医師からは「地域医療のため懸命に頑張っているのに、手取りが一方的に減らされ、内部では不満が募っている。別の病院に移りたいと思っている者もいる」との声も聞かれる。

 県病院マネジメント課は「人件費削減などの大きな改革と、基本を大切にする小さな努力の積み重ねを大切にしたい」と強調。機構の榊寿右理事長は「医師らの理解を得ながら、公的病院として県民を守ることを約束する病院に育てたい」としている。
 
 ◇安心できる拠点に

 県立病院機構が赤字を計上し、債務超過に陥っていることを報じた昨年12月以降、機構の病院に勤める医師らから手紙やメールで反響が届いた。県民の命と健康を守るという使命を果たすため、身を削って医療に取り組んでいるスタッフが数多くいることを、改めて知った。

 我が家の双子の息子は、県総合医療センターで生まれた。昼夜を問わず献身的に治療にあたり、患者や家族に寄り添う医師や看護師らの姿を間近に見てきた。

 新病院の開院を機に、何としても経営を立て直し、安心して暮らせる奈良を支える拠点になってくれることを願っている。
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