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国保保険料 統一進まず 本社調査、「検討」9府県どまり 市町村格差が壁

【出典:2017年8月17日 日本経済新聞】

 国民健康保険の運営主体が来年4月に市町村から都道府県に移るのに合わせ、保険料の統一を検討している都道府県は9府県にとどまることが日本経済新聞の調べでわかった。今は市町村ごとに異なる保険料を統一すれば、住民の負担が公平になるほか、実質的に保険料を上げることになり、財政の安定につながるとみられる。ただ都道府県内の保険料格差が大きいところほど統一は難しい状況で、国保財政改善のハードルは高い。

 47都道府県を対象に、7月時点の国保の今後の運営方針についてアンケート調査をした。

 現行では地域によって被保険者の所得や年齢、医療費などに偏りがあるため、同じ都道府県内でも市町村の判断で保険料に差が生じている。国は運営の移管に合わせ、都道府県が地域の実情に応じて保険料の統一を選択できる仕組みにした。

 保険料統一を「具体的に検討している」と答えたのは宮城、山梨、富山、静岡、滋賀、大阪、奈良、広島、佐賀の9府県。市町村と合意し、早期に保険料統一の準備を進める段階に入っている。9府県で統一が実現すれば、昨年11月時点で約3千万人に及ぶ市町村国保の被保険者のうち、2割弱の約550万人に影響が出る見通しだ。

 広島県は2018年度から激変緩和措置を設けたうえで24年にも保険料を基本的に統一する。県の試算では、国からの公費拡充を考慮しない前提で、1人あたりの年間保険料は12万9781円で、1万532円(8.8%)増える。市町によって最大12万円上がる世帯も出る計算だ。

 県の担当者は「病院に払う窓口負担はどの市町でも同じだが、保険料は地域で異なるのは公平といえない。所得に応じて負担する仕組みを目指す」としている。

 国保は赤字体質が慢性化し、国保の加入者でない住民の税金を含む一般会計から繰り入れて保険料を抑えてきた。広島の場合、統一後は繰り入れをやめ、国保に入っていない人の負担を減らす。繰り入れで保険料を低く設定する地域も多く、繰り入れをなくせば国保財政の透明化が進み、受益と負担のバランスを意識しやすくなる。

 大阪府は18年度から激変緩和を設け、6年以内の統一を目指す。2月にまとめた試算では、1人あたり平均保険料は年間13万2687円と約1万円(8.3%)増える。府内43市町村のうち37で上昇する見込みだ。

 滋賀県も「24年度以降のできるだけ早い時期」の統一を目標にする。残る6県は時期や保険料の試算は示していない。統一を検討するのは都道府県内の保険料格差が小さいところが多く、山梨を除いて格差は2倍以内。逆に格差が大きい都道府県は統一に慎重だ。

 保険料統一を「現段階で具体的に検討していない」と答えたのは東京都や京都府、愛知、福岡、沖縄県など31都府県。慎重な市町村が存在する場合や、統一を目指す意思があっても医療費や保険料などの地域差が大きく、当面難しいと判断するケースを含む。

 保険料の都道府県内格差が3.3倍ある東京都は「23区と、多摩地域や伊豆の島しょ部は医療費などの格差が大きく、直ちに統一するのは困難」と説明。保険料の格差が3.6倍と全国で最も大きい長野県も「統一は慎重に進める必要がある」としている。

 市町村と協議が始まっていなかったり、方向が定まっていなかったりするなど回答が難しい「未定」は7道県だった。

医療費抑制策も不可欠

 国民健康保険の保険料の統一は、保険財政の収入を増やす効果はあるが、支出抑制には別の方策が必要になる。統一後は保険料の算定で県全体の医療費を基準にし、これまでの市町村の医療費の違いは反映しないことになるため、市町村の医療費抑制への意欲が薄れる懸念もある。保険財政を立て直すには、医療費を抑制する抜本的な方策が急務だ。

 市町村に医療費抑制の意欲をどう持たせるかは保険料統一を検討する府県も検討する構えだ。大阪府は「保険料設定とは別の観点から医療費抑制に努める市町村への支援など対策を講じたい」と話す。広島県も「医療費適正化の効果を上げた取り組みについて市町と情報を共有し、被保険者の病気予防にも取り組んでいく」としている。

 保険料設定への住民の理解も必要だ。統一した場合、使う医療費が多い地域に住む人の保険料が安くなり、逆に医療費の少ない地域の住民の負担が増しかねない。

 保険料の上昇で払えなくなる人が増え、保険料の収納率が下がる可能性もある。高くなった保険料を支払う力のない低所得者の支援のあり方も課題だ。

 ▼国民健康保険

 市町村が運営し、加入者は自営業や農林水産業が中心で低所得層も少なくない。高齢者が多いため医療費がかさみ、2015年度は2843億円の赤字だった。赤字は市町村が一般会計から繰り入れ、税金で穴埋めしている。制度維持のため、18年度から財政基盤の強い都道府県に運営を移す。
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