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飼料に抗菌薬、2種禁止 耐性懸念で農水省 人の健康に悪影響も

【出典:2017年7月15日 共同通信社】

 家畜の成長を促進させるため、飼料に混ぜて使うことが認められているコリスチンなど2種類の抗菌薬について、農林水産省が飼料添加物としての指定を取り消し、使用を禁止する方針を固めたことが13日、分かった。薬の効かない薬剤耐性菌が家畜の体内で発生し、食品や環境を介して人に感染し健康に悪影響が出るリスクが無視できないと判断した。

 耐性菌による死者は、世界で年間70万人に上るとの試算もあり、2016年の伊勢志摩サミットで各国は原因となる抗菌薬の適切な使用を進めることに合意した。日本での禁止は合意後初めて。

 抗菌薬を健康な牛や豚、鶏の餌に少量加えて与えると、成長が早くなることがある。はっきりとしたメカニズムは分かっていないが、国内外ではこうした成長促進目的の利用が認められてきた。だが最近は、使い過ぎで耐性菌が生まれ、食品や環境を介して人にも広がる懸念が指摘され、欧州を中心に禁止する動きが広がっている。

 今回、取り消すのはコリスチンとバージニアマイシンの2種。審議会での検討を経て、本年度中にも正式に決める。コリスチンは人や家畜の感染症治療薬としても承認されており、治療目的の使用は引き続き認める。

 食品安全委員会は農水省の検討に先立ち、家畜に抗菌薬を与えた場合のリスク評価を実施。いずれの薬剤も家畜の体内で耐性菌ができる恐れがあるとした。耐性菌が人に感染すると、抗菌薬治療を受けても効果が弱まる可能性が否定できないなど、中程度のリスクがある。

 添加物として国内に流通するコリスチンの量は、15年度で約23トン。国が流通量を把握している中では全体の12%を占める。バージニアマイシンはゼロだった。同省は畜産農家への影響が小さくなるよう、代替物の開発などを進めたいとしている。

 コリスチンは多剤耐性菌に感染した患者を治療する際、医師が頼りにする「最後のとりで」として使われている。だが既に人の体内から耐性菌が見つかり、近い将来、あらゆる抗菌薬が効かない細菌が出現するのではないかとの懸念が出ている。

 ※薬剤耐性菌

 遺伝子の変化により、抗菌薬が効かなくなったり、効果が弱くなったりした細菌。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)などが知られる。人や動物への抗菌薬の使い過ぎによって世界的に拡大しており、放置すれば2050年に年間1千万人が耐性菌によって死亡するとの予測もある。世界保健機関(WHO)は今年2月、新薬の開発が早急に必要な耐性菌のリストを公表。特に抗菌薬カルバペネムに耐性を持つ菌は特に緊急性が高いとしている。
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抗菌ブーム、衛生・快適求め 健康狂想曲 第1章・ここまで来た/4

【出所:2017年3月22日 毎日新聞】

 <くらしナビ ライフスタイル>

 東京都新宿区の戸山図書館。生後9カ月の娘と訪れた女性会社員(39)は借りた本を持って、ある機械に向かった。電子レンジのような扉を開け、機械の庫内に本を広げ、立てて置く。扉を閉めてボタンを押す。庫内が青く光り、本のページが揺れる。30秒ほどで作業は終了した。

 ●図書館の本を消毒

 この機械は書籍消毒機。女性は「公共の物はどんな人が手にしたか分からないし、人の唾が飛んでいるイメージ。神経質にならないようにしてはいるが、きれいにできた方が気持ちがいい」と話す。

 書籍消毒機は2015年4月に導入以来、1日に20~30回ほど利用されている。紫外線で本についた菌やウイルスを殺し、消臭抗菌剤が混じった送風でゴミや臭いを取るという。大城澄子館長は「本の清潔さに安心感を持ってほしかった。感染症を気にする子供を持つ母親や高齢者に好評だ」と語る。消毒機を設置する図書館は増えつつある。

 埼玉県消費生活支援センターが、16年に10~70代の108人に行った除菌に関するアンケートで、菌に対するイメージを複数回答で尋ねたところ、1位は「なるべくいない方がいい」(57%)だった。「必ずしも有害とは限らない」(52%)、「気にしても仕方がない」(30%)と続くが、「体に害を与える存在である」は11%、「衛生上よくない。完全除去したい」は10%あった。

 日本社会で抗菌ブームといわれて久しい。日常生活にも、肌着やまな板、便器、ボールペン、エレベーターのボタンと、抗菌をうたう製品が浸透している。その市場規模は1兆円超といわれる。抗菌研究の第一人者である徳島大名誉教授の高麗寛紀さんは「人の衛生面を意識した抗菌加工は繊維が始まり」と話す。

 第二次世界大戦中にドイツの軍服に用いられ、戦傷者の2次感染を減らした。日本には1955年に米国から加工技術は入ったが、戦後復興期の社会でニーズは低く定着しなかった。

 その後、人々の生活に余裕ができ、清潔さや快適さが求められるようになって抗菌に関心が寄せられる。「安全性の高い加工技術の開発も進んだ80年代に登場した抗菌防臭の靴下こそ、日本の抗菌加工製品の先駆け」と高麗さんは言う。90年代に入り、耐熱性に優れた銀系の抗菌剤の誕生で用途の幅が広がり、住生活用品も加工されるようになった。その需要は、96年の病原性大腸菌「O157」集団感染を契機に高まった。

 ただ、高麗さんは「抗菌加工で、細菌やカビ、ウイルスといった微生物すべてを制御できるわけではない」と強調する。国のガイドラインでは抗菌を「製品の表面で大腸菌や黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖を抑える機能」としている。細菌を殺したり(殺菌)、取り除いたり(除菌)するのではない。カビやウイルスは対象になっていない。

 ●強まる「人」の警戒

 今、衛生意識が変化する中、小学生の4人に1人は、家族以外の人が作ったおにぎり(市販品を除く)を食べるのに抵抗を感じるという。ベネッセ教育情報サイトが、13年に小学1~6年生の保護者2472人に実施したアンケート結果だ。同様の調査を、清泉女学院大専任講師の石井国雄さん(社会心理学)が15~16年に長野県内の高校生や大学生、小中学校教員といった10~50代の計約300人にしたところ、3~4割が抵抗感を示した。「他人の握ったおにぎりへの抵抗感は、年齢が上がるほど高まる」と言う。

 抵抗感はどこからくるのか。石井さんは「病原体嫌悪のような生理的な衛生意識だけではなく、他人に対する信頼感や不安感も要因になっている」と指摘する。人間にはもともと病気にかかるリスクを避けようとする反応が備わっているという。現代社会はメディアなどを通し、インフルエンザ流行のニュースや、菌の排除を勧める製品広告のような感染症に関わる多くの情報に触れる機会がある。都市化に伴う人口の密集でその脅威を感じやすいのに、人間関係は希薄になっている。「菌やウイルスが目に見えない分、他人に対する過敏な反応につながるのではないか」と石井さん。自分が病気に対して弱いと思っている人ほど、その傾向は強まるという。

 「過剰な清潔志向は、体を守る有益な常在菌も排除してしまう」と注意を促すのは、東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎さん(感染免疫学)。ヒトの免疫機能の7割を担う腸に生息し、免疫力を左右する腸内細菌も常在菌だ。腸内細菌の種類や数が多いほど、免疫細胞が活性化され免疫力は高まる。腸内細菌の構成は個人差があり、その原点となるのが乳幼児期。赤ちゃんはなめることなどで、生まれる前は無菌状態だった腸内に、周囲の細菌を取り込んでいくという。必要以上に「身の回りの菌=ばい菌=汚い」と恐れ、赤ちゃんが接しないよう無菌状態にすればするほど、腸内細菌を育む機会もなくなる。藤田さんは「清潔すぎる生活環境が、先進国の子供に多く見られるアレルギー疾患につながるとも考えられている」と説明する。

 ●菌と適度に共存

 専門家が口をそろえるのは、菌との適度な共存の重要性だ。抗菌加工製品も、医療機関や介護施設のような免疫力の弱まっている人がいる場所などで使うのが的確という。使う目的や範囲を考えず、いつでもどこでも頼ればいいというものではないようだ。

 ●清潔さ保たれてこそ効果発揮

 抗菌加工の方法は製品により異なるが、抗菌剤を原料に練り込んだり、製品の表面にコーティングしたりする。抗菌効果は、一定時間後に未加工製品の表面と比べ、細菌の増殖割合が100分の1以下になっているという規定がある。

 高麗名誉教授は「細菌は数が多いほど、人間に影響を及ぼす可能性が高まる」と言う。細菌繁殖が原因の衣類の臭いや水回りのぬめりも生じにくくなる。「抗菌効果は、洗濯や掃除で製品がきちんと清潔に手入れされた状態でこそ、発揮される」と念を押す。

 数ある抗菌加工製品だが、その効果や安全性は、業界団体や各メーカーが国のガイドラインを基に設けた自主基準に委ねられている。購入前に使用説明書やラベルを確認したい。国際的に通用する抗菌認証のマークとして、一般社団法人繊維評価技術協議会の「SEK」や、一般社団法人抗菌製品技術協議会の「SIAA」がある。
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