MVCメディカルベンチャー会議

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第16回MVC 特別セミナー

2013年06月15日 | 医療経営塾
“ガンになっても笑顔で育つために!小児ガン治療中の子供と家族のための「チャイルド・ケモ・ハウス」“をテーマに、楠木重範氏(チャイルド・ケモ・クリニック院長)をお迎えしました。

(1) 私は小児科医です。ガン、血液腫瘍を専門にしてきました。中学2年の時に悪性リンパ腫に罹り、3年間抗ガン剤治療をしました。でも今は笑顔でいられます。

(2) 子供の外遊びの義務化が言われるほど、子供が遊ばなくなりました。第1回キッズデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受賞した東京の“ふじ幼稚園”では子供が円形の屋上で自由に走れるようになっており、黙っていても1日5~6km走っています。子供は環境によって変わることが良く分かります。

(3) 小児がんは15歳以下の子供の悪性腫瘍のことです。年間1万人に1人、つまり年間で2000-2500人の子供が罹ります。1/3が白血病で、残りは固形がんで、固形がんの半分は脳腫瘍です。70~80%が治癒するようになりましたが、子供の病気での死因の第一位は小児ガンです(死因自体の1位は不慮の事故など)。小児がんになる確率は1万分の1なので、みなさん関係ないと感じるでしょうが、当たるかもしれないと買ってしまう年末ジャンボ宝くじで1等が当たる確率は1/1000万です。小児がんの治癒率が上がったのは、新しい抗がん剤が出来たわけではないのです。子供は肝臓や腎臓などの臓器がまだ若く強いので、強い化学療法に耐えられるため、抗がん剤の多剤併用ができるようになったからです。

(4) 治癒率がどんどん上がってきている今、目指すべきは苦痛の無い、スマートな医療です。治療は半年から1年の長い入院生活です。とても狭く、決して良い環境とは言えないところで入院治療を行ってきました。長期間狭い病室でのストレスの高い入院を続けることで、こどもも親も医療者との軋轢が生まれやすいことも予想されます。しかし、小児ガンになったからと言って、そのようなつらい入院生活を強いられる理由にはならないと思います。こどもたちがベッドに横たわっているのは、化学療法でしんどくて寝ているわけではありません。ひたすら退屈でつらいのです。入院治療は、子供の発達や楽しみを考えるというより治療優先の環境と言えます。ターミナルケアやグリーフケアが未成熟なのです。

(5) 2005年12月から会を立ち上げました。医師、看護師、患者家族、院内学級、チャイルドライフスペシャリスト、法律・経営関係者、建築関係者と話し合った後、NPO法人を設立しました。小児がんのこどもとその家族にとって理想の病院とは何か。それが100%病気を治してくれる病院でしたら療養環境のことを考えなくてもいいかもしれませんが、100%治すのは不可能です。治せなくても、そのこどもの人生が良かったと思えることが大切と思います。6年前に制定されたがん対策基本法には小児がんのことが入っていなかったが、今年改正になり加えられました。2013年1月に小児がん拠点病院が全国に15か所設立されました。安定期、終末期に関しては療養環境を良くしたいと思い作ったのが、チャイルド・ケモ・ハウスです。

(6) チャイルド・ケモ・ハウスの主な目的は小児がんの療養環境を改善していくことです。そのため、大阪大学医学部附属病院に「チャイルドライフスペシャリスト」を導入しました。たとえば、手術室へ行く過程を本にしてあらかじめ子供に読み聞かせます。小児がんの子供が手術室に行くやり方が大人と同じである必要はないのです。卒業式もやりました。1学年12人の富山県の地元の小学校の生徒が、治療のために阪大病院の院内学級に入っていました。NPO法人ブロードバンドスクール協会と協力して、入院中にネット卒業式を実現しました。どれも色々な壁はありますが、できることを1つ1つやってきました。毎年、「夢の病院」というイベントをやっていて、そこでは医療者を子供に身近に感じてもらう試みも行っています。すでに亡くなってしまった小児がんの子供の友人たちが、ボランティアとして支えてくれています。

(7) チャイケモの考えとして、「家族もサポートしなければならない」「なぜなら、こどもにとって、一番安心できる存在だから」「家族をサポートすることは、子供をサポートすることに直結する」があります。1988年「病院の子供憲章」には、「こどもたちのための見舞い客の年齢制限はなくすべきである。」「こどもたちは、気配りと共感をもって治療され、プライバシーはいつまでも守られるべきである」とあります。病院には親の泣く場所すらありません。こどもの前で親が泣くと、子供は親に「病気になってごめんね」と謝ります。だから、小児がんのお母さんたちは明るくふるまっているのです。

(8) 夢の病院は「家」です。片方をあけると病院、もう一方は家。がんになっても笑顔で育つような、夢の病院を創ろう。前述した屋根の上を走れる「ふじ幼稚園」を作った、手塚貴晴さんと手塚由比さんにお願いしました。彼らのコンセプトは心地よい空間。空間によって、人の心や行動を変えることに建築家はプライドを持っています。ハードだけでなく、ソフトもきちんとしたいと考えました。医学部には小児がんに関するコミュニケーションの授業がないので、ロールプレイをすることで人材育成を行う仕組みを作りました。

(9) ポートピアアイランドに3600㎡の平屋を作りました。初期費用に要した8億円のうち6億円は寄付で賄いました。治療上で大切なことは抗がん剤の副作用を見ることと、免疫抑制状態で感染症を起こさないことです。そのためには水回りや空気をきれいに保つため、しっかりとした配慮をしています。

(10) 行政(神戸市)から土地を提供してもらいましたので、滞在施設は無償提供です。クリニックは営利施設ですので家賃を払っています。私は、チャイケモの施設に、テナントとして入っている形です。運営には社会からのご寄附が大切です。行政と社会が力を合わせて、小児がんのこどもとその家族を笑顔にするプロジェクトであり、社会的意義も大きいと考えています。

(11) 運営費だけで年間1億円かかります。どうしても寄付が必要ですので、ご協力いただける方を募集します。( http://www.kemohouse.jp/05_shien.html )。売り上げのうち10円を寄付する自動販売機がありますので、設置できる方はよろしくお願いします。
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