過日の記事の続きです。本日は、「卒業」の、ロビンソン夫人役とエレーン以外で、起用の可能性があった俳優を。
ベンジャミン役に、ロバート・レッドフォードにオファーがあったのは有名ですが、ほかにウォーレン・ビーティ(すみません、「ベイティ」はどうしても抵抗があるもので)も候補でした。するとですよ、「俺たちに明日はない 」がなければ、この映画でのビーティとフェイ・ダナウェイの共演の可能性もあったってこと? エレーン役には、ダナウェイもオファーされていましたから。これは、共演の可能性はなかったでしょうが、彼の姉であるシャーリー・マクレーンもエレーンの候補でした。
レッドフォードは、キャンディス・バーゲンのエレーンでオーディションを受けたそうです。ほかにチャールズ・グローディン、ブランドン・デゥイルド、マイケル・パークス、ケア・デュリア(「2001年宇宙の旅」に出た人)、ロバート・デュヴァル、ハリソン・フォード、ジョージ・ハミルトン、アルバート・フィニー、ジーン・ワイルダー(この人も、「俺たちに明日はない」が映画デビューでした)、スティーヴ・マックイーン、ジャック・ナンス、アンソニー・パーキンス、ロバート・ワグナー、ジャック・ニコルソン、バート・ウォードなどが候補でした。ウォードという人は、『バットマン』のロビン役をやっていた人です。
マックイーンなんか年齢的にどうよだし、ジョージ・ハミルトンじゃああまりにプレイボーイすぎる、ロバート・デュヴァルやジーン・ワイルダーはイメージが違いすぎるだろと思います。この中で私が面白そうだなと感じたのは、アルバート・フィニーですかね。ハリソン・フォードも、ダスティン・ホフマンにはかなわないでしょうが、しかし面白いかもです。
ロビンソン氏役としては、ジーン・ハックマン(うーん、「俺たちに明日はない」とキャスティングが重なっている)でほぼ決定していたのですが、作品が重複したのとやや若すぎる(1930年生まれ)という判断があって起用されるに至りませんでした。ほかにマーロン・ブランド、ハワード・ダフ、ブライアン・キース、ジョージ・ペパード、ジャック・パランス、フランク・シナトラ、ウォルター・マッソー、グレゴリー・ペックらが候補でした。実際に演じたマーレイ・ハミルトンよりだいぶ格が上の俳優が多いような気がしますが、アイディアの段階ですからね。余談ですが、ハワード・ダフという人は、ダスティン・ホフマンが主演した「クレイマー、クレイマー」で、裁判でのホフマンの代理人弁護士を演じた人です。またジョージ・ペパードは、前の記事でも紹介しましたように、エレーン役候補の1人であるエリザベス・アシュリーの当時夫でした。
ベンジャミンの父母に関しては、母役がスーザン・ヘイワードが想定されていました。彼女は、ロビンソン夫人役も候補でした。父役としては、ユル・ブリンナー、カーク・ダグラス、ジャック・レモン、ロバート・ミッチャム、カール・マルデン、クリストファー・プラマー、あとロナルド・レーガンも候補だったとのこと。「卒業」が制作された1966年て、まだレーガンて俳優をやっていたんですね。しかしこれも、実際に演じたウィリアム・ダニエルズと比べると、みんなすごい大物ばかりじゃないですか(笑)。ユル・ブリンナーはいくらなんでも違うんじゃないのという気はします。
それにしても、前に記事にした「ワイルドバンチ」とオファーされた俳優がわりと共通していますね。同時代の作品だから当たり前かもしれません。こちらの記事で紹介したことを再掲しますと・・・。
>主人公のパイク・ビショップ(ウィリアム・ホールデン)は、ほかに候補となった俳優として、リー・マーヴィン、バート・ランカスター、ジェームズ・ステュアート、チャールトン・ヘストン、グレゴリー・ペック、スターリング・ヘイドン、リチャード・ブーン、ロバート・ミッチャムらがいました。ほとんどリー・マーヴィンに決定していたのですが、けっきょく彼は、違う作品に参加しています。
もとパイクの仲間で、パイクを追っかけるという因果な役柄のディーク・ソートン(ロバート・ライアン)は、リチャード・ハリス、ブライアン・キース、グレン・フォード、アーサー・ケネディ、ヘンリー・フォンダ、ベン・ジョンソン、ヴァン・へフリンが候補になりました。ベン・ジョンソンはパイクの仲間であるテクター・ゴーチをけっきょく演じています。ヘンリー・フォンダのソートンて面白そうだな。
パイクの片腕、絶対の信頼を得ている相棒ダッチ・エングストローム(アーネスト・ボーグナイン)は、ほかにスティーヴ・マックイーン、ジョージ・ペパード、アレックス・コード、ロバート・カルプ、サミー・デイヴィスJr.、チャールズ・ブロンソン、リチャード・ジャッケルが候補でした。
というわけです。ペック、ミッチャム、マックイーン、ペパードといった人たちが共通しています。
自分で書いていてこんなことを言うのも変ですが、この企画は面白いですね。またネタを仕入れて記事にします。今回は、「卒業」の英語版Wikipedia記事に全面的に依存していることをお断りします。また、ベンジャミンの母親を演じたエリザベス・ウィルソンは、つい先日、5月9日に94歳でお亡くなりになったとのことを、この記事を書いていて知りました。ご冥福をお祈りします。
同日の追記:当ブログが情報その他でいろいろお世話になっているbogus-simotukareさんのブログで、当記事をご紹介いただきました。
映画の出演者が「あの人だったら・・・」と想像するのは、最高の楽しみかも:関根勤『関根勤のサブミッション映画館』(1995年、社会思想社)
bogus-simotukareさんありがとうございます。
いえいえこちらこそご紹介ありがとうございます。
(「サイコ」じゃない)アンソニー・パーキンスやアルバート・フィニーはアリかも知れませんが、ジャック・ニコルソンではストーカーの雰囲気が出てしまいそうな(笑
マックィーンなんて63年に「大脱走」主演だし、今さら「卒業」もないでしょうとしか(笑
ロビンソン氏は、やはりあまり際立たない人がいいでしょうね。同情心が募るとミセス・ロビンソンの存在感、存在意義が薄れます。
ベンジャミンの両親についても同様です。脇は脇であるキャスティングもまた重要です。
>ジャック・ニコルソンではストーカーの雰囲気が出てしまいそうな(笑
モロですよね。この時代はストーカーなんて言葉はまだ一般的ではありませんが、でもベンジャミンのやっていることって丸っきりのストーカーですもんね。またマックイーンは、さすがに企画の話だけとしても、年齢的に無理がありますよねえ。1930年生まれですから。
>同情心が募るとミセス・ロビンソンの存在感、存在意義が薄れます。
おっしゃる通りですね。実現の可能性は低かったでしょうが、さすがにマーロン・ブランドやグレゴリー・ペックのような超大物が出演しては、他の俳優の影が薄くなってしまいます。しかし父親役をユル・ブリンナーってのも、なかなかすごいセンスだと思います。
客観的にはそうですよね。
近年だとさらに表現が難しくなるストーリーでしょうね。
それゆえダスティン・ホフマンの純朴な雰囲気や、シーンに沿ったS&Gの楽曲が救いになっている。