ライプツィヒの夏

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

刑事裁判というのは、そういう趣旨ではないと思う

2016-11-08 00:00:00 | 社会時評

過日あった刑事裁判の話を。読売新聞より。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20161102-OYT1T50075.html

3人死傷の飲酒事故、危険運転認めず…大阪地裁
2016年11月02日 14時43分
 大阪市中央区西心斎橋で昨年5月、飲酒運転で1人を死亡させ、2人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷行為処罰法の危険運転致死傷罪などに問われた元美容師の被告の女(26)の裁判員裁判で、大阪地裁は2日、同法の過失運転致死傷罪を適用し、懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。

 飯島健太郎裁判長は「被害者に気づいてブレーキを踏もうとするなど、被告はその場の状況に応じた運転をしており、飲酒の影響で正常な運転が困難な状況だったとまでは認められない」と述べ、危険運転致死傷罪の成立は認めなかった。

 この事故で大阪地検は当初、「飲酒の影響は限定的」として過失運転致死傷罪で起訴したが、遺族らは昨年8月、法定刑の重い危険運転致死傷罪の適用を求め、約17万人分の署名を地検などに提出。再捜査した地検は公判途中で訴因変更し、今年10月から改めて裁判員裁判で審理されていた。

 判決によると、被告は昨年5月11日未明、西心斎橋の駐車場出口の道路でブレーキとアクセルを踏み間違え、自転車に乗っていた河本恵果けいかさん(当時24歳)をはねて死亡させ、友人ら2人に重軽傷を負わせた。

 判決後に記者会見した恵果さんの母、友紀ゆきさん(44)は「判決を聞き、頭が真っ白になった。これでは娘の死が全く報われない。(危険運転致死傷罪の)ハードルが高すぎ、このままでは飲酒運転はなくならないと思う。検察官は控訴してほしい」と涙ながらに話した。

記事中私が引っかかったのがこちら。

>この事故で大阪地検は当初、「飲酒の影響は限定的」として過失運転致死傷罪で起訴したが、遺族らは昨年8月、法定刑の重い危険運転致死傷罪の適用を求め、約17万人分の署名を地検などに提出。再捜査した地検は公判途中で訴因変更し、今年10月から改めて裁判員裁判で審理されていた。

刑事裁判における訴因変更って、署名とかをすることが後押しになってされるってこともあるってことなんですか? それ刑事裁判の趣旨としておかしいんじゃないんですかね。

ご遺族の気持ちはわかりますが、しかしそもそも論として、もともと危険運転致死傷罪の適用は困難だと検察も認識していたってことでしょ。でなければ、最初からそれで起訴していたでしょう。だから裁判員裁判でも、

>被害者に気づいてブレーキを踏もうとするなど、被告はその場の状況に応じた運転をしており、飲酒の影響で正常な運転が困難な状況だったとまでは認められない

ってことになったんじゃないんですかね。もちろん検察が控訴したとして、高裁でどう判断されるかはわかりませんが、たくさん署名が集まった、ならより重い罪に訴因変更しようってのは、私には悪しきポピュリズムにしか思えませんけどね。そういうことは、冷徹に行うべきじゃないですかね。遺族の気持ちがわかるということと、そうすることが正しいかどうかというのはまた話が違うでしょう。

だいたい犯罪被害者、その家族、あるいは遺族の気が済むように重罰を課すというのは刑事裁判の目的ではないでしょうに。それはそれ、これはこれでしょう。あんまりマスコミも、このような感情論を垂れ流すというのはいいことではないと思います。これは記者会見での発言ですから、報道も仕方ない側面もありますが、それが極端になると、私がご紹介した毎日新聞の、闇サイト殺人事件の被害者母親の言語道断の講演を垂れ流す論外の極致の記事になるわけです。

裁判官が判例に固執することを批判して、なにがどうなってほしいんだか

どうでもいい話ですが、この記事を書いた記者あるいは新聞社に「貴記者と貴紙は、この母親の発言を支持するのか」と聞いたら、たぶんお答えなしか「この母親の見解を紹介しただけである」という答えしか返ってこないでしょう。そう考えたので、私はこの記事への抗議のメールを出さなかったのですが、これは間違いでした。回答なし、あるいは言質を取るために、抗議メールを送るべきでした。反省しています。

ところで、これはまた話が違いますが、

>検察官は控訴してほしい

というのは、検察はどう判断するんですかね。たしか

そんなことを言うのであれば、検察は今後裁判員裁判では、量刑不当の控訴はしないのかという話になる

検察は、裁判員裁判での量刑を最大限尊重するんじゃなかったっけ

では、裁判員裁判においては、量刑不当の控訴はよくないという考えでいると思ったのですが、これは危険運転致死傷罪の成立を認めなかったのは不当だという論理構成で控訴する可能性もありますね。いずれにせよ、控訴ということになったら、私なりにこの裁判の今後を見守っていきたいと思います。

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10 コメント

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Unknown (紅葉修)
2016-11-08 08:32:17
なかなかショッキングな記事だったので久々にコメントします。

署名などで量刑が変えられうるというのは、法の下の平等にとって極めて危機的な問題ではないでしょうか。
これがまかり通るなら、シンパを集めやすい政治家や芸能人、資金力で様々な手が打てる富裕層に対して有利な判決が出て、ホームレスなど援助が得られにくい人々には厳しい判決が出る世の中になってしまいます。(裁判員制度以前から世の中なんてそんなもんだって感じもありますが、建前が崩壊するのは話が違います)

仮にこの事件の加害者がアイドルで、量刑をさらに軽くするよう求める署名が倍集まったら、ご遺族の方はどう思うんでしょうね? 彼らのほうが正しいと思っている人が世の中の多数派だからと諦めるのでしょうか? 諦めるべきですよね。諦めないと筋が通りません。

ほんと、「それはそれ、これはこれ」です。
Unknown (凡太郎)
2016-11-08 16:23:02
仮に今の日本で戦前の虎ノ門事件のような皇族に対する暗殺(未遂)事件が起きたら、政府や国民はどう対応するのでしょうね?そして、果たして理性的な対応が執れるのでしょうか?
Unknown (ハムラビ法典脳)
2016-11-08 18:54:32
「家族が同じ目に遭っても同じことが言えるか!」的な脊髄反射な事を言うバカには合格しない程度に現代の法治国家で司法試験が難しいのは合理的ですよね。
>紅葉修さん (Bill McCreary)
2016-11-08 22:45:00
どうもご無沙汰しております。あなたがまだ私のブログを読んでいただいていたとは思いませんでした。これからも、興味のある記事がありましたらコメントしてください。

>これがまかり通るなら、シンパを集めやすい政治家や芸能人、資金力で様々な手が打てる富裕層に対して有利な判決が出て、ホームレスなど援助が得られにくい人々には厳しい判決が出る世の中になってしまいます。(裁判員制度以前から世の中なんてそんなもんだって感じもありますが、建前が崩壊するのは話が違います)

そういうことです。子どもとか若い女の子が被害者のほうが有利なんていうのは、やはりまずいでしょう。検察は再捜査したなんて記事にはありますし、再捜査しなければ訴因変更なんかしないのは当たり前ですが、それが署名がなければそんなことしなかったろと思われたら、司法への信頼がなくなります。それこそ後で書かれたように、アイドルが加害者で、刑期短縮の嘆願書が出たらどうするのよです。
>凡太郎さん (Bill McCreary)
2016-11-08 22:46:22
だからそういうのも難しい問題ですよね。現天皇が沖縄で火炎瓶を投げられたことがありますが、けっきょく皇室(当時皇太子)を法廷に引っ張り出せないので、かなりおざなりの裁判になったなんて話を聞いたことがあります。
>ハムラビ法典脳さん (Bill McCreary)
2016-11-08 22:47:17
だからそういう対応ことが、私が一番批判することのわけです。そういうことを言っていたら、正しい考えには永遠に到達しません。
Unknown (ハムラビ法典脳)
2016-11-10 00:56:09
ご返答ありがとうございます。
ところで私も映画が好きなのですが(allcinemaのユーザーコメント欄からこちらのブログへ来ました)、正義の主人公が悪人に正義の鉄槌という名の私刑(死刑)を下して、それを見た観客が喝采を送ったり溜飲を下げる的な内容の映画って欧州映画ではあまり見受けられず日米が圧倒的に多いような気がするのですが如何でしょうか?
(リュック・ベンソンのようなアメリカナイズされた監督は除く)
テレビドラマでもご存知モノの時代劇なんかはまさにその類型だと思うのですが・・・
めっちゃ私刑の赤穂浪士を美談としているとか。
また諸外国には日本の特撮ヒーローもののような内容の幼児番組は一般的に人気なのかご存知でしょうか?
(アメリカには日本の戦隊シリーズをローカライズしたパワーレンジャーシリーズがあるのは承知していますが)
ひょっとしたらこういうものに幼少期から親しんでることが過剰な応報感情を持つ国民性に影響を与えてるのでは?と思う今日このごろなのですが・・・
>ハンムラビ法典脳さん (Bill McCreary)
2016-11-10 22:59:54
そうですか。allcinemaから遊びに来てくださったのですか。最近書いていませんが、でも私はネットの書き込みデビューがこれだったので、今でも愛着はあります。またコメントを入れる所存です。

>それを見た観客が喝采を送ったり溜飲を下げる的な内容の映画って欧州映画ではあまり見受けられず日米が圧倒的に多いような気がするのですが如何でしょうか?

私もあんまり知りませんね。そういう映画が輸入されなかったりソフト化もされないのかもですが、たぶん欧州では、そのような映画はあまり人気がないんでしょうね。

>めっちゃ私刑の赤穂浪士を美談としているとか。

赤穂浪士が人気があるのは、やはり日本人がそういう超法規的なことを好きなのだという側面もあるのでしょうね。あれは、最後は切腹ですから、一応けじめはつけていますけど。

>また諸外国には日本の特撮ヒーローもののような内容の幼児番組は一般的に人気なのかご存知でしょうか?

これも私の知る限り知りませんね。アニメはともかく、特撮ものは、子どもは見ないんじゃないんですかね。

すみません。確認もしない無責任回答です。
Unknown (nordhausen)
2016-11-11 21:38:46
記事を拝見させていただきましたが、なかなか考えさせられるものがあるなと実感しました。

>これは危険運転致死傷罪の成立を認めなかったのは不当だという論理構成で控訴する可能性もありますね。

確かに、控訴審で危険運転致死傷罪が適用される可能性はあり得ますね。

ところで、北海道砂川市で起きた飲酒運転の暴走車による一家5人死傷事件の判決が言い渡されました。

一家5人死傷 危険運転、懲役23年 2被告の共謀認定 札幌地裁判決
http://mainichi.jp/articles/20161111/ddm/041/040/118000c

この判決は、重罰を望む遺族の要望に応えて言い渡したのでしょう。ただ、遺族の感情論に押された可能性は無きにしも非ずでしょうね。

後、私が気になったのは遺族の以下の発言ですね。

5人死傷、懲役23年 娘や孫、帰らない 85歳母「判決一生忘れぬ」
http://mainichi.jp/articles/20161111/ddr/041/040/003000c

>「刑を厳しくしないと、交通事故はなくならない」と訴えた。

これって、端的に言えば危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪を更に重罰化しろということですよね。そうなると、前者については最高刑を死刑または無期懲役、つまり殺人罪並に引き上げるということになりますね。遺族の気持ちは理解できなくもありませんが、マスコミもこういう主張に擦り寄るばかりですからね。それよりも、被害者やその家族、遺族に対する経済的支援の方を考えるべきでしょうね。この事件では、被害者一家の次女が孤児となってしまいましたから、尚更だと思います。
Unknown (なむち)
2016-11-14 08:04:46
署名を集めたから訴因変更になったように報道する報道に問題があるだけで、署名で訴因変更になったわけではないようですし、司法はそんなに甘くないですよ。
署名活動している人は沢山いますしね。
だからといって何も変わらないのがほとんど。

検察が過失で起訴したのは事実ですが、警察は危険運転致死傷罪で送検しているようですし、過失で起訴したものの、検察が過失で起訴したのか説明できなかったから、証拠の見直し追加捜査したというながれがあるようです。

被害者感情の方に話をを持っていくのは、どうなんでしょう?違和感ありますねーわたくしには。

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