ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

『バベルの学校』

2015年02月15日 | 世界とわたし
先日、作家の曽野綾子氏の、なんとも下衆い、現場の実情を知らない、そして独りよがりな考えと常識を元にして書かれたコラムを載せました。
後日、掲載した産経新聞と当人の曽野氏に向けて、非難の意見が殺到しましたが、それらに対し彼女は、
「生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい、という個人の経験を書いただけ」と答えたそうです。

個人の経験…。
それはそうかもしれません。
けれども、発表している場所が場所です。
いかに偏向しているといっても、全国的に販売されている新聞紙面に、コラムとして載っているのです。
しかも彼女は有識者として教育再生実践委員会のメンバーのひとりになっていて、
さらには検定教科書に導入されることになった道徳の教科書の中に、『誠実』のお手本として登場?!しているのです。
↓↓↓
道徳教科化決定記念!安倍政権が指導書にのせた曽野綾子のトンデモ発言集
http://lite-ra.com/2014/10/post-575.html
2014.10.24. リテラ

先日の中教審の答申で、道徳の「特別教科」化が、事実上決定した。
現在「教科外活動」である道徳が格上げされて、成績評価対象となり、検定教科書も導入されるという。
いよいよ安倍首相の宿願である愛国教育、いや、国民総ネトウヨ化教育が本格化するわけで、
きっとその中身は、ツッコミどころ満載のものになるはずだ。

いや、すでに、その兆候は現れているといっていいだろう。
今年4月から、道徳教育の教科化をにらんで、文部科学省が、『私たちの道徳』なるタイトルの教科書を、小中学校に配布しているのだが、
その中学生版に、あの曽野綾子が、「誠実」のお手本として登場しているのだ。


↑引用おわり


わたし自身、当時11才と13才だった息子たちを連れて、アメリカの東海岸に移り住み、今も暮らし続けている正真正銘の移民です。
息子たちは当初から、地元の学校に通わされ、このバベルの学校のような特別クラスで、まずは学ぶことになりました。
学校から、あるいは担当教師から、1週間に1度は呼び出しの電話がかかり、そのたびに学校に出向いて行き、互いの誤解や曲解について話し合いました。
個人の経験として、母国語が話せない土地で生きていくということは、やってみて初めてわかる大変さが満載です。
想像を絶する違和感、孤独感、そして、それまで積み上げてきたもの、培ってきたものを活かすことができない喪失感。
どんどんと自信が無くなっていき、当たり前であった自分がどこでも通用しなくなった世界に対して、恐怖感を抱き始めました。

息子たちもどんなに辛かっただろうかと、もうすっかり大人になった彼らを見て、ふと思うことがあります。
彼らは結局、家族の誰の助けも借りずに乗り越えたということが、今となっては大きな自信となり、現在の生活の原動力となっていると思います。

曾野氏の意見は、介護に従事する方々、海外に移住している人たち、そして介護を受ける側の人たちにとって、様々な思いを抱かせる内容のものですが、
移民という人々そのものを一括りにして考えるという発想が、一番恐ろしいし危険であると、わたしには思えてなりません。
それは、戦争での兵士、あるいは攻撃される側の市民、なにもかもが数字で済まされていく世界の中で、平然と生きていられる悪魔の思想であるからです。

そんな思いを抱えているところに、すばらしい映画の紹介をしてくださっているのを見つけました。



昨年の9月末に、greenz.jpに掲載された、Yoshimoto Norikoさんの記事をここに転載させていただきます。
転載元:http://greenz.jp/2014/09/25/babel/

違っている私たちがいっしょに生きていくこととは。
20の国籍、24名の生徒の多文化学級を追ったドキュメンタリー映画『バベルの学校』




異文化、多様性…よく聞くけれど、自分にはそんなに身近ではない、と思っている人も多いかもしれません。
しかし東京の区内では、結婚するカップルの10組に1組が国際結婚、という時代。
身近に異なる国籍や文化を持つ人がいることは、めずらしいことでもなんでもなくなりつつあります。

映画『バベルの学校』に出てくるのは、フランス、パリ市内の中学校のあるクラスに集まった、フランスに移住して来たばかりの24人の生徒たちです。
アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国… 20の異なる国籍を持つ彼らは、宗教や文化の違いを越えて、友情を育むことができるのでしょうか?



11歳から15歳までの子どもたちにはそれぞれの事情がある

日本ではこういった環境は、あまりなじみがないかもしれません。
しかし、フランスには、毎年3万5千人から4万人の子どもたちが、移民・難民としてやってきます。

紛争や経済的な理由などで、自国を離れざるを得なかった子どもたちは、はじめはフランス語もできないため、
「適応クラス」という学級でフランス語を学び、必要な勉強をしてから通常の学級に入ります。
この映画は、ある適応クラスの一年間を追ったドキュメンタリーです。



異文化に葛藤する子どもたち

ジュリー・ベルトゥチェリ(以下、ジュリー監督)は、毎週2〜3回クラスに通い、1年間ずっと生徒たちと過ごしながら、映画を撮っていきました。

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「もし自分が子どもで、突然言葉もわからない海外で暮らすことになったら?」と考えてみてください。
誰かに助けてもらわなければ生きられません。
彼らをはじめて見たときに、「ここは世界のシアターだ」と思ったのです。

ひとつの舞台の上に異なる個性の役者がいるように、子どもたち一人ひとりが違っている。
でも、勝手がわからない舞台で突然演じられないように、フランスでいきなり生活をはじめるのは、とても大変なことです。

遠い国で困っている人を助けることも大切だけれど、私はまず隣人に手をさしのべたい、
そういう思いから、フランスの中の「世界」である子どもたちに、フォーカスした映画を撮ろうと決めました。

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フランス語もままならない子どもたちは、慣れない環境の中で、違う文化をもつクラスメイトと切磋琢磨しながら、
少しずつ、フランスと自分自身、そして異文化を知っていきます。
映画では、その葛藤や、彼らの成長が、ありのままに描かれています。



右がジュリー・ベルトゥチェリ監督、左がブリジット・セルヴォーニ先生

生徒たちを教えるブリジット・セルヴォーニ(以下、ブリジット先生)自身も、14年間の海外生活を経験しているそうです。
ハンガリー、チェコ、ギリシャなどで、教師をしながら生活した体験を活かしたいと、この適応クラスの先生になりました。
映画では、その経験が感じられるシーンが、いくつも出てきます。

例えば、生徒たちが、自分たちの宗教について、議論をするシーンがあります。
同じ宗教でも、国や地域によって考え方が異なることもあり、あいさつの解釈ひとつとっても、生徒の間では意見が分かれます。

「そうじゃないでしょ?」
「私の国のことよ。あなたになにがわかるの?」と、激しい言い合いになる様子も映し出されます。

フランスでは、一般的に、宗教のことを学校に持ちこんではいけないとされています。
でも、ブリジット先生は、生徒たちが宗教について話しはじめたときに、止めることはしません。

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どうして話させるかというと、生徒たち自身が話し合うことで、
「自分とこの子とは違うんだ、でも違ったままでいっしょに生きていけるんだ」ということがわかるからです。

それを、先生の言葉や教科書で、「宗教はこういうものだ」と押しつけてもわかりません。
自分たちの体験から学んでいくことを、大切にしています。

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フランス語が流暢でない分、ストレートな会話が交わされていく

映画には、話し合うシーンがたくさん出てきます。
生徒同士、生徒と先生、先生と親…。
親が、
「中国では、女の子が自分の意見をいう文化がないので、この子は自分のことを話すことになれていないんです」と、先生にいうシーンがあります。
それに対して、先生は、
「ここはフランスなので、なれていかないといけません」といいます。

日本人なら、この中国人の女の子に共感する気持ちが強いかもしれません。
一方、ヨーロッパ人がこれを見たら、
「なぜあの女の子はあんなにおとなしいのだろう?」と思うかもしれません。

「バベルの学校」は、ひとつの答えを提示するのではなく、あくまでも生徒たちの日常を切りとることで、私たちに様々な問いを投げかけ、
その問いこそが、私たちの文化的バックグラウンドからきていることに気づかせてくれます。


移民に対する見方が変わる

この映画は、フランス国内でも話題になりました。
移民の多いフランスですが、フランス人でも、このような適応クラスのことを知らない人も多く、
この映画ではじめて、こうした移民受入の政策を知った人もかなりいたようです。

また、メディアが、移民の子どもが起こした事件を大きく報道するので、
「移民の子どもは犯罪に走りやすい」というイメージがありました。
しかし、ほとんどの子どもたちは、自国で勉強ができる環境になかったので、学びたい意欲がとても強いのです。

そういう姿を映画で観たことで、
「移民の子どもたちへの見方が変わった」、「社会への希望が感じられる」、という人がたくさんいました。

この映画は、一人ひとりの生徒の成長物語であると同時に、フランスという国の姿勢を、強く打ち出しているといえるでしょう。



教室の中の子どもたちの姿から、フランスに来た背景も見えてくる


その後の生徒たち

2012年に撮影された「バベルの学校」ですが、2年経って、生徒たちはどうしているのでしょうか?
ジュリー監督に聞いてみました。

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生徒たちは全員高校生になり、今も連絡を取りあっています。
今ではフランス語もすっかりうまくなり、フランス社会にも溶けこんでいます。

映画で、当時がんばっていた自分の姿を見ることで、自分自身を誇りに思っているようです。
さまざまな理由で、自分の国に帰った子も3人います。
「輝く個性を持つ彼らの10年後の姿を、また映画にしてみたい」とも思っているんですよ。

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フランスの中の「世界の縮図」を描いたこの作品には、誰もがはっとする、さまざまな気付きがあります。
異文化や異なる意見を尊重しあい、ともに生きていくことは、どこでも必要なこと。
そして、これからますます求められていくことではないでしょうか。

「バベルの学校」は、日本では、2015年1月31日に公開されます。
子どもたちの姿を、ぜひ観てみてください。



- INFORMATION -
 
「バベルの学校」
http://unitedpeople.jp/babel/

東京: 新宿武蔵野館 2015年1月31日(土)〜
東京: 渋谷アップリンク 2015年1月31日(土)〜
神奈川:横浜シネマ・ジャック&ベティ 2015年3月7日(土)〜
大阪: シネ・リーブル梅田 2015年3月予定
福岡: 中洲大洋映画劇場 2015年2月14日(土)〜2月27日(金)
ジャンル:
ウェブログ
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