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東京二期会「ばらの騎士」(7月26日)

2017年07月27日 | オペラ
英国のグラインドボーン音楽祭との提携によるリチャード・ジョーンズ演出による公演初日である。ホルンの雄叫びに乗って幕が開くと、ロココ調の設えの寝室に大きなベット、そこに情事の余韻に浸るマルシャリンとオクタビアンというのが通常の設定だろう。しかし今回はいきなり怪しげな色調の部屋の真ん中のバスルームで、一糸纏わぬマルシャリンが正面向きでシャワーを浴びている。(肉襦袢というのはちょっと興を削ぐというか、今時滑稽な印象)そしてご丁寧にもそれをモハメッドが覗き見をしている!衝撃の幕開きである。これが象徴するように、ジョーンズ演出の至る所に表象的な仕掛けが施されていて、私のような素人はそれの全てを見つけ出しことなど到底不可能。一晩経って謎解きの終わらないシーンがまだ山ほど残っている。とは言いつつも、決して行き過ぎの印象はなく品格を保っているのは流石である。無料プログラムに載っている「対談」で、ジョーンズは主題を保守的なジェンダー・ポリティックスに絞っていたように語っていたが、オックス男爵とマルシャリンの描写を中心にそうした意図は良く生かされていたと思う。その反面、泣かせどころのマルシャリンの哀愁は後退して、時代の中でシブトク生きる上層階級の女性像がクッキリと浮き出された。そうした演出意図に今回マルシャリンを歌った林正子の一本筋の通った秀でた歌唱が大きく貢献していたことは事実である。オクタビアンの小林由佳とゾフィーの幸田浩子も充実した歌唱だった。3幕においての三重唱からマルシャリンの退場、そして最後の若い恋人達による二重唱のくだりでは、最初声に芯がなかっが幸田もどうにか復調してとても感動的な時間であった。ここでは三角天井の小さな空間がとても効果的でたった。最後になったがオックス役の妻屋秀和も凄かった。日ごろ新国で脇を固める日本人キャストという役回りで接することが多いのだが、今回は準主役としてその実力を思う存分に発揮した。何よりも余裕!歌にも声にも演技にも余裕があり、コミカルにこの愛される役柄を唄い演じて全体の大黒柱となった。メトでもこの演目を振ったというセバスティアン・ヴァイグレの指揮は、ジョーンズの方向性と合致した決してセンティメンタルに陥らない快活なもので、決して出過ぎずに舞台を盛り立てて好感が持てた。
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