今回は10年かけて完成したモーツアルト交響曲全集発売記念で、メインは40番のト短調シンフォニー。その前にサリエリの歌劇「ファルスタッフ」序曲と横山幸雄を迎えたベートーベンのピアノ協奏曲「皇帝」が置かれた。指揮は音楽監督の飯森範親。サリエリはまあ腕慣らしというところだろうか。映画「アマデウス」以降その名が一般にも知られるようになったサリエリだが、18世紀後半のウイーンでは宮廷楽師長として大変は力をもっていたということだ。ただ今になって音楽史を通観して改めて彼の曲を聞き直してみると、やはり永い何月の間に忘れ去られた理由が解るような気がする。そんな作品であった。二曲目の「皇帝」だが、これは腕利きの横山が登場してサラッと弾き流したという印象。タッチも浅いしテンポも安定しないし、何とも内容に乏しい演奏だった。自ら指揮振りしたCDでは、もっと深い音楽を聞かせていたと記憶するが、なんとも残念であった。そしてメインの40番。繰り返しを丹念に行ったので、2楽章など多少冗長な感もあったが、これは良い演奏であった。曲こそ違うが、小林秀雄の言った「疾走する悲しみ」というフレーズが脳裏に浮かんだ。ビブラート控え目の山響の弦が瑞々しく響き、決して弦に消されない木管からニュアンス一杯の音楽が溢れ出る。40人というこのオケの編成は何ともモーツアルトに相応しい。一楽章で聞いたことのないアーティキュレーションがあって耳を疑った。あれは一体何だったのか。そしてこの日の圧巻はアンコールの「パリ」交響曲から終楽章「アレグロ」。毎回アンコールは無しなのに、今回は敢えて聴かせた意味は大いにあった。この楽団の特色であるナチュラルホルン、ナチュラルトランペットの響きと伸びやかな弦の調和が最上の時を運んでくれた。
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- びわ湖ホール声楽アンサンブル東京公演(3月24日)
- 東京シティ・フィル第368回定期(3月8日)
- びわ湖ホール「ばらの騎士」(3月2日)
- 小澤征爾さんの訃報に接して
- 東京シティ・フィル第367定期(2月2日)
- 藤原歌劇団「ファウスト」(1月28日)
- 東京シティ・フィル第76回ティアラこうとう定期(1月27日)
- KCO名曲スペシャル:ニューイヤー・コンサート2024(1月26日)
- 京都市響第685回定期(1月20日)
- 東京シティ・フィル第366定期(1月13日)
- 脇園彩&小堀勇介ニューイヤー・デュオリサイタル(1月9日)
- NHKニューイヤーオペラコンサート(1月3日)
- ベートーヴェン弦楽四重奏曲【8曲】演奏会(12月31日)
- 東響第717回定期(12月16日)
- 東京シティ・フィル第365回定期(11月30日)
- 新国「シモン・ボッカネグラ」(11月26日)
- 紀尾井室内管弦楽団第137回定期(11月17日)
- 東京シティ・フィルの2024年度プログラム
- NissayOpera「マクベス」(11月12日)
- 東響第716回定期(11月11日)