大好きな邦画監督のひとり、是枝裕和監督の最新作。
一度文学賞を獲り単行本を一冊出したものの、その後はほとんど作品ができない(一応)作家の良多(阿部寛)。取材と称して探偵事務所で働いているが、所長(リリー・フランキー)からは「こっちを本職にしないか」と誘われている。
おんぼろアパートに一人住まい、電気や水道料金を滞納し金が入れば競輪につぎ込む良多だが、別れた妻響子(真木よう子)の元にいる一人息子の真悟(吉澤太陽)にはいい姿を見せたい。まだ響子に未練もあるらしく、事務所の若い後輩(池松壮亮)と一緒に週末に響子と息子を尾行するが、響子には新しい恋人らしい男がいた。
月に一度、良多が真悟と大手を振って会える日、響子に渡すべき養育費は先月分もあわせてすっからかんだが真悟とモスバーガーで食事をして、野球のスパイクと宝くじを買うためのお金はさすがに準備していた。
清瀬市の団地に住む母親(樹木希林)のところへ良多と真悟は遊びに行き、響子に連絡すると迎えに来るという。しかしちょうど台風が来ていて響子と真悟は帰れず、一晩を良多の母の家で過ごすことになる。。。
是枝作品でお馴染みの俳優が今作も多く名を連ねます。樹木希林に阿部寛、真木よう子、リリー・フランキー、たぶん是枝作品は初めてだろう小林聡美に池松壮亮も、うまい具合に溶け込んでいました。そしていつもながら是枝監督は子供の撮り方がうまい!今回も子役の吉澤太陽には台本を渡さずその場で演技指導をしたそうだけど、子供らしい自然な動きを見事に捉えています。
画面に出てくる料理が美味しそうなのも、これまた是枝作品では大事なこと。樹木希林の作る煮物にカレーうどんと、今回も色艶がおいしそう。カルピスのアイスはだいぶ固そうだったけど。
良多の仕事相手、池松壮亮はなんであんなに良多に尽くすのだろう?仕事を利用した良多の小遣い稼ぎに協力したり、週末の尾行を一緒にしたり、小遣い稼ぎでは自分も危ない橋を渡っているだけに、良多が憶えていない大きな借りというのが気になります。探偵事務所の所長、リリー・フランキーも怖い雰囲気を醸し出しています。良多のやっている証拠写真を使った小遣い稼ぎなんかは当然自分もやったものとして黙認しているのでしょう。もしかしたら、良多自身が所長から教わった手法なのかも。でも良多の脅した高校生が警察の元上司の息子でクレームが入ると、良多を静かにどやしつける。普段のにこにことした声と変わらないだけに、怖さが際立ちます。
主人公の良多に全く共感はできないし、自分には子供がいないから父親の気持ちもいまいち分からないけれど、それども何か男のダメなところというか、いつまでも子供で大人になりきれないところ、そのダメっぷりはわかるわかる、という感じです。周囲の女性、良多の母に姉、そして響子が地に足をつけて現実を何とか生きているから、良多のような男性が生きていけるのだなあ、と痛感します。
女性、そして母親は偉大ですね。
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6/1 109シネマズ川崎