まつや清の日記 マツキヨ通信

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『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書 酒井信)を読む

2008年11月01日 | ニュース・関心事
宮崎駿さんの大ファンを自称する私にとって店頭に並ぶ新書の中で、「読みたい」と思って購入した本です。著者は1977年生まれですから31歳、私の娘・息子の世代です。実に宮崎さんの流れをつかんでいます。

「もの」「仕事」「風景」の三つのキーワードで、宮崎アニメを読み解こうとするその姿勢は、「生産物=商品」「労働」「自然」と読み変えるとまさにマルクス主義そのものの分析手法に重なります。

著者は、宮崎さんを「右でも左でもない」として、さかんに「右」「左」と言う言葉を多用しています。今の若者世代の知識人の中でそうした「区分け」がなりたっているのか、驚きながら読み込みました。

「右」とは、農法主義を「左」とは科学主義と産業主義を指しているように見えますが、やや単純化し過ぎている嫌いがあります。それでも、何故、宮崎アニメが国民にここまで浸透した経過は理解できます。

「宮崎駿は「もの・仕事・風景」の均質化が進む時代に、これらの三つの描写にこだわることで「平成日本」を代表する「国民作家」になった」。つまり、近代世界が失ってきた職人的労働や風景を細かく描ききることで「現実世界」の矛盾を伝えようとしている、と。

是非、一読を。