まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第5回四国八十八所めぐり~第21番「太龍寺」

2016年11月19日 | 四国八十八ヶ所
鶴林寺から2時間半の歩きで太龍寺に到着した。山門からも急坂があり、ようやく境内に入る。右手に六角の経蔵があり、先に納経所のある本坊に出る。修復工事が行われて足場が組まれており、作業のクルマも出入りしている。朱印をいただくのは後にして、まずは本堂にお参りすることにする。

階段を上がると鐘楼門がある。門に鐘がつけられているのも珍しいのではないか。普通、鐘をつくときはひもを後ろに何度か引っ張ってゴーンと鳴らすが、こちらはひもを上から下に引く。感覚としては西洋の鐘に近いかもしれない。

広い境内を歩く。木々に覆われているし、石垣が組まれているし、町中の寺とは違った壮大感がある。中世の山城をイメージさせるところで本堂に出る。これまで「遍路ころがし」で訪ねた焼山寺、鶴林寺と比べても堂々とした建物が並び、団体客を含めて多くの参詣者で賑わっている。太龍寺にはほとんどの人がロープウェイで上がって来るが、その山頂駅の正面に階段があって直接本堂に出ることができる。その石段を上るだけで「しんどいなあ」と言っている人もいる。元々は私の通ってきた山門が正面玄関だったのだろうが、今では裏門のような雰囲気で人の姿もほとんどなかった。それとは対照的である。

本堂は最近改修されたようで新しい感じがする。後で調べたところでは2011年の台風で折れた杉の木が本堂の屋根を突き破ったのだという。こちらも桓武天皇の勅願で弘法大師が開創したとされる古刹であり、「西の高野」とも称される。高野山と同じく山の上にあるということや、弘法大師の修行の場として由緒あることからそう言われている。ただ、これまでにも戦乱や災害で荒廃した時期もあったそうである。弘法大師が19歳の時、この境内の「舎心嶽」という岩の上で100日の間、虚空蔵求聞持法を修行したとされている。虚空蔵菩薩の真言を百万遍唱えるという荒行だが、これを習得すると全ての記憶がよくなると言われている。この荒行は何も弘法大師だけのものではなく、現在も行われているものである。1日に1万から2万遍、それを50日以上続けるのだそうだ。

まずは本堂でお勤めをした後、多宝塔の下を回り込む形で大師堂に向かう。大師堂の前に「いのちのいずみ」と書かれた石碑がある。「あなたは お大師様に手を合わす資格があるか」と、単刀直入に問いかける前文から始まり、その資格を得るためとして、

一、小善を積んでお大師様に近づくのだ
一、向かい合う人をお大師様と思え
一、苦悩を背負う時こと背筋を伸ばせ

とある。やはり日頃からの気の持ちよう、自らの姿勢が大切であり、困った時だけ「お大師様助けてください」と願うだけというのはご都合主義というものだろう。

先にお勤めをしていた団体客が行った後で私もお勤めを行う。すると「御廟はこちらから」との貼り紙がある。それに従って大師堂の縁側を回り込むと、大師堂の後ろに、高野山の奥の院にあるのと同じような造りの御廟がある。

そして一旦戻る形で納経所に向かうが、石段を下りる時に「ギャッ」と言ってしまった。やはり足に来てしまったようだ。坂道、山道を下るのはまだしも、これで階段を下りるのは厳しくなった。金剛杖を持っているから何とかだましだまし歩くことにする。納経所では堂々とした文字を書いていただいた。

本坊持仏堂の廊下の天井には龍の絵がある。太龍寺というのも、弘法大師が修行中に龍が守護していたとの言い伝えがあることからついた名前だそうだ。

納経所からロープウェイ乗り場に向かう。もう一度階段を上がらなくてもそのまま横伝いに行くことができる。このロープウェイは1992年開業と比較的新しく、それまではクルマでも中腹までしか上がれなかったのが一気に本堂前まで来ることができるようになった。私もここまでは歩いてきたが、下りは迷うことなくロープウェイに乗ることにする。20分おきの運転である。このロープウェイ乗り場の前が今は玄関口で、本堂に続く石段もある。パンフレットなどの太龍寺の写真はこの位置から撮ったものが多いのだが、最後にようやくここに来たという感じである。

ただその前に、足は痛いのだがもうひと頑張りして歩くことにする。先ほど、弘法大師が修行した舎心嶽について触れたが、その跡が奥の院として今でも残っているという。ロープウェイ乗り場から650メートルほどあるが、せっかくなので行ってみる。途中は四国八十八所のそれぞれの本尊が立っており、それを数えながらの歩きである。前半はなだらかだったがやはり後半になると坂が急になる。八十八を数えた先には小さな祠があり、修行の場らしい風情がある。

そしてその先は崖。その上に山の先、遥か遠くを見るように座っている像がある。修行中の弘法大師像である。後で乗ったロープウェイの中でのガイドさんの説明では、「空海」という名前の「空」の部分はこの舎心嶽の修行から来ているとしている(「海」の部分は室戸岬)。山岳修行では山の上から身を捨てることがあり(今でも、大峯山の修行で半身を崖の上から乗り出して・・・というのをテレビなどで見るが)、この舎心嶽はそうした場であることがうかがえる。何とも雄大な景色である。

四国を巡拝している人のブログなど見ると、この像のところまで行って正面から大師像を拝んで・・・というのもあるのだが、そこに行くのも崖だし、鎖場もある。本当はここで行かなければならないのだろうが、私の体重では・・というのと、足の痛みというのがあって断念した。大師像を後ろから拝むに止める。

元来た道を戻り(やはり下りのほうが足に来る)、ロープウェイ乗り場に到着。時刻は15時40分、次の平等寺に行く時間もなく、今回の四国八十八所めぐりはこれで終了となる。後は徳島に出て大阪に戻るということで・・・・。
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